FPI-J 生活経済研究所長野

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  • 2019.10.03
  • ライフプラン
  • 栗本 大介

退職金の受取り方の違いによる注意点

退職金の受取り方は、(1)一時金での受取り、(2)分割での受取り(年金受取り)、(3)一時金と年金の併用の3つを選択できるケースが多いようです。そのため、「どの受取り方が有利なのか?」という質問は多くあります。この場合の「有利」とは、税引き後の手取り額が多くなるという意味ですが、今回は、(1)一時金受取りと(2)年金受取りの2つについて、受取り方の違いによる注意点をお伝えします。

■退職所得(一時金受取り)の税額計算
退職金を、(1)一時金受取りにした場合、退職所得として税額を計算します。所得税は、収入から経費を引いた「所得」を基準に計算しますが、退職所得の場合の経費は勤続年数によって決まります。ここでは、2,000万円の退職一時金を例に計算の流れをご紹介します。

経費となる「勤続年数に応じた退職所得控除額」は、「勤続20年目までは1年あたり40万円」、「勤続21年目以降は1年あたり70万円」として計算するため、勤続35年であれば「(40万円×20年)+(70万円×15年)=1,850万円」となります。
2,000万円の収入から1,850万円の経費を引いた150万円が所得となるのですが、税率を掛けるのはこの金額の2分の1です。つまり75万円(150万円÷2)が課税所得となり、他の要素を一切無視すると、所得税が5%の37,500円、住民税が10%の75,000円、合計112,500円が納税額となります。なお、所得税は超過累進税率なので、課税所得に応じて税率が異なります。また、厳密には所得税に復興特別所得税が課せられます。

■雑所得(年金受取り)の税額計算
一方、2,000万円を20年間に分割して年金受取りとするケースを見てみます。
まず毎年の収入には運用収益が上乗せされるため、単純に2,000万円÷20年=100万円とはなりません。仮に1%で運用しながら取り崩す場合、毎年の受取額(=収入)は約111万円。分割で受取る退職金は、企業年金として「公的年金等による雑所得」に分類されるため、収入金額と年齢に応じて自動的に経費が決まります。
例えば65歳以上の人であれば最低限認められる経費が120万円ですから、「111万円-120万円でマイナスとなるため、雑所得は0円と考えます。」所得が0円であれば、当然ながら税金も0円です。これだけを見ると、金額が多く税金の少ない分割受取りの方が有利のように見えますが、話はそう単純ではありません。

公的年金等の雑所得には、文字通り公的年金による収入も含まれます。
仮に、この方の老齢基礎年金と老齢厚生年金の受取合計額が年間200万円だとすると、企業年金の111万円と合わせた311万円が収入となる一方、経費は120万円で変わりません。つまり「311万円-120万円=191万円」が所得となります。所得から差し引ける所得控除額にもよりますが、仮に所得控除額が101万円で課税所得が90万円(191万円-101万円)だとすると、所得税が5%の45,000円、住民税が10%の90,000円、合計135,000円が毎年の納税額です。実際の税額計算は家族構成の違いや他の所得状況も影響するため、これらはあくまでも概算ですが、一時金受取り時以上の税金が毎年課されることになるのです。

■所得増加による他の制度への影響
これに加えて所得に応じて毎年の社会保険料も変化します。
その代表例が退職後の国民年金保険料や介護保険料。国民年金保険料は自治体ごとに計算の基準が異なりますが、所得に応じて保険料が決まる所得割の計算が「基準総所得金額×7.6%」の自治体を例にとります。基準総所得金額は、「所得を合算した金額から33万円を引いた金額」となっているので、先ほどの計算結果を使うと191万円-33万円=158万円。
収入が公的年金だけの場合と比べると年間で8~9万円ほど増えることになります。さらに世帯所得の増加が大きくなると、医療保険や介護保険の自己負担割合に影響が出ることもあります。
ちなみに、税金や社会保険の影響以外を考えると別の答えも出てきます。例えば住宅ローンの残債がある場合、一時金で受取って一括返済すると、支払い利息総額の削減効果が大きくなるでしょう。また、まとまったお金を運用に回すことで大きく増やせる可能性がある一方、思いがけない大きな損失を抱える可能性もあります。

このように「どちらが有利なのか?」という二者択一で考えるのではなく、受取り方による税金や社会保険料への影響を知ったうえで、受取ったお金の使い方なども考慮し、総合的に判断できる基準を持つことが大切なのです。

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