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高校授業料の実質無償化で家計はどう変わる


2026年3月31日、高等学校等就学支援金制度を見直す法案が成立しました。今回の改正により、いわゆる「高校授業料の実質無償化」は新たな段階に入り、2026年度からは所得制限の撤廃を含む制度拡充が始まります。これにより、これまで対象外だった世帯も含め、授業料支援を受けられる家庭が広がる見込みです。

■なぜ制度が見直されたのか
背景にあるのは、教育費負担の重さです。高校教育は義務教育ではありませんが、実際には多くの子どもが進学しており、家計にとっては進路選択の前提となる支出です。特に私立高校では授業料負担が重く、進学先の選択が家計事情に左右されやすいという課題がありました。こうした状況を受け、国は家庭の経済状況にかかわらず教育機会を確保する観点から、就学支援金制度の拡充を進めることになりました。

■具体的に何が変わるのか
今回の改正で最も大きいのは、高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃されることです。令和8年度からは、公立高校では年11万8,800円、私立高校では全国平均授業料を踏まえた年45万7,200円を上限として支援が行われます。従来は世帯年収の目安に応じて支援額に差がありましたが、今後は高所得世帯を含めて、より幅広い家庭が授業料支援を受けやすくなります。あわせて、授業料以外の教育費負担を支える高校生等奨学給付金も低中所得層向けに拡充されます。

■自治体独自の助成も確認したい
今回の改正を考えるうえで見落としやすいのが、自治体独自の上乗せ助成です。たとえば東京都では、国の就学支援金とは別に、都独自の授業料軽減助成金があります。令和8年度は、国の就学支援金上限45万7,200円に、東京都の授業料軽減助成金上限4万3,800円が上乗せされ、合計で最大50万1,000円まで助成される予定です。つまり、国の制度拡充によって都の助成が自動的になくなるわけではなく、都内私立高校の授業料水準に応じて、都が不足分を補う仕組みが続くとみられます。

そのため、東京都など独自制度のある地域では、「国の制度だけを見て判断しない」ことが大切です。実際に最大額まで受給するには、国の就学支援金と都の授業料軽減助成金の両方に申請する必要があると案内されています。制度が拡充されても、申請漏れがあれば本来受けられる支援を取りこぼすおそれがあります。

■どんな家庭が影響を受けやすいか
影響を受けやすいのは、まず私立高校への進学を費用面からためらっていた家庭です。授業料支援の上限引上げと所得制限の撤廃により、「公立を前提に考えていたが、私立も比較対象に入れられる」という家庭は増えるでしょう。また、これまで世帯年収の条件により、私立高校の授業料について十分な支援を受けられなかった家庭にとっては、今回の見直しによる影響が大きいと考えられます。兄弟姉妹の進学時期が重なる家庭や、その先に大学進学を控えている家庭にとっても、高校時の負担軽減が、その後の教育費準備にゆとりをもたらす可能性があります。

■ライフプランにどう活かすか
今回の改正をライフプランに活かすうえで重要なのは、「授業料が軽くなる分を、次の教育費に振り向ける」という視点です。高校では授業料のほかにも、制服代、教材費、通学費、部活動費、模試代、塾代などがかかります。さらに、その先には大学・専門学校進学の費用も控えています。「授業料負担が軽くなるから安心」で終わらせるのではなく、浮いた分を進学準備資金や予備費として確保することが、家計全体では有効です。

また、進学先の検討では、「授業料が下がるなら私立でも同じ」と早合点しないことも大切です。学校によっては、入学金、施設設備費、積立金など、授業料以外の納付金が大きく異なります。東京都議会の予算資料でも、私立高等学校等の施設費など、授業料以外の学校納付金に対する補助の必要性が示されており、授業料だけでは家計負担を語りきれない実態がうかがえます。学校案内や募集要項では、授業料だけでなく初年度納付金の総額まで確認して比較したいところです。

■利用するうえでの注意点
注意したいのは、「実質無償化」という言葉だけが先行しやすいことです。正確には、今回の改正は「高校にかかる費用全体の無償化」ではなく、「授業料支援の拡充」です。東京都の案内でも、助成額は一定額までの範囲内で、実際に負担した授業料額が上限になるとされています。つまり、授業料以外の費用や、学校ごとの追加負担まで含めて無償になるわけではありません。

今回の改正は、多くの家庭にとって高校進学の選択肢を広げる前向きな見直しです。ただし、本当に家計が楽になるかどうかは、授業料だけでなく、高校3年間とその先の教育費全体を見通して判断する必要があります。制度を「負担が減る話」で終わらせず、「将来に備える余力をつくる機会」として活かせるかどうかが、今後の家計管理のポイントになるでしょう。

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