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年金資産運用はオーケストラの如し


2025年も残り僅かとなりました。12月に入ると、クリスマスソングとともにベートーヴェンの交響曲第9番(通称「第九」)が街中で流れるのを良く耳にします。今回は、そんなオーケストラの調べを聴きながら、確定給付企業年金や確定拠出年金における資産運用のあり方について考えてみました。

■オーケストラと指揮者
オーケストラ(Orchestra)とは、弦楽器、管楽器、打楽器などで編成された演奏団体を指します。弦楽器はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスなど、管楽器は金管楽器(トランペット、ホルン、トロンボーン、チューバなど)および木管楽器(クラリネット、オーボエ、フルート、ファゴットなど)、打楽器はティンパニ、シンバルなどで編成され、編成のパターンは楽曲によって多種多様です。
一般的に、オーケストラの演奏は指揮者(conductor)がこれを統率します。指揮者は、オーケストラの楽団員の中では唯一楽器を演奏しない存在であり、「楽器を持たない演奏家」あるいは「音を出さない音楽家」とも称されます。私たちが指揮者と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、コンサートでひとり客席に背中を向けて指揮棒を振る姿ではないでしょうか。一見すると、指揮者の役割は単にリズムやテンポを揃えるだけだと勘違いされがちですが、その裏では、楽曲に独自の解釈を与え、それを練習やリハーサルの場で演奏者である楽団員らに浸透させ、自分の解釈どおりに演奏させるべく指示を出してまとめていくという「音楽作り」の中心的な役割を担っています。つまり、指揮者の仕事の大半は本番前に行われており、コンサート本番を迎える時点ではその役目をほぼ終えていると言っても過言ではないのです。

■年金資産運用は「演奏家」ではなく「指揮者」のスタンスで
確定給付企業年金(DB)の資産運用は、様々な運用機関が提供する様々な運用プロダクトの中から、制度管理者(企業・基金)が選定して運用を委託する「委託運用」が中心です。確定拠出年金(DC)の資産運用も、あらかじめ選定・提示された運用商品ラインナップ(投資信託、預金、保険etc)の中から、DC加入者が好みの商品を選択・指図する方法が採られています。両者に共通しているのは、銘柄選定、売買、資産管理といった専門的な業務はプロの運用機関が一手に行うため、DB制度管理者やDC加入者が資産運用・管理に係る業務全般に精通する必要は無いことです。
しかし、プロに任せるべきところは任せる一方で、全てを丸投げするのではなく、プロの行動・成果を適切に管理・評価する必要があります。DB制度管理者およびDC加入者に求められる役割をオーケストラに例えるなら、自ら演奏してみせて超絶技巧を披露することではなく、楽曲・楽譜(運用基本方針)の選択や演奏者(運用プロダクト・運用商品)の腕前を見極めて演奏者や楽器の編成(商品構成割合)を組み替えたり、コンサート本番での演奏状況をチェック(評価・モニタリング)することにあります。その意味では、DBおよびDCの年金資産運用では、トップ演奏家ばりの超人的な技術ではなく、楽団員たちをマネジメントする指揮者としての手腕が求められると言えます。

■DBの運用基本方針は「総譜」、運用ガイドラインは「パート譜」
また、DBの資産運用では、運用の基本方針(運用基本方針)の策定が義務付けられているほか、運用を委託する運用機関に対しては運用指針(運用ガイドライン)の提示も義務付けられています。運用基本方針は、資産運用の目的、資産構成に関する事項、運用業務に関する報告内容・方法に関する事項など、資産運用の全体的な枠組みを定めるものです。運用ガイドラインは、DBから運用機関に対して運用を行う際の遵守事項を示したものであり、当然ながら運用基本方針と整合的でなければなりません。
運用基本方針と運用ガイドラインの関係は、オーケストラで指揮者が使用する「総譜」と演奏者が使用する「パート譜」の関係に例えられます。演奏者(運用機関)はパート譜(運用ガイドライン)にしたがって専ら演奏に専念しますが、オーケストラ全体を調和させ良い音楽を作るのは、総譜(運用基本方針)を司る唯一の存在である指揮者(DB制度管理者)の責務なのです。

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最後に、クラシック音楽の醍醐味は、同じ曲であっても、指揮者、演奏家およびオーケストラによって表現が多種多様である点が挙げられます。これは、DBおよびDCの年金資産運用においてもまた然り。個々の制度や加入者によって資産運用の方針・手法は異なれど、良いハーモニーを奏でて豊かな老後につながることを願ってやみません。

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