コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFP ファイナンシャル・プランナー
- 生活経済研究所長野 事務局長
- 日本FP協会静岡支部 支部長
- 東海ブロック 副ブロック長
- 2025.09.04
- 住宅
単独世帯の住宅購入戦略:老後の「賃貸リスク」に備える
単身世帯の増加と住宅確保の課題
近年、単独世帯は急増しており、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(※1)によれば、単独世帯は2020年時点で全世帯の38.0%、2050年には44.3%に達する見通しです。平均世帯人員も2033年に初めて2人を下回り、小規模世帯化が進み、2030年には高齢単独世帯が900万世帯規模に達するとされています。これは社会にとっても、個人にとっても「住まいの確保」が大きなテーマとなることを意味します。
しかし、賃貸住宅市場においては高齢単身者が入居を断られるケースが依然として多く、国土交通省の調査では、大家や管理会社の約9割が「孤独死や室内での事故」を懸念し、高齢単身者の受け入れに心理的抵抗があると回答しています。保証人探しが難しくなることも入居障壁を高めており、甥や姪に頼る高齢単独世帯も増えています。
制度改正は進むが、現場の不安は残る
こうした背景を受け、住宅セーフティネット法(※2)は2024年に改正され、大家側の不安を軽減する制度が整備されました。制度改正のポイントは4つです。
(1)居住サポート住宅の新設
見守りや安否確認など支援付きの住宅を制度化し、要配慮者が安心して暮らせる仕組みを整備
(2)家賃債務保証の充実
国認定の保証業者を導入し、家賃滞納リスクを軽減。オーナーが安心して貸せる環境に
(3)残置物処理の明確化
入居者死亡後の家財処理を、居住支援法人などが契約に基づいて代行できる制度を整備
(4)終身建物賃貸借の手続き簡素化
物件単位から事業者単位の認可へ変更し、長期入居契約の活用を促進
制度的には改善が進んでいるものの域格差などもあり、誰でも安心して借りられる状況には至っていません。この現実を踏まえると、単身者の住宅購入は老後の住まいに対する安心に繋がりそうです。
持ち家戦略:老後リスクを減らす3つの視点
1. 将来「売れる」「貸せる」物件を選ぶ ―――
単身者の人生には転勤・転職・介護など、住み替えが発生しやすい要素があります。購入した物件が「売れない・貸せない」では不動産が「負動産」になりかねません。出口戦略もしっかり考えておきましょう。
購入のポイントとして「駅徒歩10分圏内や病院やスーパーへのアクセスが良好」「修繕履歴や耐震性能が明確」などがあり、こうした条件を満たす物件は、将来の賃貸化や売却時に需要が落ちにくいため、出口戦略を確保できます。
また、賃貸住宅として貸すのではなく、自分が住まない時期だけ稼働させる宿泊施設(民泊)としての活用も考えられます。実際に住宅会社や工務店がモデルハウスを建築し、顧客が見学する時以外は宿泊施設として貸し出しているところが増えており、以前は「住宅会社のモデルハウスに宿泊体験」として安価で貸すのが一般的でしたが、現在は高級リゾートヴィラとして大きな収益を上げているケースもあります。
立地や物件によっては数年で建築費を回収できるため、個人的に自分が住みたいところ数ヶ所に建物を建てて、老後はその物件から収入を得つつ、自分も自分の所有する「民泊」を渡り歩くように住む計画をしている方もいます。ただし、この場合は物件が観光地に限定されるため注意が必要です。
2. 無理のない資金計画 ―――
単身者は収入の途絶が直撃するため、住宅ローンの返済負担率はできるだけ低く抑える必要があり、理想としては手取りの20〜25%以内が良いとされています。さらに、生活費半年分以上の予備資金を確保して、病気や失業のリスクにも対応できるようにしておきましょう。また、金利上昇局面では長期固定金利の住宅ローンを選択し、繰り上げ返済により早期完済を目指すのが安全です。
3. もしもの時に備える法律上の準備 ―――
せっかく住宅を購入しても、亡くなった後に残された家をどう扱うかを決めていなければ、空き家として放置されてしまう可能性があります。
・遺言
・死後事務委任契約
・任意後見契約
・信託を活用する(民事信託/家族信託)
・居住支援法人・NPO・社会福祉法人との契約
これらを準備しておくことで、残置物処理や売却・賃貸の判断をスムーズに進められるため、家族がいない単身者でも安心して住宅を所有できます。ただし、誰に託すのかは大きな課題です。親族に託せる人がいるのか、親族以外を頼るのかにより手段も異なります。
単身者にとって「買うこと」は最大のリスク回避
高齢期の単身者の賃貸入居は、制度整備が進んでも依然として高いハードルがあります。そのため、単独世帯の住宅購入は老後の住まいに関する不安を減らす実効性の高い手段といえます。ただし、それは「どんな家でも良い」という話ではありません。
「持ち家戦略:老後リスクを減らす3つの視点」を満たすことで、単身者も「住まいを資産」として活かしながら、安心して老後を迎える準備が可能になります。
※1 日本の世帯数の将来推計(全国推計) 令和2(2020)年~令和32(2050)年 令和6(2024年)年推計
※2 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律

