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意外と奥深い!?現価係数表の世界(その1)


縦軸に期間(年数)を、横軸に利回りをとる「現価係数表」や「年金現価係数表」は、ファイナンシャル・プランナー(FP)試験を筆頭とした各種金融資格ではお馴染みの存在です。一見すると無味乾燥な数字の羅列に過ぎませんが、じつは意外と奥深いものなのです。

■ 時は金なり
時は金なり(Time is money.)ということわざがあります。一般的には、「時間はお金と同様に貴重なものだから、決して無駄にしてはいけない」という意味で用いられます。しかし、金融の世界では、「時間は利息を生む」ので、「今日のお金は明日のお金よりも価値がある」という意味で広く用いられています。この考え方に基づくと、利回りが年2%(複利)の環境下では、今日の10,000円は1年後には10,200円(=10,000×1.02)、2年後には10,404円(=10,000×1.02×1.02)となり、これを「将来価値(終価)」と称しています。将来価値はいわば貯蓄と同じ発想で説明ができるため、違和感を覚える方はあまりいないでしょう。

■ なぜいちいち現在価値に置き換えるのか
ところが、「現在価値(現価)」を説明しようとすると、貯蓄とは逆の捉え方が必要となるため、違和感を覚える方が少なくありません。利回りが年2%(複利)の環境下では、1年後の10,000円の現在価値は約9,804円(=10,000÷1.02)、2年後の10,000円の現在価値は約9,612円(=10,000÷1.02÷1.02)ですが、出てくる数字の切りの悪さと相まって、筆者も最初はなかなか理解できませんでした。最終的には、「終価は掛け算で求めるのだから、現価は割り算で求めればよい」と割り切って、「現在の約9,612円を年2%で複利運用すると、2年後には約10,000円になる」と強引に理解したものです。
それにしても、2年後に10,000円が必要ならば、つべこべ言わずに今の時点で10,000円を準備する方が話は早いのに、なぜいちいち現在価値に置き換えて中途半端な金額を算出しなければならないのでしょうか?

■ 金利の有難さを教えてくれる「現価係数表」
そんな素朴な疑問に答えてくれるのが、「現価係数表」です。

<現価係数表>
   1%  2%  3%  4%  5%
1年 0.9909 0.9804 0.9708 0.9615 0.9523
2年 0.9803 0.9612 0.9425 0.9246 0.9070
3年 0.9705 0.9423 0.9151 0.8890 0.8638
4年 0.9609 0.9238 0.8885 0.8548 0.8227
5年 0.9514 0.9057 0.8626 0.8219 0.7835

例えば、金利が年5%(複利)の環境下では、5年後の10,000円の現在価値は、現価係数表の0.7835を用いると約7,835円(=10,000×0.7835)になります。これに対し、「金利が存在しない世界」すなわち年0%の環境下では、5年後の10,000円の現在価値は10,000円のままです。考え方はこちらの方がシンプルですが、先ほどの年5%の場合と比べると2,165円も余計に準備しておく必要があります。
このように、金利を考慮するかしないかによって、現時点で準備しておくべき金額(現価)の水準はかくも異なります。今回は1万円で比較しましたが、扱う金額が億円あるいは兆円単位になってくると、この差が無視できないほど大きなものとなります。

■ 現価係数表に「0年」「0%」を挿入してみよう
しかし、FP試験のテキストなどに掲載されている現価係数表は、無味乾燥な数字が並んでいるだけで、とても長時間鑑賞する気にはなりません。そこで、現価係数表を「生きた情報」として捉えるために筆者がオススメするのが、現価係数表の一番上の行に「運用期間:0年」を、一番左の列に「利回り:0%」をそれぞれ挿入することです。

<現価係数表(修正後)>
   0%  1%  2%  3%  4%  5%
0年 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000
1年 1.0000 0.9909 0.9804 0.9708 0.9615 0.9523
2年 1.0000 0.9803 0.9612 0.9425 0.9246 0.9070
3年 1.0000 0.9705 0.9423 0.9151 0.8890 0.8638
4年 1.0000 0.9609 0.9238 0.8885 0.8548 0.8227
5年 1.0000 0.9514 0.9057 0.8626 0.8219 0.7835

上の現価係数表は、一番上の行「運用期間:0年」の欄に「1.0000」を、一番左の列「利回り:0%」の欄に「1.0000」を挿入したものです。これにより、表を上から下に眺めると「運用期間が長くなるほど現価が小さくなる」ことが、表を左から右に眺めると「利回りが高くなるほど現価が小さくなる」ことが、直感的に把握できるようになります。また、利回りが0%、すなわち金利が存在しない世界では、運用期間をいくら長くみても現価は1.0000のまま不変であることも確認できます。

このように、現価係数表は、単なる数字の羅列ではなく、「複利の効果」を活用することで、少ない元手でも資金準備が可能であることを私達に教えてくれる、じつに奥深いものなのです。
次回は、「年金現価係数表」の奥深さについて解説します(続く)。

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