FPI-J 生活経済研究所長野

MENU

コラムColumn

ふるさと納税額に役立つ、住民税決定通知書の活用法


6月になると、多くの会社員の手元に「住民税決定通知書」が届きます。会社経由で配布されるこの書類には、1年間の住民税額やその根拠となる所得額・控除額などが記載されています。多くの方は、ざっと目を通して保管しているか、あるいは封も開けずに引き出しにしまっているかもしれません。

しかしこの通知書、実は「ふるさと納税をきちんと活用できているか」を確認するうえで、とても重要な書類です。特にワンストップ特例制度を利用した方や、複数の自治体に寄附を行った方は、反映ミスが起きるケースもあるため、きちんと内容を確認することが大切です。

本コラムでは、住民税決定通知書から何が読み取れるのか、ふるさと納税が正しく反映されているかの確認方法、そして万が一ミスがあった場合の対処法について解説します。

■住民税決定通知書とは
正式には「特別徴収税額の決定通知書」といいます。その年の6月から翌年5月までに給与から天引きされる住民税の金額を通知するための書類です。会社員の場合、多くは勤務先を通じて6月に配布されます。

この通知書には、以下のような情報が記載されています:

・ 前年の所得金額
・ 各種所得控除の内容(社会保険料控除、扶養控除、生命保険料控除など)
・ 課税所得金額とその計算根拠
・ 住民税の内訳(市民税・県民税)
・ 税額控除の明細(ふるさと納税、住宅ローン控除など)
・ 6月~翌年5月までの毎月の住民税額

ふるさと納税が正しく反映されているかを確認するポイントは、「税額控除」欄と「摘要」欄です。

・ 「税額控除」欄(通知書の中段~下段にある)
・ 「摘要」欄(通知書の一番下にある備考欄)

ただし、会社によっては詳細情報の記載がない「簡易版」通知書のみを従業員に配布するケースもあります。この場合、「寄附金控除」や「所得控除」の具体的な金額が記載されておらず、ふるさと納税の控除が反映されているかを確認できません。

その場合は、人事・総務担当者に依頼して、正式な住民税決定通知書のコピーを取り寄せるようにしましょう。会社が原本を保管しているため、申し出れば対応してもらえることが一般的です。

■ふるさと納税の仕組みと控除の適用
ふるさと納税は、「自治体への寄附」という形で行う制度ですが、実質的には「2,000円の自己負担で寄附額のほとんどが控除される」制度です。控除の内訳は以下の通りです。

・ 所得税からの控除(確定申告をした場合)
・ 住民税の基本分からの控除(一定の上限まで)
・ 住民税の特例分からの控除(最大寄附額により変動)

このうち、住民税に関わる控除は「基本控除」と「特例控除」の2種類です。これらが住民税決定通知書の「税額控除欄」に記載されていることで、ふるさと納税が正しく反映されていると判断できます。

■確定申告をした場合の確認方法
ふるさと納税を行ったうえで確定申告をした場合は、控除が所得税と住民税の両方に分けて反映されます。所得税は確定申告後に還付され、住民税は翌年度の住民税額から控除されます。控除が正しく適用されているかを確認するためには、以下の手順で確認してみましょう。

<用意する書類>
・ 住民税決定通知書
・ 昨年の確定申告書の控え(特に第一表)

<確認ステップ>
(1)確定申告書の「課税される所得金額」を確認
→ 確定申告書第一表の「課税される所得金額」の欄を確認します。…【ア】

(2)【ア】に対する所得税率を確認
  → 国税庁の速算表に基づき、該当する所得税率を確認します。
「課税される所得金額」に応じた所得税率は、以下のようになっています。
・ 195万円以下の場合 → 税率 5%
  ・ 330万円以下の場合 → 税率 10%
  ・ 695万円以下の場合 → 税率 20%
   ※一般的な勤労者の場合、所得税率は上記のいずれかに該当するケースがほとんどです。

