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執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級FP技能士
- 1級DCプランナー
- 住宅ローンアドバイザー
- 確定拠出年金教育協会 研究員
- アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師
- 2020.02.27
- ライフプラン
いま預貯金はジリジリと目減りしている!?
ここのところ、預貯金が実質的な目減りを続けていることはご存知でしょうか?
もちろん、預貯金のような元本保証の商品は、見た目にお金が減っていくことはありません。見た目には減っていませんが、物価の変動を考えると預貯金の実質的な価値は目減りしているとも言えるのです。
2020年1月24日に公表された2019年の年平均の消費者物価指数の変化は、総合指数で前年比0.5%の上昇でした。ちなみに、価格変動の大きな生鮮食品を除いた総合指数では前年比0.6%の上昇、生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数も前年比0.6%の上昇でした。
つまり、簡単に言えば、2019年は1年間でモノの値段が平均して0.5%程度上昇したわけです。一方で預貯金金利はというと、多くの銀行等の1年満期の定期預金の適用金利は、年率0.01%が主流です。ネット銀行の一部で年率0.2%の金利を提示しているところもありますが、それでも物価上昇率よりも低い水準です。
物価上昇率よりも預貯金金利が低いということは、預貯金に置いてあるお金が実質的に目減りしていることを意味しています。
例えば、物価上昇率が年1%で、預貯金金利が年0.1%だったとすると、
100万円で売られていたモノは、1年間で1万円値上がりして101万円になります。
一方、100万円の預貯金は、1年間で0.1%増えて、100万1,000円になります。
1年前、100万円で売られていたモノは、100万円のお金で買えたわけですが、1年間お金を預けてから買いに行くと、1年後の預貯金100万1,000円では101万円に値上がりしたモノは買えなくなってしまっているわけです。つまり、見た目のお金が減っているわけではありませんが、実質的には減っているのと同じことになっているのです。これがいわゆるインフレリスクです。(インフレ=インフレーションの略、物価上昇のこと)
実は近年、このインフレリスクを多少なりとも気にしたほうがいいと思えるような状況が続いています。過去10年間の消費者物価指数(総合指数)の前年比上昇率の推移は以下のとおりです。
2010年 -0.7%
2011年 -0.3%
2012年 +0.0%
2013年 +0.4%
2014年 +2.7%
2015年 +0.8%
2016年 -0.1%
2017年 +0.5%
2018年 +1.0%
2019年 +0.5%
2013年以降は、2016年を除いて物価上昇率が預貯金金利を上回っている状態が続いています。ちなみに、2014年の物価上昇率が3%近くになっているのは、2014年4月1日に消費税が5%から8%に引き上げられたことが要因として考えられます。
近年このような状況が続いている大きな理由のひとつには、2013年1月に日本銀行が年2%のインフレターゲット(物価上昇の目標)を設定したことが挙げられます。
一般に、日本銀行などの各国の中央銀行は、その信用度をもとにお札などを発行しています。物価上昇によってお金の価値が下がるのは、中央銀行の信用度が下がるのと同じなので、各国の中央銀行は、インフレファイター(物価上昇と戦う機関)とも呼ばれるのです。
そんなインフレファイターである日銀がインフレターゲットを設定したというのは、世界的な流れとはいえ、従来では考えられなかった異常な状態と言えます。日本経済の悪循環を断ち切るために本腰を入れたと言ってもよいでしょう。しかし現実は、設定後7年が経過しても、なかなか年2%の目標が達成できない状態が続いているのです。
今後の物価動向を正確に予測することは困難ですが、日銀がインフレターゲットの修正をしない限り、物価上昇を目指した金融政策が打ち出されるわけですから、多少なりとも物価が上がっていく状況が続くのではないかと思われます。つまり、預貯金の実質的な目減りは今後も続く可能性が高いということです。
昭和の時代のお金持ちの多くは、「お金を持っていたら、預貯金だけでなく、株式や不動産にも分散しておくべきだ」とする「財産3分法」を実践していたと聞いたことがありますが、令和の時代においても、保有財産の実質的価値や相対的価値を守るための資産の分散は、誰もが考えておくべきかもしれません。株式や不動産なら必ず物価上昇に勝てると断定することはできませんが、種類の異なる幅広い資産に分散しておいたほうが無難であることは間違いないと思います。