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甥・姪に想いを託す 一人暮らしが選ぶ一時払い終身の知恵


  1. 一人暮らし時代の到来と終身保険の需要
    近年、日本では一人暮らし世帯(単独世帯)が急増し、2020年には全世帯の38.0%を占めるまでになりました。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、この割合は2050年には44.3%にまで上昇すると見込まれています。つまり、一人暮らしの方が“普通”の時代になりつつあり、一人暮らしの方を取り巻く問題への関心が高まっています。

こうした時代背景の中で、終身保険の販売も大きく伸びています。生命保険協会の統計によると、2021年度に143万件だった新契約件数は、2024年度には231万件に増加しました。新契約高でも7.8兆円から13.7兆円へと急拡大しており、その勢いは目を見張るものがあります。背景には「資産形成志向」が強まっていることに加え、「相続」へのニーズが高まっていることも見逃せません。

  1. 資産凍結リスクと任意後見制度の役割
    実際、筆者のセミナーでは、一人暮らしの方からは「自分が将来寝たきりになったとき」「認知症になって自由にお金を使えなくなったとき」などに備えて、甥・姪に財産を残したいという質問が増えています。一人暮らしでは老後の身元保証人や介護者の問題、最期の看取りの準備など、家族と暮らす場合にはあまり気にしなくてよかった課題が浮上しがちです。

たとえば認知症になり判断能力が失われると、銀行口座から生活費の引き出しや医療費の支払いができなくなり、自身やそれを支える家族が困る「資産凍結リスク」が生じます。これに備えて、判断能力が確かなうちに任意後見契約を締結し、任意後見人に財産管理を委ねることが考えられます。

ただし、この制度には重要な限界があります。任意後見契約は、本人の判断能力が不十分になった時点で、家庭裁判所に申し立てて「任意後見監督人」が選任されて初めて効力が発生するため、契約から効力発生までには時間と手続きが必要です。また、任意後見人は、病院や施設への入所時に求められる身元保証人や、医療行為に対する同意権を原則として持たない点にも注意が必要です。さらに、任意後見契約は本人の死亡をもって効力が終了するため、死後の事務はカバーされません。

  1. 生命保険・生命共済による確実な財産承継
    では、資産が凍結するリスクを回避し、確実に想いを託すにはどうすればよいでしょうか。その答えのひとつが、生命保険や共済の活用です。高齢になっても元気な兄弟姉妹がいれば心強いのですが、そういうお身内がいない人も多いものです。そういう背景もあり、筆者のセミナーでは「自分の財産は甥や姪に残して支援してもらおう」と考える一人暮らしの方が増えており、特に50代の参加者からは関連する質問が集中しています。しかし法律上、甥・姪が自動的に相続人になるわけではありません。民法の法定相続人には、配偶者・子・親に続いて「兄弟姉妹」が位置づけられています。

甥・姪が法定相続人となれるのは、兄弟姉妹がすでに他界している場合に限られます。つまり、仮に自分に姉が存命であれば、姉が相続人となり、甥・姪には権利が及びません。こうした仕組みのため、「甥や姪に財産を相続させるのと引き換えに将来の面倒を見てもらいたい」という理想を実現するには、遺言書の作成が不可欠になります。

逆に援護を期待される世代(20~30歳代)の講演参加者に「独身のおじさん、おばさんから老後の支援を頼まれるとしたら、最低どれくらいが欲しいですか?」と尋ねると、多くの人が口を揃えるように「2,000万円位」と答えられます。その理由を聞いてみると、「老後2,000万円問題という話を聞くと、健康だったとしてもそれだけ必要なら、最低限そのくらいは負担してほしい」ということが大半です。なるほど、理屈としては納得できますが、支援を依頼される側にとってはかなりの高額です。

しかし、そこで注目したいのが生命保険や共済制度の活用です。これらは契約時に甥・姪を受取人にしておけば確実に財産を託すことができます。しかも保険金や共済金は受取人固有の財産とみなされ、原則として遺産分割の対象になりません。つまり、「私の死後にはあなたが死亡共済金を受け取れるようにしてあるので、老後の面倒をみてもらえないかしら」と伝えることができるのです。

遺言書と異なり、生命保険金は遺留分侵害額請求の対象となるリスクが低いという利点もあります。民法上、兄弟姉妹やその子どもである甥・姪には遺留分が認められていないため、生命保険・共済は遺産を巡るトラブルを避ける上で特に有効な手段となります。

  1. 一時払い終身保険・共済の資産形成メリット
    一時払い(一括払い)型の終身保険・共済には資産形成面のメリットもあります。一度に掛金全額を納める代わりに、将来の死亡時には支払額を上回る保険金・共済金が受け取れます。支払った総額以上の保障が得られる設計なので、払込額に対して効率よく大きな資金を残すことが可能です。

たとえば、こくみん共済 coop の「一時払い終身生命」(死亡共済金500万円)では、加入時の年齢が40歳男性の場合、一時払掛金は約3,624,250円、40歳女性の場合は約3,432,500円です。どちらも払込額(約362万円/約343万円)より多い500万円の保障が得られる計算で、長く加入すれば解約返戻金も増えていきます。先の2,000万円であれば、一時払掛金は約1,448万円/約1,372万円で、それぞれ約552万円/約628万円も安く済むことになります。こうした一時払い終身保険・共済を使えば、一人暮らしの方でも「将来への名札付き財産」を効率的に形成できるのです。

また、大手生命保険各社は、金利の引き上げを見越して2025年7月に予定利率を軒並み引き上げるなど、市場はますます激戦化しています。これにより、新規契約では保険料が下がるか、解約返戻率が改善する傾向にあります。

  1. 終末期と死後の包括的プランニング
    一人暮らしの方が安心して将来を迎えるためには、一時払い終身保険を活用した財産承継だけでなく、終末期から死後に至るまでを包括的に計画することが重要です。前述の通り、任意後見契約は本人の死亡をもって終了するため、葬儀や医療費の精算、家財の処分といった死後事務は別途、死後事務委任契約を締結して依頼しておく必要があります。

これらの契約を専門家(弁護士、司法書士など)に依頼する場合、初期費用や継続的な報酬が発生します。例えば、任意後見契約の公正証書作成費用は約2万円、専門家への初期報酬は5~15万円程度が一般的です。さらに、任意後見監督人には月額1~3万円、専門家の任意後見人には月額3~5万円程度の報酬が必要となります。

遺言書がなくても保険・共済なら受取人を指名して確実に財産を託せる上、払込額以上の保障で資産形成にも役立ちます。一人暮らしの方が安心して将来を迎える手段として、一時払い終身保険・共済はますます有用になってきていますが、その利用は、任意後見契約や死後事務委任契約といった他の法的ツールと組み合わせることで、より強固な安心を築くことができます。

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