コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級ファイナンシャルプランニング技能士
- 消費生活専門相談員資格
- CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
- 2019.07.04
- 年金
2019年4月から「ねんきん定期便」が変更に
金融庁の報告書を巡り、年金2,000万円問題がホットな話題としてメディアを連日賑わせています。FPであれば、「老後資金がどれくらい不足するのか」については、これまでも目安の金額を試算するなど常にやってきたことなので、何を今更といった感がありますよね。
ただ、そのおかげ(?)で、巷のライフプランセミナーは大盛況。どれもお客さんが殺到しているそうです。
政治家の方々が、「あれはあくまでも平均額だから正しくない」、「誤りである」的な発言に終始している姿も如何なものかと思いますが、そうであれば個々人が、老後の収入の柱となる公的年金をどれくらい受給できるのか知るために、改めて「ねんきん定期便」の活用を提案したいと考えています。
ご存知の通り、ねんきん定期便とは、国民年金や厚生年金保険の加入者に対して、毎年、誕生月に日本年金機構から送付される書面のこと。
2009年4月から、過去の保険料納付実績と将来の年金見込み額に関する情報を加入者に伝えるツールとして、年金受給者となるまで送付されることになっています。
そのデザインが、今年4月発送分から変更になりました。
おもな変更点は、(1)文字数を減らして文字サイズが大きくなり、(2)保険料納付による年金額の増加が表記され、(3)節目年齢(35・45・59歳)の方に受給開始に関するリーフレットが同封された、の3点です。
このうち、とくに注目なのが(2)でしょう。保険料納付による年金額の増加に併せ、受給を遅らせると年金額が増えることもイメージ図で目立つ位置に説明されています。
いわゆる「繰り下げ受給」をオススメする情報が追加されたわけですね。
冒頭の報道もあって、おそらく今年送られてきたねんきん定期便は、多くの方がチェックするのではないかと予想しますが、10年前から送付されているにもかかわらず、ねんきん定期便については、まだまだ理解が十分でないような印象が否めません。
実際、筆者のところにご相談に来る方には、できるだけご本人と配偶者のねんきん定期便をご持参いただき、まずはその見方からご説明しています。
その際にも、「そうだったんですか。知りませんでした」「今までちゃんと見たことありませんでした」という方がほとんどです。
説明する上でポイントは2つあります。
まず一つ目として、ねんきん定期便には年齢によって2つの種類があること。
ねんきん定期便は、50歳未満と50歳以上で記載されている内容が変わります。50歳未満の方は、その時点まで払った額で計算した年金額。50歳以上は、このままのペースで60歳まで払い続けた場合の年金額。つまり、50歳未満は将来の見込み額は含んでおらず、50歳以上は実際もらえる額に近くなります。
そのため、50歳未満の方は保険料を納めた期間が短ければ年金額は少なくなり、50歳以上の方も「今の年収に対して少ないのでは?」と感じる方が多いようです。
でも、若い頃は年収が低かったわけですから、その分も加味すると、今のお給料に対して、年金額が半分くらいであってもおかしくはありません。
そして二つ目として、ねんきん定期便には、記載されていない給付もあるということ。
例えば、年下の妻がいると、その妻が65歳になるまで、夫の老齢厚生年金に付く「加給年金」という加算がつきます。これが約39万円ですが、これは載っていません。
また、加給年金に続いて、65歳になった配偶者に支給される「振替加算」も然りです。金額は、年齢によって異なりますが、現在50代後半の人は年額約1万5,000円程度です。ただし、これが付くのは1966年4月1日生まれまで。それ以降はありません。
このほかに企業年金や国民年金基金なども記載されていませんので、それもお伝えする必要があるでしょう。
いずれにせよ、老後も夫婦仲良く暮らしていくのであれば、自分のねんきん定期便だけでなく、配偶者の分も持参して、年金事務所に確認すれば、より正確な世帯の年金額が分かるはずです。
さらに、加入者が年金額の目安を知る方法としては日本年金機構の「ねんきんネット」の活用をオススメします。
こちらはいつでもチェックできますし、さまざまな条件で年金額を試算する機能を使えば、今後の働き方や受給開始年齢によって、どれくらい年金額が変わってくるかを確認できます。