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高額療養費の見直しで、自己負担が増える人、抑えられる人


高額な医療費がかかったとき、自己負担を一定額に抑えてくれる高額療養費制度が、今後見直される予定です。報道では「負担増」ばかりが強調されがちですが、実際の制度改正は、負担が増える人と、年単位では負担が抑えられる人に分かれる点が特徴です。

■高額療養費制度とは
医療機関の窓口で支払った自己負担額が、1月あたりの限度額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。限度額は年収や年齢に応じて設定されています。

70歳未満の現役世代の場合、所得に応じて5つに区分されています。その中で、年収約370万円から約770万円までという非常に幅の広い層が、同一の区分として扱われている点が課題とされてきました。年収に300万円以上の差があっても、自己負担限度額が同じになるからです。

また、直近12ヶ月の間に3回以上、高額療養費に該当すると「多数回該当」となり、4回目以降の自己負担は大きく軽減されます。一方で、毎月の自己負担が7万~8万円程度と高い状態が続くものの、ぎりぎり高額療養費制度に該当しない人は、負担が積み上がりやすい構造でした。

■見直しは2段階で行われる
今回の制度改正は、一度にすべてが変わるわけではありません。

まず、令和8年8月に、現行の所得区分を前提としたまま、自己負担限度額の水準が引き上げられます。これは、高額療養費の支給額が医療費全体よりも速いペースで増えていることへの対応です。

続いて、令和9年8月以降に、所得区分の細分化が行われます。例えば、現行制度で年収370万~770万円の区分を、370~500万円、500~650万円、650~770万円といった3つの区分に細分化することが想定されています。

今回の見直し案では、所得区分の細分化が大きなポイントとなります。高額療養費制度では、「医療費の多い少ない」よりも、「どの所得区分に該当するか」によって自己負担の上限額が決まる仕組みとなっているためです。とくに、一般の勤労者が該当しやすい年収370万~770万円の区分を細かく分けることで、同じ区分内にあった人の中でも、所得に応じた負担額が反映されるようになります。

■年間上限の導入が意味するもの
今回の見直しでは、新たに「年間上限」が導入されます。これは、月ごとの自己負担が高額療養費の限度額に届かなくても、暦年単位で自己負担が一定額を超えた場合、それ以上は支払わなくてよいという仕組みです。

この年間上限の導入により、これまでの制度では救済されにくかった、「高額療養費にはギリギリ届かないが、長期間にわたって治療を続けている人」の家計負担が抑えられる効果が期待されています。

■年収別に見る自己負担の違い
医療費が月300万円かかった場合、自己負担の上限はどう変わるのでしょうか。ここでは、制度改正の影響が最も分かりやすい、70歳未満で、多数回該当(4回目以降)に該当しないケースを前提に検証しました。

【年収300万円の場合】
現行制度では自己負担の上限は月57,600円です。令和9年の細分化後は、この年収帯の上限が約69,600円とされ、月あたり約12,000円の負担増が想定されます。

【年収500万円の場合】
現行では約107,000円が上限ですが、細分化後は約113,000円となり、月5,000円程度の負担増となります。

【年収800万円の場合】
現行の上限が約192,000円、細分化後は約203,000円となり、月1万円強の負担増が見込まれます。

ただし、年間上限の導入により、長期療養者の場合には、年単位では現行制度より自己負担が軽くなるケースもあるでしょう。限度額が引き上げられるからといって、必ず負担が増えるとは限らない点は理解しておく必要があります。

■経済的備えと、医療費を抑えるための視点
制度改正を受けて、民間の医療保険や共済での備えを検討する人もいるでしょう。こうした医療保障は、病気やけがが起きた後に生じる経済的負担を補う手段として、一定の役割を果たします。

一方で、生活習慣の改善や定期的な健康診断、がん検診の受診などは、医療費が大きくなる事態そのものを防ぐための取り組みです。月数千円の健康への投資が、将来の数万円、数十万円の医療費負担を抑えることもあります。

制度は変わっても、「医療費をどう抑えるか」という本質は変わりません。高額療養費制度、保険による備え、そして病気を未然に防ぐための取り組みを組み合わせて考えることが、改正後の医療費と向き合う現実的な姿勢といえます。制度の変更点を正しく理解したうえで、自分の医療費のかかり方や働き方に照らし、どのような備えが必要かを考えることが、これから一層重要になるでしょう。

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