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老後の生活費(平均)は3年前よりも増加?


先日、公益財団法人生命保険文化センターが3年ごとに調査・公表している「生活保障に関する調査」の最新(令和元年度)の調査結果(速報版)が公表されました。調査内容は、「生活設計と生活保障意識」、「医療保障」、「老後保障」、「死亡保障」、「介護保障」などについてで、全国の400地点で18~69歳の個人(男女)に回答してもらっているようです。

調査結果の中でマスコミなどによく取り上げられるのが、老後保障に関する部分。特に、「老後の最低必要生活費」と「ゆとりある老後生活費」については、将来の老後の生活をイメージするためにも、あちこちでよく引用されるデータとなっています。

今回の調査結果を見てみると、「老後の最低必要生活費」は、平均で月額22.1万円となっており、3年前(平成28年)よりも0.1万円増加していました。そして、「ゆとりある老後生活費」は、平均で月額36.1万円と、3年前よりも1.2万円増加しています。平均額で見ると、最低必要生活費はごくわずかな増加(約0.5%アップ)、ゆとりある老後生活費は若干の増加(約3.4%アップ)といったところでしょうか。

とはいえ、過去10回(平成5年度~令和元年度)の調査結果を見ると、最低必要生活費の平均額は最低22.0万円(平成25年度、28年度)から最高24.2万円(平成16年度)の間で推移していますし、ゆとりのある老後生活費の平均額も最低34.9万円(平成28年度)から最高39.4万円(平成8年度)の間で推移しているので、全体的な方向性としては少し下がりつつあるようにも見えますが、これまでの30年近い期間でそれほど大きくは変わっていないといえるでしょう。

また当然ながら、平均額というのはあくまでも平均額に過ぎません。調査結果を細かく見ると、実際の回答内容は、回答者ごとにかなりのブレがあることがわかります。今回の回答結果の分布を見てみると、最低必要生活費の回答が25万円以上だった人の割合は32.0%と、3割を超えています。ゆとりある老後生活費の回答も、40万円以上だった人の割合が29.3%と、3割近いのです。

逆に、最低必要生活費の回答が20万円未満だった人も18.9%で2割近くいます。ゆとりある老後生活費の回答が30万円未満だった人も20.7%と、約2割いるのです。

つまり、回答者のうち約3割の人は、平均額を見て、「そんなに少ないの?」と思うでしょうし、また一方で約2割の人は、平均額を見て、「そんなに必要なの?」と思うはずです。平均額はあくまでも平均額として捉え、実際の老後生活費は人によってかなりの開きがあることを十分に認識しておくべきでしょう。

「公的年金だけでは2,000万円不足する」と問題視されたときもそうでしたが、平均額を元に計算されたものだけで判断すると、本質からずれてしまう可能性があるということです。

さまざまな機関が調査・公表している統計資料はとても参考になるデータが多く、調査そのものが意義深いものだといえるでしょうし、素晴らしい活動であることは間違いありません。

だからこそ、調査結果を見る側が、結果に対して短絡的な判断や、恣意的な判断をしてはならないと思うのです。しかし、さまざまなメディアから流れてくる情報は、短絡的な判断や恣意的な判断で情報が切り取られ、何らかのバイアスのかかった情報として世の中に流れてしまう傾向が強いように感じます。

やはり重要なのは、私たち自身が情報を受け取る際には冷静さを持って受け取り、それを判断する際には冷静に分析をしていくことでしょう。そのうえで、さまざまな意見を持つのは自由です。私たちが自らの思考を停止して、メディアからの情報をただそのまま受け取るようになったら危険です。このコーナーの執筆者たちはみな聡明な方々なのでご安心ください。

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