コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級ファイナンシャルプランニング技能士
- 消費生活専門相談員資格
- CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
- 2022.07.28
- 税金
子どものアルバイト代で親の税金はどう変わる?
現在、私は都内の私立大学で非常勤講師として「FP論」を担当しています。昨年は、すべてオンライン授業でしたが、今年は対面。しかも授業は週2回あり、2ヶ月間とはいえほぼこの間は、授業の準備や学生等への対応で他の業務ができない状況に陥っています。
とはいえ、今の若い世代のリアルな声を聞ける機会は貴重で、いつも新たな気づきと発見があります。
講座名が「FP論」ですから、まさに、ザ・FP的な内容が中心。でも、できるだけ、大学生が普段、ギモンに思っていること、興味・関心があることを取り上げたいので、毎回アンケートを取り、トピックス的に解説を行います。
その中で、多くの大学生が真剣に耳を傾けていたのが、今回のテーマである「子どものアルバイト代と親の税金」について。
パートで働く主婦にとって気になる、いわゆる「〇〇円の壁」は、働く子どもにとっても無関係ではありません。
逆に、パート主婦よりも、時間帯や場所の制約などが少ないからか、結構な額を稼いでいる学生もいます。
注意すべきポイントは、「103万円」を超えると、子ども自身が税金(住民税・所得税)を負担しなければならないだけではなく、親の扶養から外れるため、親の税負担も増えてしまう点です。
扶養控除は、子どもが16歳から認められており、19歳以上23歳未満の扶養家族は「特定扶養親族」として、63万円が控除できます。
例えば、課税所得330万円から694.9万円までの場合、所得税率は20%です。したがって、子どもが扶養から外れることで、親の所得税が12.6万円増える計算です。
そして、それ以上に大きいのは勤務先から家族手当がある場合です。人事院の「令和3年職種別民間給与実態調査」によると、企業の約74%が家族手当制度を設けています。その7割以上が配偶者手当ですが、妻の就労意欲を阻害しないようにと、配偶者手当を見直ししたり、対象を配偶者から子どもに変更したりする企業も増えています。
手当の額はだいたい月2万円前後。配偶者については、8割以上の企業が年収制限を設けており、その1つが「103万円」ですので、ご相談者の中には、「夫の会社から家族手当が月3万受けられる。これが受けられる間は、パートを増やさない!」という方も少なくありません。
実際に、トヨタ自動車は月額19,500円の「配偶者手当」を2021年までに廃止。その代わりに「子ども手当」を1人当たり月額5,000円から一律月額20,000円としました。これ以降、パートを増やす‘トヨタマダム’が増えたなどという噂も耳にしました(あくまでも噂レベルですが…)。
同調査では、家族手当の対象となる子どもに対しても、収入の制限を設けているかどうかは不明。ただし、前述の親と子の税負担と家族手当が受けられない分を天秤にかけると、やはり、子どものアルバイト代は、年間103万円を超えないようにするのがおトクなケースが多いのではないでしょうか。
とはいえ、親の給料が上がらない今、「学費を負担してもらっているし、携帯料金や外食費など、自分が使うお金は自分で稼ぎたい」という大学生がほとんどだと思います。
そんなときに知っておきたいのが「勤労学生控除」です。
これは納税者本人が、高校や大学、専門学校等の学生・生徒の場合、受けられるもので控除額は27万円。この控除を受ければ、103万円+27万円=130万円まで所得税はかかりません。
勤労学生控除の適用を受ける場合は、年末調整で「扶養控除等(異動)申告書」の勤労学生控除に関する記述を記入して、勤務先に提出すればOKです(アルバイト先が2ヶ所以上の場合は、確定申告が必要)
なお、2016年10月から、パート・アルバイトであっても、一定規模の会社(「従業員500人以上」、2022年10月より「従業員100人以上」)で働く人は、106万円を超えたら(正確には月額賃金88,000円以上)、社会保険に加入する必要があります。ただし、これは生徒や学生は対象外です。例外として、卒業見込証明書を有する人で卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の人や、休学中の人、大学の夜間学部や高校の夜間等の定時制の課程の人などは加入対象となります。
ここまでを「今年はまだ半年あるのに、(103万円)超えそうでヤバいかもしれません!」と質問にきた学生に懇切丁寧に説明してみたところ、「なんか、面倒くさそうなんで、勉強頑張ることにします」ですって。
私自身も大学時代、バイトに明け暮れていましたが(扶養から外れるなんて知識はまったくなかった…)、今振り返ると、もっとちゃんと勉強しておくべきだったと反省しています。
人生100年時代の今、いったん社会に出れば、ず―――っと働き続けなければならない可能性が高いのです。学生のうちは、今しかできないことがたくさんあるので、そちらに注力して欲しいと思います。