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コラムColumn

  • 2020.04.23
  • 生命保険
  • 黒田 尚子

保険料後払いの「P2P保険(わりかん保険)」は日本で浸透する?

2020年1月28日、少額短期保険業者・株式会社justInCaseから、「P2P保険(以下、わりかん保険)」が発売されました。

P2Pとは「Peer-to-Peer」の略称のこと。元々の意味は、不特定多数の端末がサーバを介さずに、直接データファイルを共有できる通信技術やソフトウェアを指しますが、P2P保険は、シェアリングエコノミーの保険版といったイメージです。

この保険は、すでに海外でさまざまな商品が取り扱われている(2010年に設立されたドイツのFriendsuranceの自動車保険が始まり?)と聞いていたものの、日本で登場するのは初めて。保険業界でも注目する方が多いようですが、さて、そのしくみは日本でも定着するのでしょうか?

 

わりかん保険の特徴は「同じリスクに対する保険に興味のある集団(プール)で、保険料を拠出」「保険事故が発生し保険金請求が行われた場合、このプールから保険金を支払う」「保険期間満了時(通常は1年後)に、保険金請求の額が少なく、プールに残高が残っている場合、保険金請求を行わなかったプールメンバーにキャッシュバック(もしくは次年度割引)される」という点にあります。

そうです。これって、加入者同士がお金を出し合い、万が一のリスクに備える相互扶助の考え方がベースにある保険本来の考え方ですよね。

それがもっと前面に打ち出されており、鎌倉時代に始まったという「頼母子講(たのもしこう)」のように、友人・知人など比較的小さなソーシャルコミュニティが前提。

そのため、モラルリスクにも対応しやすく、これまで提供不可と思われていた保険も開発できるといいます。実際、海外では、離婚保険、迷子保険、ID紛失保険などユニークな保険も取り扱われています。

 

では、具体的に、今回発売された「わりかん がん保険」の特徴を見てみましょう。

商品概要は非常にシンプル。初めて「がん」または「上皮内がん」と診断確定された場合、一律80万円の診断一時金が受け取れます。告知内容は7項目で、従来のがん保険と同様に、がん経験者は加入できません。

従来の保険とわりかん保険が大きく違う点は(1)「保険料の支払いタイミング」、(2)「保険料の金額」、(3)「管理費の開示」の3つです。

まず(1)については、前者が保険金を受け取る前(事前)に保険料を払うのに対して、後者は保険金を受け取った後(事後)に払うこと。

(2)については、前者が固定に対して、後者は実際の保険金請求によって変動すること。したがって、保険金等の支払いが発生しなければ、保険料がゼロです。

極端なことを言えば、最初に「がん」または「死亡」した人は、まったく保険料を払わずに、保険金だけ受け取って、一抜け(!)できる可能性もあります。

なお、保険料は、年齢に応じて上限が決まっています(男女共通)。20歳~39歳は500円、40歳~54歳は990円、55歳~74歳は3,190円です。がん保険だけに、50歳後半の罹患率の上昇(がんの発生リスク)が如実に反映されていますね。

 

ちなみに、この商品には、死亡保険金もついています。ただし、保険金額は、性別・年齢によってバラバラ。若い方の方が、死亡リスクは低いので、保険金額が高いのはわかるのですが、20歳~24歳女性と55歳~59歳女性が同じ300万円で、50歳~54歳女性は30万円となっていて、ちょっと不思議に感じられる方もいるでしょう。

これは、前述した3つの保険料グループの中でも、性別や年齢によってがん罹患リスクが異なるため、死亡保険金でバランスを取り、契約者間の公平性を担保しているわけです。

 

最後の(3)については、前者は非開示ですが、後者は開示となっていること。

営業保険料に占める管理費の割合は、契約者が2,000人増えるごとに1%減り、2万件以上になると、35%から25%にまで引き下げられます。

加入者には毎月初旬にお知らせメールが届きます。

「●月の保険料は●円です!がんになった人●名、保険料に占める管理費割合は●%です」などといった文面で、なんとなく、「ああ、まだがんになった人はいないのだなあ。よかったな」など、ちょっとした連帯感が生まれそう。

なお、死亡保障は契約時の2月1日始期ですでに始まっていますが、がん保障は、2カ月間の待ち期間(通常3カ月ですから短い!)があり、開始は今月4月からです(4月9日時点で保険料はまだ0円)。

 

旧態依然とした業界にあって、久々に革新的な商品と言えますが、筆者の私見として、メリットは、シンプルでわかりやすく、保障に対して保険料は割安。透明性が高い点が挙げられます。

一方、デメリットは、がん診断時の一時金が80万円のみと少額(被保険者に対して少額短期保険業者が引き受けできる医療保険の上限なので仕方ないのですが)である点。また、短期の更新型商品でなければスキームの運用がちょっと難しいかなと。終身など長期保障のニーズが高い日本人になじむかどうかという点でしょうか。

ちなみに、がん保険を選んだのは、P2P保険のスキームが日本で初めての複雑なものなので、分かりやすさ(がんになったら一時金が受け取れる)という観点からとのこと。

「がん保険を検討したいけれども、保険料が高いのはちょっと…」という方が、クレジットカードに付帯されている無料の保険のように、手軽にがん保障を準備したり、今の保険の上乗せ分にしたりという場合に活用してはいかがでしょうか?

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