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ペットは「家族」!かかるお金も子ども並みで「聖域」となる?


私の友人が、昨年から小型犬を飼い始めました。ちょうど、子どもが就職をして、子育ても卒業。「第二の子育て」のようなものだと笑っていましたが、驚かされるのは、とんでもなく、お金がかかること。
話を聞いていると、食べるものや着るもの、おもちゃやグッズなどなど。正直、人間の赤ちゃんよりかかっているのでは?と思うほどです。
お出かけの際は、今の時期なら、ヒートテックのような犬用高機能インナーを着せて、粗相をしないようおむつを履かせます。旅行先では、もちろん犬用のお土産も欠かせません。

私も子どものころ、実家で柴犬や猫(さらに言えばニワトリも)を飼っていました。でも、もちろん犬は屋外(犬小屋は納屋の中)。ごはんも、冷や飯にお味噌汁をかけて、魚のあらをほぐしたものを乗っけた程度だったはず。
昭和の時代には、家庭の犬や猫にペットフードを食べさせる習慣はなかったと思います。

●年間にかける費用は、犬が「公立小学校」、猫が「公立幼稚園」くらい
それが今や、ペットは家族の一員です。犬や猫だけでなく、鳥やうさぎ、爬虫類など、さまざまなペットを、多頭飼いしている人も珍しくありません。
当然のことながら、FPとして、家計相談を受けていると、お客さまのペット関連費用が目に付くようになりました。

アニコムホールディングス(以下アニコムHD)の「家庭どうぶつ白書 2023」によるとペットにかける年間支出額(2022年)は、犬が35万7,353円(前年比103.4%)、猫が16万0,766円(前年比95.0%)となっています。
一方、お子さんの教育費の目安をお伝えする際、よく活用されているのが文部科学省の「子供の学習費調査」のデータです。
最新分(令和3年度)の一人当たりの年間の学習費総額と比較すると、犬は公立小学校(35万2,566円)、猫は公立幼稚園(16万5,126円)と同じくらいと言えば、イメージしやすいでしょうか?

以前、大手証券会社が、養育費の全消費支出に占める割合のことを「エンジェル係数」という造語で提唱していましたが、お子さんのいるご家庭にとって、子どもにかかる費用は家計の「聖域」ともいえるものです。
最近のペット市場の拡大を踏まえると、今後は、ペットにかかる費用も家計の中で存在感を増してくるのではないかとにらんでいます。

●ペットにかける費用は14年で1.2倍へと増加
しかも、ペットにかける費用は、増加傾向にあります。
今度は、総務省の「家計調査」のデータをご紹介しましょう。
2023年の二人以上世帯のペット関連費用は、合計月額2万2,274円。その内訳は、以下の通りです。
・ペットフード:8,344円
・ペット・他のペット用品:5,097円
・動物病院代:6,138円
・他のペット関連サービス:2,695円

また、総務省では、家計ミニトッピクスとして、特定の支出に着目したコラムを定期的に発表しています。
少し前のデータですが、2010年9月に、動物愛護週間にちなんでペット関連の支出をまとめたものをみると、2009年のペット関連費用は約1万8,000円となっています。前掲の金額と比較すると、14年で1.2倍に増えたわけです。

費用が増加している点について、ペット関連費用の二大支出ともいうべき「ペットフード」と「病気やケガの治療費」を見てみましょう。
まず、前者については、ペットフード協会が昨年末に発表した「2023年全国犬猫飼育実態調査」では、原材料費の高騰や円安の影響によって、ペットフードが値上がりしていることを指摘しています。
さらに、生活において値上がりしたものに光熱費がありますが、前掲のアニコムHDの調査でも、犬・猫ともに「飼育に伴う追加の光熱費」の増加が目立ったとあります。
飼い主が留守中の健康維持のため、エアコンや暖房器具などをつけっぱなしにしているご家庭も多いと聞きますので、食費にしろ、光熱費にしろ、大事な「家族」のための必要経費なのでしょう。

●ペットも長寿化で医療費や介護費への備えが必要
そして、もう一つの「病気やケガの治療費」については、どれくらいかかるのでしょうか?前掲のアニコムHDのデータでは、年間でかかる治療費は犬が6万7,367円 猫が3万1,138円となっています。
一方、平均寿命は、犬が14.2歳、猫は14.7歳です。
単純に計算すると、一生のうちにかかる治療費は、犬が約95万円、猫が約44万円となりますが、治療費や寿命は、犬や猫の種類によっても変わるでしょう。
ただ、人間なら、具合をみて、ドラッグストアで薬を買って安静にしていたら治ったということは良くある話です。
でも、言葉が話せないペットが体調不良になれば、確実に病院を受診するはずです。
動物病院は、原則自由診療ですから、ペット保険などに加入していなければ、全額自己負担となります。
そして、人間同様、ペットの平均寿命も延びており、長寿化が進めば、高齢期の治療費用や介護費用も増えます。
実際、知人宅で、高齢な猫が寝たきりになって、おむつを替えてもらったり、ごはんを食べさせてもらったりする様子を見たことがありますが、まるで人間と同じだと感じました。

ペットを飼うには、これだけの費用、しかも一生負担し続ける経済力や愛情が必要です。ちゃんと最後まで責任を持ってお世話できるよう、ペットを飼う場合は、お金のやりくりやかかるコストをしっかり考えて、準備しておく時代になったことを痛感しています。

<参考>
・アニコム ホールディングス株式会社「家庭どうぶつ白書2023」
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202312.pdf
・文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
https://www.mext.go.jp/content/20221220-mxt_chousa01-000026656_1a.pdf
・総務省「家計調査 家計収支編 2023年」
・総務省「<家計ミニトピックス>ペット関連の支出」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/22_9.pdf

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