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一時金?年金?失敗しない確定拠出年金の受け取り方


確定拠出年金はどのように運用するかも大切ですが、受け取り方も重要です。一時金か年金か、失敗しない受け取り方法を解説します。

【1】 一時金で受け取ると「退職所得控除」が使える
確定拠出年金を一時金で受け取る場合は退職金として扱われます。受け取った退職金から「退職所得控除」を差し引けるため、課税対象が小さくなり税制上有利です。

<退職所得控除額の計算>
・ 勤続20年以下・・・40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
・ 勤続20年超・・・800万円+70万円×(勤続年数-20年)

なお、退職所得控除額の計算において、勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げて計算します。実際の勤続が39年と1日の場合、「勤続40年」として計算します。

例1)勤続年数40年の場合
800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円

勤続年数40年の場合、受け取った退職金が2,200万円以内なら所得税は課税されません。

<退職所得の計算>
退職所得は他の所得と分けて個別に税額を計算します。これを「分離課税」といいます。
退職所得は次のように計算します。
(受け取った退職金-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

受け取った退職金が退職所得控除額を超えても、課税されるのは「超えた額の1/2」です。この金額を「課税退職所得」といいます。

例2)退職金額3,000万円、退職所得控除額2,200万円の場合
(3,000万円-2,200万円)×1/2 = 400万円(課税退職所得)
税額の計算:400万円×20%-42.75万円=37.25万円(注1)

例2の場合、所得税額は37.25万円ですが、次に退職金3,000万円のうち、8割にあたる2,400万円を一時金で受け取った場合、所得税額はどうなるでしょうか。

例3)退職金2,400万円、退職所得控除額2,200万円の場合
(2,400万円-2,200万円)×1/2=100万円(課税退職所得)
税額の計算:100万円×5%=5万円(注1)

ご覧のように、一時金で受け取る額を調整することで、所得税額を37.25万円から5万円に抑えられました。課税退職所得が195万円までは税率5%が適用されるため、退職所得控除の範囲内もしくは課税退職所得を195万円以内に受取額を調整するとよいでしょう。

【2】 年金で受け取ると「公的年金等控除」が使える
確定拠出年金を年金で受け取った場合、雑所得として扱われます。雑所得は総合課税のため、他の所得と合算して税額を計算しますが、公的年金や確定拠出年金など一部の企業年金については、「公的年金等控除」が適用できます。

<年金受け取りのメリット>
ア)年金原資を運用しながら受け取れる(年金原資が増える可能性がある)
イ)公的年金等控除が使える

<年金受け取りのデメリット>
ア)公的年金控除額はさほど大きくない(控除額を簡単に超えてしまう)
イ)社会保険料がかかる(国民健康保険や介護保険)

公的年金や確定拠出年金などの合計が年間110万円を超えると所得税が課税されます(注2)。一時金受け取りに比べると、税制上のメリットは小さいといえます。

【3】一時金か?年金か?失敗しない受け取り方法とは
税制メリットを考えるなら、一時金受け取りを基本にし、退職所得控除額を最大限に活用しましょう。退職所得控除の範囲内、もしくは課税退職所得が195万円に収まるよう一時金受け取りを優先し、残りは年金で受け取ります。

一時金で受け取った退職金は、2024年から始まる新しいNISAで非課税運用を継続するもの良策です。新しいNISAでは年間最大360万円まで投資できるため、受け取った退職金を早いペースで投資に回せます。また、非課税期間も無期限化されるため、購入した株式等が値下がりした場合でも、気長に相場回復を待つ戦略もとれます。

年金受け取りの場合、老齢年金の繰下げも検討しましょう。65歳からもらえる老齢年金を請求せず、先に確定拠出年金だけを年金で受け取ります。生活に影響が出ない程度に所得を下げることで所得税を抑えつつ、老齢年金の増額を狙う手法です。老齢年金は1月繰り下げるごとに年金額が0.7%ずつ増額されますから、70歳まで繰り下げれば1.42倍、75歳まで繰り下げれば1.84倍に増額されます。

ただし、老齢年金を繰り下げる場合は次の点に注意を。1つ目は、老齢厚生年金を繰り下げると、繰り下げた期間は加給年金を受け取れません。一定の要件を満たせば、65歳からの老齢厚生年金に加給年金額(約40万円)が加算されることがありますが、加給年金を受け取りたい場合は、老齢厚生年金は繰り下げず、老齢基礎年金だけを繰り下げるとよいでしょう。

2つ目の注意点。繰り下げている間に本人が亡くなった場合、年金額は増額されません。この場合、本来65歳からもらえたはずの年金額を「未支給年金」として遺族が受け取ります。ただし、年金は5年以上さかのぼって請求できないため、請求が遅れると未支給年金を全額受け取れない可能性があります。請求漏れのないように、家族内で情報を共有しておきましょう。

注1:実際には復興特別所得税(税額の2.1%)がかかる
注2:受給者が65歳以上で年金以外の所得が年間1,000万円以下の場合

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