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制度改正を資産形成にどう活かすか~DC見直しで広がる選択肢~


■2026年は資産形成の制度を見直す好機
資産形成というと、何に投資するかに注目が集まりがちですが、長期で見れば、それと同じくらい大切なのが「どの制度を使うか」です。2026年は、企業型DCやiDeCoといった私的年金制度に大きな見直しが入る予定で、制度の使い方次第で老後資金づくりの効率は大きく変わります。

2026年4月には、企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金が事業主掛金を超えてはならないという制限が撤廃され、12月には企業型DCやiDeCoの拠出限度額が引き上げられ、iDeCoの加入可能年齢も70歳未満まで広がる予定です。

今回の見直しは、企業型DCがある会社員だけの話ではありません。勤務先に企業年金制度がある人はもちろん、企業年金がない会社員にとっても、iDeCoの上限引上げは大きな意味があります。制度改正をきっかけに、「自分には関係ない」と思わず、一度立ち止まって確認してみる価値があります。

■4月改正で変わるマッチング拠出
まず注目したいのが、2026年4月のマッチング拠出の見直しです。企業型DCでは、会社が拠出する掛金に加え、加入者自身が掛金を上乗せできる仕組みがあります。これがマッチング拠出です。

現行制度では、加入者掛金は事業主掛金を超えられないため、制度全体に拠出余地が残っていても、会社の掛金が小さい人は自分で十分に上乗せできませんでした。4月からはこの制限が撤廃され、勤務先でマッチング拠出が使える場合は、より柔軟に拠出しやすくなります。

■具体例でみる改正の影響
例えば、DCの事業主掛金が月1万円、DB掛金相当額が月1万円だとします。この場合、企業型DCの拠出限度額はDB掛金相当額を含めて月5.5万円ですから、DB掛金相当額1万円を差し引いた月4.5万円が、事業主掛金と従業員掛金を合わせた上限額となります。

しかし、これまでの制度では、加入者掛金は事業主掛金を超えられなかったため、従業員掛金の上限は月1万円にとどまります。つまり、事業主掛金と従業員掛金を合わせて月4.5万円まで拠出できる余地があっても、実際には2万円までしか拠出できず、2.5万円分の上乗せ余地が残ってしまうのです。

2026年4月の改正後は、この「加入者掛金は事業主掛金以下」という制限がなくなるため、月4.5万円まで拠出できるようになり、上乗せ余地を活用しやすくなります。このように、事業主掛金の小さい人ほど、4月改正によって拠出可能額が大きく広がることになるのです。

■12月改正で広がる拠出枠
2026年12月の見直しでは、第2号被保険者の企業型DCの拠出限度額は現行の月5.5万円から月6.2万円(※1)へ引き上げられる予定です。また、iDeCoについても、第2号被保険者の拠出限度額は、勤務先の企業年金の有無等による差異を解消し、企業年金と共通の拠出限度額として月6.2万円(※2)に一本化される予定です。自営業者など第1号被保険者についても、iDeCoと国民年金基金の共通枠が月6.8万円から月7.5万円に引き上げられる方向です。

ここで特に大きな影響があるのは、企業年金がない会社員や公務員など、第2号被保険者の人たちです。これまでは、企業年金のない会社員等がiDeCoで拠出できる額は月2.3万円でしたが、改正後は月6.2万円まで拡大されます。つまり、「勤務先に企業型DCがないから、資産形成で不利」と感じていた人にとっても、iDeCoを通じて自分で積み立てる余地が大きく広がることになります。

※1 企業型DCの拠出限度額は月6.2万円に引き上げ予定。ただし、DB掛金相当額を控除した額が上限。
※2 iDeCoの拠出限度額は、第2号被保険者で月6.2万円に引き上げ予定。ただし、企業年金等との共通枠であり、DB掛金相当額と企業型DCの事業主掛金額を差し引いた残額が上限。

■第3号被保険者にとっても無関係ではない
専業主婦などの第3号被保険者についても、今回の改正は無関係ではありません。現在、第3号被保険者のiDeCoの拠出限度額は月2.3万円ですが、今後、社会保険の適用拡大が進めば、短時間労働者であっても、週20時間以上働く人は企業規模にかかわらず社会保険に加入する方向とされています。いわゆる106万円の壁とされてきた賃金要件も2026年10月に撤廃予定です。これにより、これまで第3号被保険者だった人が、第2号被保険者に変わるケースは今後増えていくと考えられます。

第2号被保険者になれば、厚生年金や健康保険に加入することになり、保険料負担は生じますが、将来の年金の上乗せや、傷病手当金などの保障面でのメリットも広がります。それだけではありません。iDeCoについても、第2号に変わることで拠出限度額が広がる可能性があります。専業主婦だから関係ないのではなく、今後の働き方の変化によって、活用できる制度の幅が広がる可能性があるのです。

■マッチング拠出とiDeCo、どちらを優先するか
では、勤務先でマッチング拠出が使える場合、iDeCoとどちらを優先すべきでしょうか。ここに一律の正解はありませんが、整理はできます。マッチング拠出は勤務先制度の中で完結するため、給与天引きで積み立てやすく、手続きも比較的分かりやすいのが利点です。勤務先の制度内容や商品ラインアップに不満がなく、長く同じ会社で働く見込みがあるなら、まずマッチング拠出を検討しやすいでしょう。

一方、iDeCoは個人で口座を持つため、転職や退職後も自分で管理しながら続けやすい点に強みがあります。特に、勤務先の制度に左右されず、自分で長く積み立てを続けたい人には相性のよい制度です。また、企業年金がない会社員や、今後働き方が変わる可能性がある人にとっては、iDeCoの方が使い勝手のよい場面もあります。

■60代以降も広がる活用の余地
2026年12月の見直しでは、iDeCoの加入可能年齢が70歳まで広がる予定です。これにより、60代後半まで働く人や、退職後に企業型DCの資産をiDeCoに移換して運用・拠出を続けたい人にとっては、活用余地が広がります。

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象であり、一時金で受け取る場合は、加入期間が長くなることで退職所得控除の面でも有利に働く可能性があります。老後資産の積み増しと税制面でのメリットの両方が期待できる点は見逃せません。

■大切なのは「制度を知って、枠を眠らせないこと」
結局のところ、今回の制度改正をどう活かすかは、「自分はどの立場か」を確認するところから始まります。勤務先に企業型DCがあり、マッチング拠出が使えるのか。企業年金がない会社員として、iDeCoの上限拡大をどう活かせるのか。第3号被保険者として今は直接関係が薄く見えても、今後の働き方の変化で制度の位置づけがどう変わるのか。制度は知っているだけでは意味がなく、自分に当てはめて使い方を考えて初めて価値が出るものです。

2026年の改正は、制度を利用している人だけでなく、これまで利用してこなかった人にとっても見直しの好機です。制度を知り、使える枠を眠らせないことで、将来の資産形成に大きな差が生まれます。

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