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死亡保障はそんなに必要ない!?


保険や共済などの仕組みは、もともと助け合いの制度からスタートしたと言われます。みんなで保険料や掛け金を負担して、万一の事態が起きた人に保険金(共済金)を支払うような仕組みです。通常、人に関する“もしもの事態”(死亡や入院、介護、長生きなど)に備えるのが生命保険(生命共済)、モノに関する“もしもの事態”(火災、地震、自動車事故、傷害事故など)に備えるのが損害保険(損害共済)です。

万一に備える制度ですから、損得だけで判断すべきではないでしょう。しかし、確率論上の損得を考えると、保険や共済の加入者にとっての期待値(確率を考慮した加重平均値)はマイナスになります。これは宝くじなどと同様で、保障制度の運営にかかるコストなどが差し引かれるためです。

加入者から集めたお金のすべてが給付に回されるのであれば、加入者にとっての期待値はゼロになるだけでマイナスにはなりません。しかし、運営コストなどが差し引かれる分だけ加入者の期待値はマイナスになってしまうのです。誤解を恐れずに言うなら、保険や共済などは、確率論上は加入者が損をするようにできているということです。

だからこそ、生命保険などへの加入を考える際は、もしもの事態が起きたときのために心配な分だけたくさん加入すればいいというのではなく、本当に必要だと思われる保障(補償)を、必要な分だけ、できる限り安い保険料(掛け金)で加入すべきだと言えるわけです。

では今回は、もう少し具体的に万一の際の死亡に備える死亡保障について、考え方を触れたいと思います。

死亡保障は、保険(共済)の対象となる被保険者(被共済者)が、死亡または高度障害の状態になったときに保険金(共済金)が支払われるものです。一般的には、一家の大黒柱であるお父さんを被保険者として加入し、お父さんにもしものことがあった場合に残された家族が金銭的に困らないようにするわけです。

皆さんのなかでも、2,000万円とか3,000万円などの保険金(共済金)の出る死亡保障に加入している人もいるのではないでしょうか。しかし、FPとして言わせていただくと、その保障額はきちんと適正な額として計算されたものでしょうか。金額が大きすぎはしないでしょうか。金額が大きすぎるほど、ムダな保険料を支払っていることになります。もし、万一のための保険料負担のせいで現在の家計にゆとりがなかったとしたら、それは間違いなく本末転倒だと言えるでしょう。

死亡保障の適正な必要保障額を求めるためには、残された家族が金銭的にどの程度困るのかを計算する必要があります。その際にまず考慮すべきなのが、公的な保障と貯蓄です。一般の会社員であれば、万一死亡してしまった場合、18歳未満の子がいれば、遺族基礎年金が支給されます。18歳未満の子が1人いる妻には年間約100万円、18歳未満の子が2人いる妻には年間約123万円の遺族基礎年金が出ます(子が18歳に到達したあとの最初の3月末まで)。さらに、遺族厚生年金も支給されます。遺族厚生年金の支給額は、就職してから亡くなるまでの給与を元に計算されますので、単純に算出できるものではありませんが、ざっくり言うと、亡くなった夫の年収の1割前後くらい(夫の年収が500万円だったのであれば、年間40~60万円程度)は支給されると思っていてよいでしょう。

ということは、18歳未満の子が2人いる家庭のお父さん(会社員)が万一亡くなってしまったとしても、子どもたちが高校を卒業するまでは、年間150~200万円程度の遺族年金が支給されるわけです。住宅ローンを組んでマイホームを取得していたのであれば、住宅ローンは団体信用生命保険の保険金がおりて相殺されるのが通常です。住居費は維持費だけの負担となります。お母さんがパートなどで少しでも収入を得ることができるのであれば、生活自体はそれほど困らないのではないでしょうか。そして、子どもたちの教育資金なども貯蓄で準備できているなら、死亡保障はそれほど必要がないと言えるのです。

一般の会社員や公務員だと、現役のうちに亡くなった場合は、勤務先から死亡退職金や弔慰金が支払われることもあるでしょう。死亡保障の必要性について考える際には、会社や労働組合などの制度についても改めて調べてみるべきです。会社や労働組合によっては遺族に対する保障が手厚いところもありますので、そういうケースであれば、死亡保障はほとんど必要がないという人もいるはずです。

したがって、多少なりとも死亡保障が必要な人はどんな人かというと、以下のような人たちです。
・子どもがまだ小さいうえに貯蓄がまったくない人
・自営業者で夫死亡後は事業の継続が困難な人
・夫死亡後、妻や子どもが収入を得るのが困難な人
・夫の会社の社宅に住んでいて、夫死亡後の住まいの確保が困難な人   など

これらに当てはまる人は、世帯主死亡後の将来にわたる家計収支を予想し、適正な必要保障額を算出して死亡保障への加入を検討することが重要です。この場合でも、加入し過ぎは避けるべきでしょう。

なお、死亡保障が必要になる時期は、通常、子どもが生まれてからです。そして、子どもの成長とともに必要保障額は減っていき、子どもが巣立ったあとは、ほとんど必要がなくなります。もちろん、人によって状況が異なりますので一概に断定することはできませんが、必要保障額は年々減っていくのが通常です。現在加入中の人は、是非とも定期的に見直していくようにしましょう。

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