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執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級FP技能士
- 1級DCプランナー
- 住宅ローンアドバイザー
- 確定拠出年金教育協会 研究員
- アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師
- 2021.03.04
- ライフプラン
老後資金の目標金額を設定してみましょう!
唐突ですが、老後はどんな生活がしたいですか?
何事も、具体的な目標を設定すると、その目標の達成のためにはどうすればいいのかを考えるようになります。皆さんには、老後に向けた具体的なイメージはあるでしょうか?
あまり具体的にはイメージできていないという人は、これを機会に、夢物語でもいいので具体的にイメージし、そのために必要な老後資金の金額を明らかにしてみるとよいでしょう。
一般的な老後生活に必要な金額というと、公益財団法人生命保険文化センターが3年ごとに調査している「生活保障に関する調査」が有名です。令和元年12月発行の調査結果を見ると、老後の「最低日常生活費」は、平均で月額22.1万円だったようです。
厚生労働省が1月22日に公表した令和3年度の老齢厚生年金受給者の平均的な年金額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は220,496円でしたので、夫が平均的な収入の会社員だった夫婦にとっては、公的年金でなんとか最低日常生活費はまかなえる状況であることが想像できます。
しかし、ここで少し注意が必要なのが、この計算は、あくまでも平均的な金額で見たものだという点です。最低日常生活費の平均月額22.1万円というのも、調査結果を少し細かく見ると、回答した金額と回答者の割合は以下のとおりでした。
15万円未満 5.9%
15~20万円未満 13.0%
20~25万円未満 29.4%
25~30万円未満 13.1%
30~40万円未満 17.0%
40万円以上 1.9%
わからない 19.6%
最低日常生活費は20万円未満で大丈夫だと思っている人が2割近くいる一方で、30万円以上必要だと考えている人も2割近くいます。やはり、生活費は人によって大きく違うことがわかります。
同じ調査で、「ゆとりある老後生活費」の数値も公表されていますが、令和元年度の平均は月額36.1万円となっています。ただし、これも調査結果を細かく見ると、以下のとおりです。
20万円未満 2.8%
20~25万円未満 7.3%
25~30万円未満 10.6%
30~35万円未満 20.8%
35~40万円未満 9.5%
40~45万円未満 10.8%
45~50万円未満 2.9%
50万円以上 15.6%
わからない 19.6%
ゆとりのある老後生活費(=最低日常生活費+老後のゆとりのための上乗せ額)になると、金額のブレがさらに大きくなっているように感じられます。全体の2割が30万円未満と回答している一方で、2割近くが45万円以上と回答しているのです。
繰り返しますが、人によって生活費はかなり違います。平均額はあくまでも平均として参考程度にとどめるべきです。やはり重要なのは、自分の現在の生活費をもとに、将来の最低日常生活費を予想したり、老後はこんな暮らしがしたいという夢や希望をもとに、老後のゆとりのための上乗せ額を予想したりすることでしょう。
では、老後のゆとりのための上乗せ額を予想する際の考え方をまとめておきます。
まず、平均的な厚生年金加入者であれば、最低日常生活費の大部分は公的年金でまかなえる可能性は高いでしょう。ということは、最低限の生活費以外にかかる費用を見積もります。
旅行やレジャー、趣味などにどの程度お金をかけたいと思うかどうか。
例えば、毎年、金額ベースで50万円程度は旅行にお金をかけたいと思うなら、65歳から85歳までの20年間で合計1,000万円が必要になります。毎年100万円なら合計2,000万円です。
趣味やスポーツ、サークル活動などで毎月会費を支払う、もしくは、定期的に参加費や入場料を支払うものを利用するとして、その利用料が月額2~5万円かかるとすると、これも20年間で480~1,200万円かかります。
ここでは、問題なく外に出かけられる健康寿命を考慮して20年としましたが、在宅でも可能な趣味(読書やネットでの映画鑑賞など)の費用は30年程度で見積もっておいてもよいでしょう。
これらのほかにも、子どもや孫に対するお祝いやプレゼントも考慮すべきでしょう。誕生、進学、就職など、孫が多いほど、喜びの回数が増える一方で、出費も増えます。
当然ながら、自分または自分たち夫婦の医療や介護への備えもあらためて考慮しましょう。公的医療保険や公的介護保険がありますので、高額な費用負担が必要になる可能性は低いのですが、それでも数年間、要介護状態になった場合を想定すると、最低でも数百万円は万一の際のお金として置いてあると安心でしょう。
そのほか、自宅のリフォーム費用なども必要かもしれません。リタイアまでに住宅ローンの返済が終わっていなければ、一括返済用の資金も必要でしょう。
人によっては、まだまだ考えるべき費用があるかもしれません。結婚されている方は、これを機会にご夫婦で話し合ってみてください。老後は、どこで、どんな暮らしがしたいのか、どんなことにお金がかかるのか、どんなことにお金をかけたいのか。
そして、それらの金額の総合計を求めます。少ない人でも1,000~2,000万円、多い人は5,000万円を超える金額になるのではないでしょうか。まずは目標を明確にすることが重要なので、その金額を見て、「無理だ」とか「厳しいな」などとは思わないようにしましょう。リタイアまでに10年以上や20年以上の時間がある人なら、可能性は十分にありますので。
あとは、退職金や企業年金(DBやDC)などで、どの程度カバーできそうなのかを計算し、自分または自分たち夫婦でリタイアまでに準備しなければいけない目標金額を求めます。そして、その目標金額を65歳あたりまでに達成するための積立金額や運用方針を考えていくのです。
資産運用については、まずは無難な運用方法としてよく言われる「長期投資、継続投資、分散投資」を心がければよいでしょう。実際に、過去20年、4つの資産(国内債券、国内株式、外国債券、外国株式)に均等に分散して毎月積み立てただけでも、年4~5%の複利運用に相当する運用利回りが得られています(4つの資産の代表的なベンチマークで計算。2001年~2020年の20年間)。
今後20年も同じようになるかどうかはわかりませんが、失われた20年とか30年と言われてきた昨今でもそのような運用利回りになっているわけですから、やはり無難な運用方法なのではないかと思います。
目標金額と期待できる利回りから逆算して毎月の積立金額を決めるのもひとつの方法です。まだ若い世代であれば、仮に目標金額を6,000万円としても、利回り5%で40年間積立運用できるなら、毎月の積立額は3.9万円ですみます。ほぼゼロ金利である預貯金で積み立てると、毎月の積立額は12.5万円も必要になりますので、運用利回りを高める効果が非常に大きいことがわかるでしょう。
あらためて自分なりのハッピーリタイアメントを想像しながら、資産形成を考えていくようにしましょう。