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介護認定の誤解


2000年4月に始まった介護保険制度は20年目を迎えています。2017年4月時点で、要介護や要支援の認定を受けた人は633万人に達し、開始当初(218万人)の約3倍になりました。特に近年、その増加ペースは拡大しています。
一方で、介護保険制度が十分に浸透しているかというと、いささか疑問が残ります。むしろ、制度の多くに正しい理解がされないまま20年が経ったようにさえ感じます。

◆介護認定とは
ささやかな誤解の一例として「介護認定」があります。「介護認定はどのようなものか?」あるいは「何を表しているのか?」について、皆さんはどのように理解されているでしょうか。
介護認定とは、「介護サービスの必要度を判断するもの」です。この表現に違和感を覚える人はいないとしても、次のように言い換えるとどうでしょうか。

「介護認定とは、単なる運動機能や認知機能の判定ではない」

この表現であれば、誤解に気が付く人もいるかもしれません。つまり、介護認定は単なる体調の検査ではありません。あくまで「介護にどれだけの手間がかかり、どのくらい介護サービスを必要としているか?」を審査判定するものなのです。

◆同じ症状でも認定が異なることも
介護認定が「介護に要する手間と介護サービスの必要度を測るもの」だとしたら、同じ病気や障害の程度でも、人により要介護度の認定が異なることがあります。また、病気や障害の程度と要介護度の高さが必ずしも一致しないこともあります。

例えば、同じ症状であっても、平屋建ての一軒家に住んでいる人と、エレベーターのないマンションの4階に住んでいる人とでは、外出する際の介助の必要性には大きな違いがあります。あるいは、認知症でも身体的に健康な人の場合、徘徊等のために介護の手間が多くかかることがあります。しかし、身体的な問題から寝たきりになってしまった人に認知症の症状が加わった場合、病状としては進行しているものの徘徊等は発生しないため、介護の手間としては大きく増えないこともあります。これらを、運動機能や認知機能だけで一律に判断してしまうと、介護にかかる手間や介護サービスの必要度とは必ずしも一致しない判定がされてしまう危険性があるのです。

◆介護認定の納得性
介護の認定結果に対して、疑問や不満を感じたという声を度々耳にします。既に介護認定を受けている身近な要介護者との比較から「うちの場合は要介護4くらいだと思っていたのに、結果は要介護3だった」というようなものです。
介護認定が、単なる運動機能や認知機能の判定でない点は既に述べた通りですが、開始20年を経てもなお、この単純な事実すら正しく理解されていないからこそ、このような不満がなくならないのではないでしょうか。制度を正しく認識しさえすれば、それだけで介護認定の納得性は高まる可能性があります。また、認定調査を受ける事前準備として、次の事項を整理しておくことも有効です。

(1) 普段の介護の内容
(2) これまでにした病気やケガ
(3) 具体的に困っていること
(4) 本人に対して言えないこと
(5) 時間帯や季節の変化によって変わること
(6) 家族がどのくらい介護に参加できるか
(7) かかりつけの医師と治療内容

介護が始まれば暮らし方が変わり、ご本人にとっても周りのご家族にとっても大変な場面は増えるでしょう。その意味では、わだかまりのない介護生活をスタートさせるために、介護認定に納得できていることはとても大切といえます。

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