(3)所得税からの控除額を計算
  → 計算式:(寄附金額 − 2,000円)× 所得税率 × 1.021 … 【イ】
※復興特別所得税を加味した1.021倍が必要

(4)住民税決定通知書の「摘要欄」を確認
  → 多くの通知書では住民税決定通知書の下部に「摘要」欄があります。
   例:「寄附金税額控除 市民税○○円 県民税△△円」

(5)住民税控除額の合計を算出
  → 「市民税○○円+県民税△△円」の合計金額を計算します。…【ウ】

(6)寄附金控除額の合計として妥当かを確認
  → 所得税控除額【イ】 + 住民税控除額【ウ】 = 寄附金額 − 2,000円
  になっていれば、控除は正しく反映されています(※1)。

■ワンストップ特例制度を利用した場合の確認方法
ワンストップ特例制度を利用した場合、ふるさと納税による控除はすべて住民税にのみ反映されます。つまり、所得税からの還付はなく、控除額全体が翌年度の住民税から差し引かれます。

<確認ステップ>
(1)住民税決定通知書の「摘要」欄を確認
  → 住民税決定通知書の下部にある「摘要」欄に、次のような表記があります。
   例:「寄附金税額控除 市民税○○円 県民税△△円」

(2)住民税控除額の合計を算出
  → 「市民税○○円+県民税△△円」の合計金額を計算します。…【ウ】

(3)「寄附金額 − 2,000円」と【ウ】が一致するかを確認
  → 「寄附金額 − 2,000円=【ウ】」 となっていれば、正しく反映されています(※1)。

■控除が正しく反映されていない場合の対処方法
「控除額がどう見ても少ない」「寄附したのに記載がない」と感じた場合は、次のような手順で迅速に確認・修正の対応を行うことが重要です。

<用意する書類>
・ 住民税決定通知書
・ 確定申告書の控え(確定申告をした場合)
・ 寄附金受領証明書(寄附先の自治体から送付されたもの)

これらを手元に揃えて、以下の窓口に問い合わせましょう。

(1)確定申告をしている場合
→ 居住地を管轄する税務署に確認します。
税務署では、確定申告書に記載された寄附金控除の内容や、税務署側での処理状況、住民税への連携内容を確認できます。必要であれば、修正申告や再申告の案内を受けましょう。

(2)ワンストップ特例制度を利用している場合
→ 居住地の市区町村の「個人住民税課」に問い合わせます。
市区町村側で、寄附先自治体から送付された情報が正しく反映されているか、控除対象として登録されているかを確認してもらえます。不備や未到達がある場合は、修正や再提出の可否を相談できます。

控除内容に誤りがあっても、早めに行動すれば修正可能なケースも多いため、通知書の確認は6月中に行うことをおすすめします。

■通知書はしまい込まずに活用しよう
ふるさと納税は、税のしくみを活用した寄附制度ですが、その効果を最大限に引き出すには、自分で控除内容を確認する意識が欠かせません。住民税決定通知書は、単なる「税額のお知らせ」ではなく、前年の所得や控除の内容が反映された家計の通知表ともいえる大切な書類です。

とくに、ふるさと納税をした方にとっては、「寄附が正しく反映されているか」「控除額に漏れがないか」を確認する唯一の機会です。通知書の見方や仕組みを知っておけば、万一のミスにも早く気づくことができ、家計にとっても安心です。毎年届くこの一枚を、家計管理や税控除の確認に役立てる習慣をぜひ身につけてください。

※1:調整控除の額によって多少の誤差が生じる場合がある

お電話でのお問い合わせ

生活経済研究所長野 推進企画課

0263-88-6480

経験豊富なスタッフが、
丁寧にご要望を承ります。

受付時間 / 平日9:00〜18:00

Webでのお問い合わせ

Webからのお問い合わせなら
24時間いつでも承ることが可能です。

TOP