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「健康増進型保険」はどれくらいおトクなのか?


「健康増進型保険」はどれくらいおトクなのか?

最近の保険商品のトレンドの一つであるAIやビッグデータの活用によって、普及してきたのが健康増進型保険です。
2016年頃に登場し、今では、日本生命、住友生命、第一生命、明治安田生命などの大手生保でも商品が提供され、各社が注力している分野といえるでしょう。
健康増進型保険は、保険加入によって健康増進や生活習慣改善につなげられることをコンセプトにした保険のことで、おもに①喫煙の有無や健康状態で保険料が割引、②健康診断の結果で保険料が割引・還付金が受け取れる、③運動習慣など健康への活動で保険料が割引・還付金が受け取れる3つのタイプがあります。
ただ、健康増進保険という商品ジャンルがあるわけではなく、特約として、収入保障保険や医療保険、総合保障タイプの保険などに付加される形で、さまざまな商品が提供されています。
そこで、気になるのは、健康増進型保険は、いったいどれくらいおトクなのかという点ではないでしょうか。

健康増進型保険の先駆け商品は?
私の知る限り、健康増進型保険の先駆けともいえるのが、2016年12月に発売されたネオファースト生命の「カラダ革命」です(同商品は、りそなグループで取り扱われており、2017年4月から、りそなグループ以外の代理店で「からだプラス」として発売)。
同商品は、生命保険業界で初めて、実年齢の代わりに、健康診断等の検査項目結果等に基づいて算出した「健康年齢」を使用。契約時は、実年齢で保険料が計算されますが、3年ごとの更新時には、「健康年齢」を用いて、保険料が算出されます。

その当時、同社の新商品説明会に参加した際のことを今でもよく覚えています。
そのとき、私は「健康になっていく人は保険料が安くなって嬉しいでしょうが、逆に、健康年齢が実年齢を下回る人は、保険料が通常より高くなるわけですよね。その辺りをどうお考えですか?」と質問したのです。
担当者の回答は、「それはその通りです。でも、厳しいことを申し上げるようですが、お客さまには、その現実(実年齢と健康年齢が乖離していること)を知って、健康の重要性を身に染みて感じていただき、生活習慣を改善する行動変容を促したいのです」というものでした。

実年齢よりも健康年齢が低いと保険料はどれだけおトクに?
 たしかに、‘カラダ年齢’が保険料となって可視化されるわけですから、保険料を節約したい人は、必死に生活改善せざるを得ないでしょう。ただ、がんなどの病気を発症すると、保険料が上がったため他の保険に加入し直そうとしても、健康体と同じく新規で保険に加入するのは難しい。現時点でいくら健康であっても、加入後の健康状態は不確実だということは、理解しておかなければなりません。

そして、翌年の2017年10月には、更新時だけでなく、契約時から「健康年齢」により保険料を決定する「ネオde健康エール」が発売されました(2020年12月には、「からだプラス」と「ネオde健康エール」がバージョンアップし、一本化商品として「ネオdeからだエール」が発売)。
どれくらいおトクかについて、同社のHPでは、3年ごとに①健康年齢が-5歳、②実年齢と同じ、③健康年齢+5歳(上限)の保険料パターンが提示されています。
【契約例】
「ネオde健康エール」(無解約返戻金型特定生活習慣病入院一時給付保険)、実年齢40歳男性、Ⅰ型・入院一時給付金額100万円・月払
①健康年齢35歳で1,514円
②健康年齢40歳で1,782円
③健康年齢45歳で2,162円
・①と③の差額は648円、3年間で総額2万3,328円
・その後、3年ごとの更新時に①の健康年齢を続けた場合、実年齢70歳までの払込累計額は、②の場合と比べて23万円安い(残念ながら③のパターンは紹介されておらず)

40歳から70歳までの30年間で23万円おトクになるというのをどう評価するか。
この比較では、確かに、健康であればあるほど、保険料が安くなることはわかります。しかし、更新型ですので、健康年齢がよくても、実年齢に応じて保険料が上がってしまうのは避けられません。
<参考>
https://download.neofirst.co.jp/kenkoyell/

