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出産前後の保険料免除


1989年の「1.57ショック」をご存知でしょうか。合計特殊出生率が、出産が少なくなると言われる丙午(ひのえうま)の年であった1966年の数値1.58を下回ったことから、少子化問題が大きくクローズアップされました。なお、合計特殊出生率とは、一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均を示す指標です。筆者は1989年に第二子を出産していることもあり、このニュースは強く記憶に残っています。
その後も合計特殊出生率は下がり続け、過去最低は2005年の1.26でした。その後、やや改善されたものの、約30年たった最近では1.45前後で推移しています。出産可能な女性の絶対数の減少を考慮すると、すごい勢いで少子化が進んでいることが想像できるのではないでしょうか。
少子化対策の一環として、厚生年金や健康保険に加入して働く女性の妊娠出産時の社会保険料免除制度が整備されてきました。当初は育児休業期間(育休期間)のみでしたが、現在では、産前産後休業期間(産休期間)についても免除されます。育休期間については、育児休業を取得した父親も対象です。
ところが、国民年金や国民健康保険に加入している自営業者やフリーの立場で働く人たちは、こういった恩恵を受けられません。また、これらの人の配偶者は、公的年金の「第3号被保険者(年金保険料免除)」や健康保険の「被扶養者(保険料負担なし)」のような恩恵は受けられません。そのため、大きな不公平があることが指摘されていました。
しかし、今年(2019年)の4月からは、自営業者本人やその妻である立場の第1号被保険者が出産した場合に、少しだけ保険料免除の恩恵を受けられるようになります。新しく始まる「第一号被保険者の産前産後の保険料免除」および、社会保険に加入して働く人の「産休・育休中の保険料免除」の制度について、見てみましょう。

(1)第一号被保険者の産前産後の保険料免除
国民年金の第1号被保険者が出産した場合、出産日の前月(多胎の場合は3ヵ月前)から、出産日を含む月から3ヵ月の「国民年金保険料」が免除されることになります。たとえば、2019年8月に出産した場合、前月の7月から10月までの4か月分が免除されるのです。双子以上の多胎であれば、3か月前の5月から10月までの6ヵ月分です。
今年の2月や3月に出産した場合でも、4月以降の分は免除の対象になります。また、妊娠4ヵ月以降であれば、早産、流産、死産も対象です。
この制度で免除されたときには、通常の納付期間と同じ扱いになります。将来受け取る年金額が減額されません。また、付加保険料については別途納めることもできます。前納制度などを利用して、すでに保険料を納めている場合には、この期間分は還付されます。
申請先  :居住地の自治体の窓口
対象   :出産日の前月から出産月以降3ヵ月の保険料を免除
(多胎の場合は出産日の3ヵ月前から))
 申請期限 :現在は期限なし
今のところ現在申請期限は定められていないので、後からこの制度を知った方も利用できます。

(2)産休・育休中の社会保険料免除 
産休期間中および育休期間中の社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料)の負担が免除されます。本人負担分だけでなく、事業主負担分も免除されます。原則として職場の総務担当などが、年金事務所または健康保険組合に申請しますが、必要書類が揃っていれば本人が申請できます。
保険料免除期間の厚生年金額は、休業開始前の標準報酬月額で計算されます。健康保険の加入者としての立場も変わりません。
また、育休後、子どもが3歳(正確には、3歳到達日の翌日の月の前月)までの期間についても優遇があります。短時間勤務で働き、それに伴って厚生年金の標準報酬月額が低下した場合であっても、厚生年金額は子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づいて計算されます。
申請先  :年金事務所または健康保険組合
対象   :産休・育休期間中の社会保険料を免除(事業主負担も含む)
申請期限 :それぞれ、産休期間中、育休期間中に手続きをする

どちらの制度も利用にあたっては所定の手続きが必要です。産休・育休中の社会保険料免除については申請期限が決まっているので、職場の担当者が慣れていない場合には、当事者である母親、父親も手続き方法や期限を調べておくことも大切です。周りにいる方々も、子育てすることを選んだ方々をサポートしていただければと思います。

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