コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFP ファイナンシャル・プランナー
- 生活経済研究所長野 事務局長
- 日本FP協会静岡支部 支部長
- 東海ブロック 副ブロック長
- 2026.01.15
- 住宅
日銀の金融政策と住宅ローン金利 ~政策委員の議論から読む2026年~
住宅ローン金利の先行きを考えるうえで、金融政策決定会合は非常に重要ですが、決定事項は総裁一人の判断ではなく、複数の政策委員が参加し1人1票の合議制で決定されています。
金融政策決定会合は、原則として年8回開催され、必要に応じて臨時会合が開かれることもあります。ここで決定された内容は、短期金利や長期金利を通じて、住宅ローン金利にも波及していきます。
●金融政策決定会合には誰が参加しているのか
金融政策決定会合には日本銀行(以下、日銀と省略)の政策委員9名が参加しています。内訳は、総裁1名、副総裁2名、審議委員6名です。このほかにも政府関係者の参加が可能ですが議決権はありません。
総裁・副総裁は、日銀の金融政策運営の中核を担う存在であり、記者会見や講演を通じて、政策の方向性を対外的に説明する役割も果たしています。一方、審議委員は、金融・経済の専門家や企業経営の経験者など、多様なバックグラウンドを持つ人物で構成されており、この多様性こそが、金融政策決定会合で意見が分かれる理由でもあります。
●政策委員の立場の違いと住宅ローン金利
政策委員の考え方は大きく「利上げ推奨派」「慎重派」「中立・データ重視派」に分けられます。
利上げ推奨派は、長年続いた超低金利政策はすでに役割を終えつつあり、金融政策を正常化すべき段階に入ったと考えています。賃金上昇と物価上昇が同時に進んでいるのであれば、金利も本来あるべき水準に近づけるべきだという立場です。この考え方が強まれば、変動金利型住宅ローンは今後、徐々に上昇するという見通しにつながります。
田村直樹審議委員は2025年2月の講演において、日本経済について「2025年度後半には少なくとも1%程度まで政策金利を引き上げておくことが必要」との認識を示しています。
一方、慎重派は、足元の物価上昇が輸入物価やエネルギー価格の影響を強く受けている点を重視しています。野口旭審議委員が2025年11月の講演で「賃金と物価の好循環がどこまで持続するかについては、引き続き慎重な見極めが必要である」と発言しているように、賃金上昇が一時的なものであれば、利上げを急ぐことで家計や消費を冷え込ませてしまうリスクがあるという考え方です。特に、日本では変動金利型住宅ローンを選択している世帯が多いため、慎重派は住宅ローン返済額の増加が生活に与える影響を強く意識しています。
●総裁・副総裁が重視する「合意形成」
総裁や副総裁は、こうした異なる意見を調整しながら、政策委員会としての結論をまとめる役割を担っており、中立・データ重視派であるともいえます。
氷見野副総裁は、2025年に行われた複数の講演や挨拶の中で一貫して「金融政策は、あらかじめ決めた道筋を機械的に進むものではなく、経済・物価情勢を一つ一つ確認しながら判断していく」という趣旨の発言をしています。このほかにも、「利上げありきではない」「経済・物価情勢を丁寧に確認する」という中立・データ重視の発言が目立ちますが、これは住宅ローン金利が急激に上昇する局面を避けつつも、将来的な金利上昇を示唆している姿勢であると読み取れます。
●2025年12月の金融政策決定会合の位置づけ
2025年12月18日から19日にかけて開催された金融政策決定会合では、これまで実施してきた利上げが、家計や企業活動に与える影響が重点的に確認され、政策委員の間では、「金融政策の正常化は進めるべきだが、生活者への影響を無視してはならない」という点で大きな方向性が共有されています。
また、政策金利を0.25%引き上げ0.75%程度にする、いわゆる「利上げ」が決定されましたが、この決定は2026年に向けて利上げの方向性を維持しつつ、スピードは慎重に見極めるという姿勢を示したものであり、住宅ローン金利の観点では、「すぐに大きく上がるわけではないが、低金利が永遠に続く前提は危険」というメッセージを含んだ会合だったと考えられます。
●固定金利・【フラット35】への影響
固定金利型住宅ローンや【フラット35】は、長期金利の影響を受けます。金融政策の正常化が進めば、長期金利も緩やかに水準を切り上げていく可能性があります。住宅取得を検討する人にとっては、「いまの水準がずっと続く」と考えるのではなく、「徐々に変化する可能性がある」と捉えることが重要です。
日銀の金融政策決定会合については、開催予定や会合の結果(議事録)、開催後にある総裁の記者会見時の発言など、すべて公開(※1)されています。2026年の住宅ローン金利を考えるうえでは、重要な発言が随所にあるため、全文を読むのは難しい場合はAIなどを活用し、要約だけでも見ておくと良いでしょう。
(※1) 金融政策決定会合の運営 https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm

