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執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級FP技能士
- 1級DCプランナー
- 住宅ローンアドバイザー
- 確定拠出年金教育協会 研究員
- アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師
- 2022.04.28
- 投資
インフレと円安への備えは万全ですか?
資産運用は、お金を増やすためだけではなく、お金を守るためにも、誰もが実践しておくべきものです。というのも、預貯金だけでは財産を守り切れないからです。いままさに、そんな事態が起きていると言っても過言ではありません。その事態とは、インフレと円安です。
▼オイルショック並みのインフレが来ている!?
インフレとは、インフレーションの略で、物価上昇を意味します。前回の記事「長期金利の上昇と個人向け国債(変動10年)に注目」でも触れましたが、ここに来てさらに物価が上がってきているようです。
企業物価指数(前年比)のここ1年ほどの動きを見ると、以下のとおり。
2021年 2月 -0.6%
3月 +1.2%
4月 +3.7%
5月 +4.9%
6月 +5.2%
7月 +5.8%
8月 +5.9%
9月 +6.5%
10月 +8.4%
11月 +9.2%
12月 +8.9%
2022年 1月 +9.2%
2月 +9.7%
3月 +9.5%(速報値)
昨年の後半から上昇率が高まっていき、今年2月に記録した前年比+9.7%は、1980年12月(+10.4%)以来の約41年ぶりの高い水準。1980年当時は、第二次オイルショックの影響で物価が急激に上昇していたころです。今回の物価上昇は、当時に近いレベルなわけです。
一方、消費者物価指数(総合指数、前年同月比)を見ると、以下のとおり。
2021年 2月 -0.5%
3月 -0.4%
4月 -1.1%
5月 -0.8%
6月 -0.5%
7月 -0.3%
8月 -0.4%
9月 +0.2%
10月 +0.1%
11月 +0.6%
12月 +0.8%
2022年 1月 +0.5%
2月 +0.9%
3月 +1.2%
企業物価ほどの上昇ではありませんが、昨年後半あたりから上昇ピッチが上がってきています。もともと消費者物価は、企業物価の動きに遅れて反応する傾向がありますので、本格的な上昇はこれからなのかもしれません。
モノの値段が上がるということは、お金の価値は下がるということ。物価上昇率以上の金利で利息がつかないと、預貯金も実質的に目減りしていくわけです。預貯金金利の上昇がなかなか期待できない状況からすると、インフレに備えるためには預貯金以外の資産を持っておく必要があります。
昔から、インフレに備えるための資産としては、株式や不動産、金などが有効だといわれてきました。時代が変わったとはいえ、基本的な部分はそれほど大きくは変わっていないと思います。モノの値段が上がるのであれば、価値の下がる「お金」ではなく、「モノ」で持っておくべきです。その「モノ」に近いものが、株式や不動産、金などだといえるわけです。
あらためて、インフレに備えるためにも、「国内株式」、「国内不動産」、「金などのコモディティ」の指標に連動するETFや投資信託を少しずつでも買っておいたほうが、財産の価値を守れると思います。
▼ここ1年で2割以上も円安に?
それから、もう一つ気にすべきだと思うのが円安。
ここ1年ちょっとのドル円の為替レート(各月末時点)を見ると、かなり円安が進んできていることがわかります。
2021年
1月 104.55円
2月 106.09円
3月 110.74円
4月 108.89円
5月 109.72円
6月 110.55円
7月 109.53円
8月 109.82円
9月 111.88円
10月 113.61円
11月 113.19円
12月 115.12円
2022年
1月 115.43円
2月 115.50円
3月 121.64円
2022年4月に入ってからは、さらに円安傾向が強まり、米ドルは1ドル=129円台、ユーロは1ユーロ=140円台をつけるまで円安が進みました。まだこの流れは止まっていないのかもしれません。
先行きを正確に予測することは困難ですが、確実にいえることは、円安が進むと、円で保有している資産価値が相対的に目減りするということです。それが輸入物価の上昇につながり、結果として国内物価の上昇につながる可能性もあります。
昔から、適度な円安は、輸出産業にとってプラスになるので、日本経済全体にとってもプラスになるといわれることがありましたが、シンプルに考えれば、円安は円の価値の目減りです。将来のために円でお金や資産を貯めている私たちにとっては、円の価値の目減りは歓迎できません。やはり、中長期的な円安の可能性には備えておく必要があります。
具体的な対策としては、外国の資産の保有です。外国株式、外国債券、外国不動産など、円以外の通貨への分散効果が期待できるもので保有すべきでしょう。先進国だけでなく、新興国も含めて、さまざまな国や地域に分散投資をしているETFや投資信託であれば、間接的に世界中の通貨を保有することになります。それだけ今後の円安に備えられていると言えるでしょう。
▼地震への備えと一緒?
インフレや円安といわれても、なんとなく緊急性を感じられないから何もしないという人が多いのかもしれません。しかし、大地震と同じように、起きてしまってからでは遅いのです。「備えあれば憂いなし」です。少しずつでも、本当の意味での守る資産運用を実践しておきましょう。