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コラムColumn

  • 2022.05.05
  • 生命保険
  • 黒田 尚子

2022年4月からの「先進医療」の見直しと粒子線治療


最近の医療保険やがん保険において、ほぼ“標準装備”となった「先進医療特約」ですが、2022年4月から、この特約に関係する先進医療の見直しが行われたのをご存じでしょうか?

それは、陽子線や重粒子線など粒子線治療のうち、保険適用となる対象が拡大されたことです。粒子線治療といえば、がんの三大治療の一つである放射線治療の一種。一般的な放射線治療で使用されるX線やγ線などの光子線は、照射範囲が広く、がん以外の正常な細胞にも影響を及ぼします。

それに対して、粒子線治療は、ピンポイントでがん細胞を狙い撃ちでき、照射回数が少ないため身体への負担が軽減できるというメリットがあります。その一方で、保険適用ではないため、先進医療で受けたとしても、治療費が約300万円と高額である点が最大のデメリットでした。

しかし、既契約の民間保険に先進医療特約を付帯していれば、自己負担となる技術料部分が全額保障されます。その上、商品によっては、交通費や宿泊費の補てん分として10~20万円等のお見舞金が受け取れるものもあり、粒子線治療を受けたいとお考えの患者さんにとっては非常にありがたい保障です。

ただし、そもそも先進医療というのは、将来的に保険給付の対象とするべきか、安全性や有効性を検証し、評価を行うといった位置づけの医療です。つまり、いずれ保険収載(保険適用)されるか、先進医療から外れるかという運命にあり、ずっと先進医療にとどまっていられるわけではありません(とはいえ、粒子線治療が先進医療に仲間入りして20年ほど経っているのですが…)。

ですから、粒子線治療においても、先進医療を“卒業”し、次のように、すでに一部が保険適用になったものもあります。
<2016年5月以降>
・小児がんに対する陽子線治療
・切除非適応の骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療
<2018年4月以降>
・頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)に対する重粒子線・陽子線治療
・限局性及び局所進行性前立腺がん(転移を有するものを除く)に対する重粒子線・陽子線治療
・切除非適応の限局性骨軟部腫瘍に対する陽子線治療

そして、2022年4月以降、次の5つのがんが粒子線治療の対象となりました。
・大型(4㎝以上)の肝細胞がんに対する重粒子線・陽子線治療
・肝内胆管がんに対する重粒子線・陽子線治療
・局所進行膵がんに対する重粒子線・陽子線治療
・大腸がん術後局所再発に対する重粒子線・陽子線治療
・局所進行子宮頸部腺がんに対する陽子線治療
※いずれも、切除不能のものに限る

膵がんは、死亡数で男性4位、女性3位、大腸がんは、男女合わせて死亡数で2位、罹患数1位にランクインしています(※1)。手術で切除できない、あるいは進行・再発して治療法がない患者さんにとっては、治療の選択肢が広がったことになります。

ちなみに、保険適用された場合、医療費はいくらになるのでしょうか?
QST病院(旧放射線医学総合研究所病院)のHPによると、前立腺がんの場合160万円、頭頚部と骨軟部がんの場合237.5万円となっています。ここから一定の自己負担割合(1~3割)に応じた額を窓口で支払い、さらに高額療養費の対象になれば、実際の負担額はかなり抑えられます。例えば、69歳以下の一般的な所得(年収370~770万円)の人は、約9万円です。しかし、先進医療特約を付帯している方にとっては、「2022年3月までに治療を受けていれば、全額、保険からお金が出たのに」とがっかりされるかもしれません。

いずれにせよ、がん治療の考え方は、これまで通り変わりません。まずは、保険適用で受けられる標準治療を優先的に検討し、先進医療への過度な期待は禁物です。そして、がん医療の進歩に伴い、先進医療の対象となる医療技術も常に変化しています。しっかり理解しておくことが大切です。

※1 国立がん研究センター「最新がん統計」(2022年4月18日確認)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html?msclkid=8c90cec3befa11ec8698b917de5e59b4

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