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2018年度の先進医療の実績報告からみる最新治療の動向


2019年1月10日に行われた厚生労働省の先進医療合同会議(第71回先進医療会議、第80回先進医療技術審査部会)において、2018年度の先進医療技術の実績報告等が行われました。
いつもこの時期になると発表される先進医療の実績報告なのですが、今回の結果は、いつも以上に注目していました。というのも、2018年4月の診療報酬改定によって、先進医療に‘仲間入り’あるいは‘卒業’した医療技術がいくつかあったからです。
とくに(1)がんゲノム医療に欠かせない「マルチプレックス遺伝子パネル検査」が先進医療Bとして承認された。(2)患者数の多い前立腺がんの粒子線治療が保険適用になった。(3)手術支援ロボット(ダヴィンチ)による手術の保険適用が拡大された。この3つについては、過去のコラム「知っておきたい4月以降のがん治療の三大トピックス」でもご紹介していますので、お読みいただくとより理解が深まるかと存じます。

さて、それでは実績報告を見てみましょう。
この時点で承認されている技術等は92種類(先進医療A:28種類、先進医療B:64種類)。2012~2015年度までの推移をみると、全患者数も先進医療にかかる費用の総額も右肩上がりに上昇していましたが、2015年度に若干減少。その後、再び増加傾向にあり2017年度は全患者数32,984人、費用の総額約207億円でした。これに対して、2018年度は全患者数が28,539人と1割以上減少したものの、費用の総額は約240億円と過去最高になっています。つまり、先進医療を受ける患者一人当たりの単価が上がったというわけでしょうか。
しかも気になるのは、全医療費のうち先進医療費用の割合が84.3%(2017年度74.6%)とこちらも大幅にアップしたこと。2012年度と比較すると、この6年ほどで、患者数も費用総額も倍以上に増えていることがわかります。
総務省統計局のデータによると総人口は2019年1月1日時点で1億2,632万人ですので、引き続き、先進医療が受けられる患者数は、日本の人口の0.02%程度に過ぎません。ただ、かかるお金は確実に高額になっているようです。

続いて、実施件数についてです。
2017年度実績報告(2016年7月1日~2017年6月30日)によると、ベスト5は次の通りです(※先進医療Aにかかるもののみ、以下同じ)。
1位:多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(14,433件)
2位:前眼部三次元画像解析(11,595件)
3位:陽子線治療(2,319件)
4位:重粒子線治療(1,558件)
5位:EBウイルス感染症迅速診断(リアルタイムRCP法)(255件)

2018年度(2017年7月1日~2018年6月30日)のベスト5は以下の通り。
1位:多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(23,859件(前年比+9,426件))
2位:陽子線治療(1,663件(前年比-656件))
3位:重粒子線治療(1,008件(前年比-550件))
4位: MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法(366件(前年比+159件))
5位:ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)(198件(前年比+93件))

1位は、相変わらず不動の「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」。実施医療機関数も675施設と前年度に比べて120施設も増加している上、全体の7割以上を占めています。
2位と3位の粒子線治療は、前立腺がんが保険適用されたことが影響してか、やはり大きく減少しています。
そして4位と5位にランクインしているのはいずれも検査法。実施件数も着実に増加しています。前述した国立がん研究センター中央病院の「マルチプレックス遺伝子パネル検査」も実施件数が36件ありましたし、今後は、治療法だけでなく検査法にも注目する必要がありそうです。なお遺伝子パネル検査は、2019年4月以降、保険適用になる予定です。
また2017年度に2位だった「前眼部三次元画像解析」も2018年4月から先進医療から外れ、保険適用されています。これも検査法ですが、患者数が多かったものの1件あたりの費用が3,484円と高くありませんでした。2018年度先進医療実績の患者数が減少し、費用が増加した要因の一つといえそうです。
なお、2017年度に5位だった「EBウイルス感染症迅速診断(リアルタイムRCP法)」は、2018年4月1日で先進医療から外れています(保険収載されたかどうかは現時点で不明)。

このように見ていくと、昨今の先進医療は入れ替わりが激しい感があります。先進医療や先進医療特約に関しては、お客さまからの相談ニーズが高いテーマですので、引き続き先進医療の動向に注目して行きたいと思います。

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