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執筆者プロフィール
- AFP ファイナンシャル・プランナー
- 生活経済研究所長野 事務局長
- 2021.08.19
- 生命保険
亡くなった親の保険契約を見つける方法
もし皆さんが、「亡くなった父は生前、生命保険に加入していたはずだが、証券が見当たらず加入先が分からない。請求もできない」という問題に直面したらどうしますか。2021年7月1日から始まった新しい制度「生命保険契約照会制度」が、この問題を解決してくれるかもしれません。
■生命保険契約照会制度の概要
生命保険の契約者・被保険者が、(1)亡くなった、(2)認知判断能力が低下した、(3)災害で家屋を失い請求が困難になった場合に、本人に代わって法定相続人、法定代理人、3親等内の親族などが契約の有無について、一般社団法人生命保険協会(以下、生命保険協会という)に対し一括照会できる制度です。
これまでは、生命保険を契約した可能性のある保険会社1社1社に問い合わせなければなりませんでしたが、この制度を利用すれば、生命保険協会に問い合わせるだけで済みます。生命保険協会が、契約の有無を一括して生命保険各社に調査依頼し、生命保険各社の調査結果をとりまとめて照会者に回答してくれます。生命保険協会に所属している保険会社は42社(2021年8月現在)ですから、その1社1社への問合せを省けるだけでも時間と労力の軽減は明らかでしょう。
■照会の申請方法と費用
照会の申請は、インターネット(または郵送)で行い、調査結果もインターネットで確認できます。生命保険協会からの回答は契約の有無に限られるため、保険金等の請求は別途手続きが必要です。
また、認知判断能力の低下を理由に照会を行う場合は、公的書類や医師による所定の診断書等が求められる場合があります。
費用は、1回の照会につき3,000円(税込)で、支払いはクレジットカードやコンビニ払いにも対応しています。
災害救助法が適用された地域等で被災を理由に照会を行う場合は、電話による申請が可能で利用料もかかりません。
■災害地域生保契約照会制度
似たような制度として「災害地域生保契約照会制度」を思い浮かべた人もいるでしょう。こちらは、2011年3月の東日本大震災を受けて、翌4月1日から生命保険協会によって始められた制度です。契約者や被保険者が被災したことにより、生命保険の契約に関する手掛かりを失い、生命保険会社への保険金請求が困難になったご家族、ご遺族のために作られました。
2021年7月以降は、利用者の利便性を考慮して、新たにスタートした「生命保険契約照会制度」に一本化して継続されています。
■損害保険の契約は探せないのか
一般社団法人日本損害保険協会(以下、日本損害保険協会という)が「自然災害等損保契約照会制度」を実施しています。これは、災害時に限定した契約有無の照会制度で、契約者・被保険者の死亡や認知判断能力が低下した場合は対象としていません。
具体的には、災害救助法が適用された地域または金融庁国民保護計画に基づく対応要請があった地域で、家屋等の流失・焼失等により損害保険会社との保険契約に関する手掛かりを失った人に対する契約照会に応じるもので、2014年7月1日にスタートしています。
日本損害保険協会の会員となっている損害保険会社は29社(2021年8月現在)ですが、日本の損害保険営業免許を有する外国保険業者は、一般社団法人外国損害保険協会(以下、外国損害保険協会という)の会員になっています。正会員は18社、准会員2社で(2021年8月現在)、こちらも日本損害保険協会と同様に「自然災害等損保契約照会制度」を実施しています。
生命保険協会の「生命保険契約照会制度」が、照会申請に対する回答を生命保険協会が行うのに対して、日本損害保険協会と外国損害保険協会の「自然災害等損保契約照会制度」では、原則、契約が見つかった損害保険会社から回答が届きます。
最近では、保険証券ペーパーレス割引を伴う証券不発行サービスや、インターネットを通じた保険契約に対するインターネット割引も浸透しています。保険契約手続きの煩雑さから解放される一方で、元々証券が発行されていない保険契約の管理となれば、より慎重さが求められるはずです。
少子高齢化や家族構成の多様化が進む中で、「生命保険契約照会制度」が始まった背景には、いずれも期限が定められている保険金請求や相続手続きに苦慮する世帯が増えている現実があるのかもしれません。新しい制度の活用ばかりではなく、そもそもの管理にも見直す点がないかどうかを考えてみるべきでしょう。