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老齢年金と私的年金をセットで退職後プランを考えよう


リタイアメントプランで課題となるのは、退職後の収入確保です。退職後も働いて収入を得る、私的年金(iDeCoや個人年金)などで補完するなどの対策が考えられますが、そもそも「老齢年金を何歳で受け取るのか」によって、プランニングが大きく変わります。老齢年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、本人の請求により、受給開始時期を早めたり遅らせたりできるからです。

■老齢年金の「繰上げ」とは
本来65歳から受給できる年金を、60~65歳までの間に繰上げて受け取る方法です。ただし、繰上げ受給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。なお、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求する必要があります。

■老齢年金の「繰下げ」とは
本来65歳から受給できる年金を、65~75歳までの間に繰下げて受け取る方法です。繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げができます。

■あえて「繰下げ請求」せず、「通常の年金請求」も選択できる
65歳で年金の請求をせず70歳まで待機したとしましょう。ここで年金を請求する場合、「繰下げ請求」と「通常の年金請求」どちらかを選択できます。

「繰下げ請求」を選択すると、70歳から42%増額された年金を生涯受給できます。一方、「通常の年金請求」を選択すると、65~69歳まで5年分を「未支給年金」として一括受給し、70歳から増額されていない年金を生涯受給できます。介護などの理由で急にまとまったお金が必要な場合は、「通常の年金請求」を選択するとよいでしょう。

■繰下げ受給の上限年齢を70歳から75歳に引き上げ
年金の受給権は5年を経過すると時効により消滅します。つまり、未支給年金を請求できるのは請求時からさかのぼって5年分です。

令和4年4月より、繰下げの上限年齢が75歳に引き上げられました。これをうけ、71歳まで待機していた方が通常の年金請求を選択したとしましょう。請求できる未支給年金は66~71歳までの5年分となり、65~66歳まで1年分の受給権が時効により消滅します。これでは、せっかく上限年齢を75歳に引き上げても、70歳以降の繰下げを躊躇する人が出るはずです。そこで、令和5年改正で新設されたのが「特例的な繰下げみなし増額制度」です。

■「特例的な繰下げみなし増額制度」とは
70歳以降に通常の年金請求をした場合、5年前に繰下げ請求したものとみなし、増額された年金の5年分を未支給年金として一括受給できる制度です。

例えば、65歳から200万円の老齢年金を受給できる方が、71歳で「繰下げ請求」を選択すると、50.4%増額された約301万円の年金を生涯受給できます。一方、71歳で「通常の年金請求」を選択すると、請求日の5年前(つまり66歳時)に繰上げ請求したとみなし、8.4%増額された約217万円の年金を71歳から生涯受給できます。請求できる未支給年金は66~71歳までの増額された5年分となり、約1,085万円(217万円×5年分)を一括受給できます。

■老齢年金の繰上げと私的年金の活用
60歳以降の勤労収入が大きく減少する見込みの場合、老齢年金の繰上げを検討します。65歳から200万円の老齢年金を受給できる方が60歳で繰上げ請求すると、152万円の年金を生涯受給できます。60~65歳まで勤労年収200万円程度を確保できれば合計352万円の収入となり、貯蓄の取り崩しをおさえられます。

一方、65歳以降の収入が減額された老齢年金152万円のみとなり、貯蓄の取崩しが予想されるため、65歳から10年または15年間を私的年金でカバーします。

■老齢年金の繰下げと私的年金の活用
60歳以降も一定以上の収入が見込めるなら、老齢年金の繰下げを検討します。65歳から200万円の老齢年金を受給できる方が70歳で繰下げ請求すると、老齢年金は284万円となり、70歳以降の収支安定を図れます。

一方、60~70歳まで十分な収入が確保できない場合を想定し、この期間を私的年金でカバーします。

■私的年金の運用面だけでなく、活用面に注目する
このように、老齢年金の受け取り方によって、私的年金の準備も変わります。あらゆるパターンを想定し、どのプランが自分に最もフィットするかを考えます。キャッシュフロー表を作成し、貯蓄残高の推移を確認するとよいでしょう。私的年金は運用や商品性だけでなく、活用方法の検討こそが重要なのです。

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