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共済加入者でも保険との違いに気づけない理由


共済も保険も、「さまざまな経済的リスクに備えるための仕組み」という点では共通で、経済的リスクに瀕した加入者の生活を支える社会的役割を担っています。
一方で、保険会社の多くが会社法に基づいて設立された営利法人であるのに対し、協同組合(共済団体)は営利を目的とした事業を法律で禁じられています。保険会社が営利を目的として「保険」をその手段としているのに対して、協同組合(共済団体)は組合員が助け合う手段の1つとして「共済」があります。

■理解されない違い
このように明確な違いがある共済と保険ですが、世の中にその違いが正しく認識されているとはいえません。共済を普及推進する立場にある人にとってはもどかしい状況でしょう。一生懸命に「共済は相互扶助。組合員同士のたすけあいで成り立っている」と伝えても、組合員にはピンとこない顔をされてしまいます。それもそのはずで、多くの保険会社の広報物には、おおむね次のような記載があるからです。

「保険の仕組み
たくさんの人が少しずつ公平にお金(保険料)を出し合って仲間になり、共有のおサイフ(保険会社が管理)にお金を貯めます。そして、仲間の誰かに病気やケガ、死亡など万が一のことがあったら、共有のおサイフの中からお金(保険金など)を出して助けます。保険のしくみは、困ったときの助け合い(相互扶助)の精神で成り立っているのです。」※1

組合員が、共済の説明と大きな違いを見出せないのも無理はありません。

■加入者にも違いがわからないワケ
適用される法律に目を向けてみると、加入者にすら違いを実感できない理由が理解できます。

共済と保険には、同じ法律が適用される場面と、異なる法律が適用される場面があります。まず、協同組合(共済団体)が共済事業を実施できる根拠や条件、協同組合(共済団体)の組織・運営、行政庁による監督に関しては、協同組合(共済団体)の種類ごとに定められています。例えばJAは「農業協同組合法」に基づいて、生活協同組合は「消費生活協同組合法」に基づいて、それぞれ共済事業を実施しています。これらの法律には、協同組合(共済団体)の設立手続き、組合員の資格・権利、協同組合の行う業務の範囲、総会・理事会に関する事項、行政庁による検査・命令などの基本的なルールが定められています。

保険会社の場合、これに相当するルールは、「保険業法」と「会社法」という法律に定められており、それらは協同組合(共済団体)・共済事業には適用されません。それぞれの協同組合(共済団体)には、その設立の趣旨や協同組合の理念・原則を反映した、一般の会社とは異なるルールが適用されています。

一方、協同組合(共済団体)が組合員と締結する共済契約や、保険会社が契約者と締結する保険契約の内容については、「保険法」という法律がともに適用されています。この法律には、契約時の告知、共済証書・保険証券の交付、共済金・保険金を支払わない場合、共済金・保険金の支払期限、共済契約・保険契約の解除など、共同組合(共済団体)・保険会社と加入者との間の権利義務に関する基本的ルールが定められています。これらの点については、共済加入者と保険加入者は共通のルールで保護されています。

■日常の活動が大切
契約時にかかわってくる法律が共済と保険とで共通している以上、加入者が契約締結を通じて共済と保険の違いを自力でくみ取るのは困難でしょう。普及推進側が、よほど積極的に保険との違いをアピールしながら契約手続きを進められるならまだしも、必要書類や省けない説明をしていれば、それもなかなか難しいのが実態です。

そこで思い出していただきたいのは、共済の目的はどこにあったのかということです。
協同組合(共済団体)には、はじめに共済制度があるわけではありません。組合員の暮らしを豊かにする助け合いの手段の1つとして、どんな制度が、どのくらいの経済負担で実現できれば良いか、また、その制度を安定的に提供するにはどうしたら良いかを考え、保険技術を応用して作られるのが共済です。
共済の制度説明だけでなく、協同組合(共済団体)の理念・原則を日常の活動でいかに発信しているかが共済の普及推進には欠かせず、ひいては保険との差別化へと結びつくのではないでしょうか。

※1.出典:アフラックwebサイト「知っておきたい生命保険の基本」

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