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購入するだけが住宅じゃない?住まいも多様化の時代に


若年層の間で賃貸住宅を積極的に選ぶ動きが顕著になってきている現代社会において、アドレスホッパー、ノマドワーカー、デュアラーといったライフスタイルを選択する人々が増えています。これらの人々は、従来の「家を持つ」という価値観から距離を置き、柔軟性と自由を重視する傾向にあります。この傾向は住宅選択における経済的な観点と、仕事の仕方や職種の変化と密接に関連しています。

賃貸住宅を選択する主な理由は次の(1)~(6)のように推察されます。
(1) 住宅を所有するリスク(転勤、自然災害など)を考える人が増えている
(2) 経済的に住宅の所有が難しい
(3) 3ステージからマルチステージの時代へ変化
(4) 将来は違う場所に住みたい
(5) 住宅の所有に興味が無い(所有の必要性が無い)
(6) ライフスタイルにあった住居に住みたい(場所、面積)

◆アドレスホッパー
定住する家を持たず、移動しながら生活します。アドレス(住所)をホッピング(転々と)するという意味でアドレスホッパーと呼ばれています。アドレスホッパーの最大の特徴は特定の住所(固定された家)を持たないことですが、自由度が高く自分の望むライフスタイルを実現できます。

◆ノマドワーカー
カフェやコワーキングスペースなども含め、さまざまな場所で仕事をする人で、一定のオフィス以外でも働けることが条件となります。ノマドという言葉は英語で「遊牧民」を表しますが、一応は住所を持ち、仕事をする場所を転々とするスタイルです。ただし、その住所もある程度の期間で変える方も多く、アドレスホッパーと似た性質を持ちます。

◆デュアラー
デュアラーとは、「デュアル(二重の)」が起源で、生活拠点が二重にある人をいいます。一般的には都会と田舎に住まいを構えるデュアルライフ(二拠点居住)を指します。

例えば、東京都に勤務地があるため平日は都内の賃貸住宅に住み、週末は遠く離れた地方にある自宅で趣味に没頭するなど、仕事をする場所と休日を過ごす場所を分けるデュアラーが多いようです。趣味を重要視する方に多く、サーフィンやアウトドアライフなどを満喫するために生活拠点を二重にしています。デュアラーの場合、どちらかの居所は自己所有であることが多いようです。

◆現代の世帯構成の変化
現代の世帯構成の変化に着目すると、以前に比べて少子化の進行、晩婚化、単独世帯の増加などにより、伝統的な家族構造は大きく変化しました。夫婦と子の世帯は全世帯の25%まで低下する一方で、単独世帯は38%まで増加し既に日本の標準世帯となっている実態があります。

このような背景下では、大きな一戸建てを持つことの価値が薄れ、都市部での利便性を求める若者が増えています。また、シェアハウスやコリビングスペースの普及は、共同生活に対する抵抗感を低減させ、よりフレキシブルな住居選択を可能にしています。

◆経済的事情と住宅選択
経済的事情に目を向けると、不動産価格(特に建物)の高騰や雇用の不安定性が若年層の住宅選択に大きな影響を与えています。特に都市部では、家を購入するための初期費用やローン返済の負担が重くのしかかります。賃貸住宅を選択することで、これらの負担を回避し、生活の柔軟性を保持することもできます。また、仕事におけるキャリアの変更や地域移動の可能性を考慮すると、賃貸住宅は経済的合理性が高い選択肢といえます。また、一部には賃貸住宅を選択する理由に、自然災害の増加による不動産所有の不安を挙げる人もいます。

◆もはや持ち家か賃貸かを議論する時代ではない
住まいを考える際に重要なのは、個々のライフプランに合っているかどうかです。アドレスホッパーやノマドワーカーのように、地域に縛られずに生活したい人々には、賃貸住宅が適しています。これに対し、長期的に安定した生活を望む人々は、購入による自己資産の形成を視野に入れるべきです。

現代社会における若年層の賃貸住宅選択の傾向は、変化する世帯構成、経済的事情、そして働き方や生活様式の多様化を反映しています。そのためには将来にわたって経済的な柔軟性と安定を確保するための、賢明な貯蓄や投資戦略も重要な課題です。

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