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執筆者プロフィール
- CFPファイナンシャル・プランナー
- 生活経済研究所長野 主任研究員
- 2023.10.12
- ライフプラン
子どもの教育費を貯める、お勧めの方法は?
子どもの教育費は、親として最も気になるお金の問題のひとつです。幼稚園から大学卒業までにかかる教育費は、子ども一人あたりで約1,000万円ともいわれています。特に大学進学時には、一度に数百万円の出費がかかります。そんな大金をどう準備すればよいかで悩まれている親御さんも多いでしょう。
教育費を貯める方法は様々ですが、ここでは代表的な4つの商品を比較してみます。それぞれにメリットとデメリットがあるので、自分の家計や目標額に合わせて検討しましょう。
■預貯金
銀行や郵便局などにお金を預ける方法です。普通預金や定期預金、積立定期預金などがあります。元本保証があるため、市場の変動によって預けたお金が減ってしまう心配がありません。また、普通預金や積立定期預金はいつでも引き出しできます。定期預金も満期前に解約すれば引き出し可能です。資金ニーズに合わせて柔軟に対応できます。
ただし、預貯金の利息は非常に低いため、物価の上昇率を下回る可能性があります。長期的には資産価値が下がってしまうかもしれません。
■子ども保険(学資保険)
子どもの教育資金を目的とした保険商品です。毎月一定の保険料を支払い、子どもが一定年齢に達したときに、満期金を受け取ります。
口座振替やクレジットカードで保険料を支払うことで、強制的な積み立てが可能です。また、万一の保障機能があります。契約者である親が死亡した場合、残りの保険料が免除され、子どもが一定年齢に達すると満期金を受け取れます。
ただし、預貯金と同様に子ども保険の利回りも低く、商品や契約内容によっては、支払った保険料の総額より、受け取れる満期金の方が少ないケースもあります。また、満期前に解約すると、受け取れる解約返戻金は支払った保険料総額よりも少なくなるのが一般的です。
■NISA(少額投資非課税制度)
投資信託や株式などの金融商品を非課税で購入できる制度です。「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があります。2024年1月からは「新NISA」として一本化され、一つの口座内で「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設定されます。
預貯金や子ども保険に比べ、市場の動向によっては高い利回りを期待できます。さらに、NISAで購入した金融商品から得られる収益には課税されません。非課税で投資できるのは「一般NISA」が年間120万円まで、「つみたてNISA」が年間40万円までです。新NISAでは「成長投資枠」が年間240万円まで、「つみたて投資枠」が年間120万円までに拡充されます。
なお、非課税で運用できる期間は「一般NISA」が5年、「つみたてNISA」が20年ですが、新NISAでは無期限化され、いつでも好きなタイミングで売却できるようになります。資金ニーズに合わせて柔軟に対応できる点はメリットといえるでしょう。
ただし、市場の変動によっては、投資元本を下回ってしまうリスクがあります。また、投資信託などの金融商品には、信託報酬や手数料などのコストがかかります。コストは利回りに大きく影響するため、できるだけ低コストのものを選択するとよいでしょう。
■iDeCo(個人型確定拠出年金)
自分で積立額や運用方法を決められる個人型の確定拠出年金制度です。毎月一定額を預金口座から振り替え、投資信託などの金融商品で運用します。
特徴は、税制面で優位性がある点です。毎月の積立額は所得から控除されるため、所得税・住民税の軽減につながります。また、運用期間中の収益は非課税です。受け取り時は課税対象ですが、退職所得控除や公的年金等控除などの優遇措置があります。
もちろん、市場の動向によっては、預貯金や子ども保険よりも高い利回りを期待できますが、投資信託には元本保証がありません。また、確定拠出年金は公的年金を補完する制度と位置付けられているため、60歳以降でないと引き出しできません。60歳以降に子どもの大学進学が訪れる世帯には向いていますが、子どもの年齢によっては大学進学の費用として利用できません。
■メリット・デメリットを理解して、「後悔しない」選択を
以上のように、教育費を貯める方法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。どの方法が最適かは、家庭の状況や目標額などによって異なります。教育費の目安や必要な時期を把握し、自分にあった商品選びが重要です。
特にNISAやiDeCoの場合、運用リスクを伴うため、利用を躊躇なさる親御さんも多いでしょう。「投資はよくわからない」「運用リスクは取りたくない」と、考えることを放棄するのはよくありません。大学進学する時期になって資金が足らず、「あの時、こうしていればよかった」「若いうちに積極的に運用すべきだった」と後悔しないためにも、まずは金融商品や資産運用について理解するところから始めましょう。