SOMPOひまわり生命のインシュアヘルス商品の場合は?
 もう一つ、別の商品で比較してみましょう。
 SOMPOひまわり生命では、保険(Insurance)に、健康(Healthcare)を応援する機能を組み合わせた新しい価値として「Insurhealth(インシュアヘルス)」を提案するとして、2018年4月の「じぶんと家族のお守り」を皮切りに、さまざまなインシュアヘルス商品を発売してきました。
 その特徴の一つが「健康チャレンジ」や「喫煙チャレンジ制度」です。
加入後の健康状態や禁煙によって、保険料が引き下げになり、契約日からの保険料差額相当額(キャッシュバック)を受け取るチャンスがあるというユニークなものです。
 収入保障保険とがん保険について、具体的な契約例は次のとおり。
【契約例①】
収入保障保険(じぶんと家族のお守り):40歳男性、65歳満了、年金月額20万円、月払
・契約から3年(36ヶ月)後に標準体から非喫煙者健康体に 「健康チャレンジ!」が成功した場合
 標準体8,080円 非喫煙者健康体保険料率5,580円
 月払割引額:8,080円−5,580円=2,500円
 年間割引額:2,500円×12=30,000円
お祝い金:(8,080円-5,580円)×36ヶ月=90,000円

【契約例②】
がん保険(勇気のお守り)終身がん保険(C2) (がん治療給付型)(基準給付月額10万円)+がん診断給付特約(100万円)+新がん先進医療特約、40歳男性、保険期間・保険料払込期間:終身、月払
・喫煙者保険料率から非喫煙者保険料率に「禁煙チャレンジ!」が成功した場合
 喫煙者保険料率3,531円 非喫煙者保険料率3,361円
 月払割引額:3,531円-3,361円=170円
 年間割引額:170円×12=2,040円

 同社によると、健康チャレンジ制度に成功した契約者の平均年間保険料割引金額はー12,114円、平均祝い金受取額は34,724円です。
 気になるのは、契約者のうち、どれくらいの人がチャレンジに成功しているのかという点ですが、健康チャレンジと禁煙チャレンジに成功した人は13,708人(2023年12月時点)となっています。
同社のインシュアヘルス商品(合計10商品)の販売件数約161万件(2024年3月時点)とありますので、この辺りから推し量るしかありません。
<参考>
https://www.himawari-life.co.jp/brand_insurhealth/

健康増進型保険のおトク度をどうはかるべきか?
いずれにせよ、健康増進型保険のおトク度は、保険料の割引やキャッシュバック、特典といった「目先の利益や恩恵」といったものだけでは、はかれないと考えています。
健康増進型商品のコンセプト上、重要なのは、加入に伴って行動変容を起こすことで健康になれるという契約者へのメリットに加えて、契約者に健康になってもらい給付金を抑えて健全に運営していくという保険会社のメリット。なおかつ、国民の医療費を抑えることで国や自治体にもメリットがあり、まさに「三方良し」の商品という位置づけなのです。
 ですから、前掲のSOMPOひまわり生命のインシュアヘルス商品の健康チャレンジ成功者の入院率が、未成功者に比べて約50%低いというデータは注目すべきだと思います。
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和4年度)によると、「直近の入院時の自己負担費用」について、平均19.8万円ですから、この費用もかかりません。

そして、どのくらいの人が病気やケガで入院するかといえば、厚生労働省「患者調査」(令和2年)によると、人口10万人に対しての入院受療率の総数は960人。
性別にみると、男性910人、女性1,007人と、妊娠・出産の可能性のある女性の方が多く、年齢階級別では、「5~9歳」と「10~14歳」が低く、これ以降、年齢階級が上がるほど高くなっていきます。受療率が1000人を超えるのは65歳後半からですが、それ以降、急増します。
つまり、若いうちは、それほど入院する人が多くなくても、高齢になると入院せざるを得ない人が確実に増える。となれば、若いうちから生活習慣病予防など、健康意識を高めることはかなり大切なことだと言えるでしょう。
健康増進型保険の本格的な普及から、まだ10年足らず。
将来を見据え、どれくらい契約者の健康に寄与するインセンティブとなるのか、今後も注視していきたいと思います。

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