コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFP ファイナンシャル・プランナー
- 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
- TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
- 損害保険上級資格
- DCプランナー2級
- キャリアコンサルタント
- 2023.10.19
- 生命保険
外貨建一時払終身保険の魅力と注意点
外国との金利差が主な原因で、円が売られ外貨が買われ円安傾向が続いています。保険商品においても外貨建一時払終身保険の予定利率が高くなっています。外貨建一時払終身保険とは、契約時に保険料を一括で払い込み、米ドルや豪ドルなどの外貨(その通貨の国の債券)で運用する保険のことです。運用の結果次第で、死亡保険金や解約返戻金が増減しますが、保険料の払い込みも死亡保険金や解約返戻金の受取りもすべて、円か外貨のどちらでも選択が可能です。
保険の仕組みとしては、円建一時払終身保険の外貨版ですが、魅力は予定利率が高いため円建に比べるとより少ない保険料で保障を準備できる点にあります。そのため、相続対策や資産運用の手段として加入する人も多くいます。適用される予定利率は加入時に決定されますが、10年、15年、20年などの定められた保証期間が経過した後に更改されます。また商品によってはターゲット設定ができ、解約返戻金が目標額に到達した時点で自動的に円建終身保険へ移行し、運用成果を確保するタイプもあります。保険としての本来の機能よりも、「資産運用の手段」と考える場合にはどのような魅力や注意点があるのでしょうか。
■商品選びのポイント
加入時のポイントとして、予定利率、手数料、初期費用が考えられます。
(1)予定利率は各保険会社が設定するため一律ではありません。毎月または月に2回変わります。
(2)加入時に円から外貨に換えるため、為替の影響を受けます。為替手数料は保険会社によって異なりますが、1ドル50銭が一般的です。予定利率が高いとはいえ、加入時は円高であることに越したことはありません。しかし、円高になるのを待つ間に、予定利率が下がるというケースも考えられます。
(3)初期費用は契約時に保険料から差し引かれますが、金額は保険会社によって異なります。初期費用が多くなると運用開始時の元本が減ります。
■どのような人にお勧めなのか
(1)余裕資金のある人
何年か後に必ず必要な資金を運用するのは推奨しません。終身保険ですから資金が必要な時には解約し現金化しますが、場合によっては、為替とその他諸費用(後述)の影響を受け元本割れするケースもあり得ます。長期にわたって高い利率は保証されていますから、じっくり運用されるのをお勧めします。
(2)リスクを取ってでも資産を増やす可能性に期待したい人
為替手数料や初期費用の他に、解約時には様々なリスクがあります。解約控除と市場価格調整です。
解約控除は解約返戻金から差し引かれる金額のことです。契約年数が短いほど差し引かれる金額は大きく、契約年数が経つにつれ徐々に少なくなっていきます。予定利率の保証期間が終わる頃には差し引かれなくなるのが一般的です。
市場価格調整は、市場金利の変動によって解約返戻金が増えたり減ったりする仕組みです。
外貨建保険は外国債券で運用されているため、契約時の予定利率より解約時の市場金利が高い場合は債券価格が下落し、その影響で解約返戻金が減ります。逆に解約時に市場金利が下がっていたら債券価格が上昇しているので解約返戻金は増えます。
更に解約時の為替レートも影響します。解約控除、市場価格調整、為替リスクなどを理解し、このようなリスクがあっても資産が増える可能性に期待したい人には魅力的に感じられるでしょう。
(3)海外留学や海外旅行、将来海外移住を考えている人
外貨受け取りが可能なため、外貨を使う予定がある人、その機会が多い人の場合は為替リスクを考慮する必要がありません。解約控除と市場価格調整リスクだけを想定しておけばよいことになります。
■注意点
あくまでも余裕資金で、使う予定のない資金での加入をお勧めします。また為替リスクや、外貨建一時払終身保険特有の仕組みやそこから発生する費用や手数料について、うまく理解できない人は加入しない方がいいでしょう。
保険会社によっては解約控除や市場価格調整のない外貨建一時払終身保険もあります。初めてチャレンジする場合は、このような商品から始めるといいかもしれません。また運用で失敗しそうなら解約せず終身保険として活用するという心の余裕も必要です。