コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFP ファイナンシャル・プランナー
- 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
- TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
- 損害保険上級資格
- DCプランナー2級
- キャリアコンサルタント
- 2023.03.09
- 生命保険
保険金受取人が先に亡くなっていたらどうなる?
生命保険の契約をするときには、保険金受取人を指定します。このことから「保険には名前をつけられる」とも言われています。保険会社は、指定された保険金受取人に保険金を支払います。もっと言えば、保険金受取人にしか請求する権利はありません。他の金融商品と違って遺産分割協議をしないといけないとか、相続時に揉めるとか、そのようなことは基本的にはありません(注)。また受取人は複数人の指定もできるため、受取人それぞれの受取割合まで指定できます。
では、被保険者が亡くなって保険金を請求するときに、保険金受取人が先に亡くなっていた場合にはどうなるのでしょうか?すぐに頭をよぎるのは「被保険者の相続人」だと思いますが、保険金を受け取るのは「保険金受取人の相続人」になります。
事例)
【家族構成】
父親・母親(死亡)・長男・長男の妻・長女・二女
【保険契約】
契約者=被保険者(長男)・・・保険金受取人(母親)被保険者より先に死亡していた
事例の家族構成で、被保険者である長男が亡くなった場合、保険金を受け取れるのは、「保険金受取人(母親)の相続人」となります。したがって父親・長女・二女になります。「被保険者の相続人」である長男の配偶者は保険金を受け取れません。独身時代に加入した保険の受取人を母親にしたまま、結婚後に保険金受取人を母親から配偶者に変更するのを忘れていた場合に、このようなことになってしまいます。結婚したら独身時代に加入した保険の受取人の変更を忘れないよう注意が必要です。
保険金受取人が死亡している場合は、保険法第46条においてその死亡した受取人の相続人の全員が受取人になると規定されています。また、受取割合は民法に定める相続分ではなく均等割合になります(民法427条)。したがって、先ほどの事例では、父親・長女・次女の3人は、保険金を均等割合で受け取ることになります。ただし、この保険法第46条は任意規定であるため、保険約款等でこれとは違う取り決めをすることも可能です。保険会社や共済団体によって取り決めが違う場合があります。
受取人が生存していれば、請求した保険金はスムーズに支払われます。しかし「受取人の相続人」が保険金を請求する場合、戸籍謄本に加え法定相続人全員の印鑑証明書が必要になるなど、保険金を受け取るまでに時間がかかってしまいます。また、家系が複雑になっているケース等では、思いもよらない人に保険金が渡ってしまう可能性もあります。
生命保険金は原則、遺産分割協議書の対象となりません(注)。確実に保険契約上の受取人に保険金が支払われます。保険金の受取人指定は、被保険者の生前における意思表示です。保険金を残したい人に残せるのは、受取人を指定できない他の金融商品等とは大きく違うところです。また生命保険金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をしても受け取れます。
したがって、保険金受取人が亡くなった場合には、受取人の変更手続きを忘れないように留意してください。保険金受取人の変更は、被保険者の同意さえあれば、保険契約者がいつでも簡単に手続きできます。その際に現在の受取人の同意は必要ありません。被保険者の意思を保険契約に随時反映させておくことはとても重要ですので、家族構成に変化があった場合や結婚・離婚・再婚を含むライフイベントの変化時においては、保険金の受取人についても見直しや変更等が必要かどうかを必ずチェックし、渡したい人に保険金を渡せるよう手続きを忘れないでください。
(注:相続人の間で著しい不公平がある場合、遺産分割協議の対象となることがあります)