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今話題の「卵子凍結」のメリット・デメリット


■卵子凍結が注目される理由
2022年12月に東京都の小池百合子知事が、少子化対策として「健康な女性が卵子を凍結保存する際の支援策を検討する」という考えを示し、2023年度予算に関連経費を含め1億円を計上したことが話題となり、卵子凍結への関心が急速に高まっています。

男性の精子とは異なり、女性の卵子は胎児のときに一生分が生成されます。新生児の卵子は数百万個以上といわれていますが、年齢とともに減少し、35歳頃には2〜3万個になります。また、年齢とともに卵子の質も低下していきます。

量・質ともに低下する卵子を若いうちに採取、凍結保存することで、将来の妊娠の可能性を高められます。また、仕事やパートナーの制約を受けず、自分のタイミングで妊娠・出産を考えられる点において、卵子凍結が注目されているのです。

■卵子凍結の方法と費用
卵子凍結とは、将来の妊娠・出産に備えて、卵巣から採取した卵子を凍結保存する方法です。一般的に次の3つのステップがあります。

(1)排卵誘発:内服薬や注射によって卵巣を刺激し、複数の卵子を育てる
(2)採卵:膣から針を入れて、直接卵巣に穿刺(せんし)して卵子を採取する
※穿刺:血液や体液、細胞などの採取のために、体外から血管、体腔内、内臓に針を刺すこと
(3)凍結保存:採取した卵子の中から、受精可能な成熟卵子を選び、液体窒素の中で凍結する

費用は、医療機関によって異なりますが、一般的には以下のようになります。

・ 1回の採卵でかかる費用:25~50万円(事前の検査、排卵誘発、採卵、凍結を含む)
・ 卵子凍結の維持費:2~5万円(1年ごとにかかる保管料)
・ 凍結卵子を融解して使う費用:18~29万円(顕微授精、胚培養、胚移植を含む)

■国や自治体、企業の助成制度
卵子凍結には、がんなどの治療で卵巣機能が低下するおそれがある場合に行う「医学的適用」と、健康な女性が自分の意思で行う「社会的適用」があります。医学的適用の場合は、国から助成金が出ることがあります。

※参考:小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin_00010.html

社会的適用についても、一部の自治体や企業が費用を助成する制度を導入しています。お住いの地域や職場の制度を調べてみましょう。

<東京都の卵子凍結に係る費用の助成制度>
東京都に住む18~39歳までの女性が対象で、都の指定する医療機関で卵子凍結を行った場合、最大30万円が助成されます。助成には、都が開く説明会への参加が必要ですが、すでに6,000人を超える申し込みがあったそうです。

※参考:卵子凍結に係る費用の助成(東京都福祉局)
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/touketsu/gaiyou.html

一部の企業では費用を助成する制度を導入しています。例えば、株式会社ジャパネットホールディングスでは、社会的適応に対して最大40万円の補助金を支給しています。

■リスクと課題
卵子凍結の課題は以下のとおりです。

(1)高額な費用がかかる
卵子凍結の費用は保険適用外のため、費用が高額になります。また、凍結した卵子を保存している間は保管料がかかります。

(2)排卵誘発による合併症リスクがある
排卵誘発時の合併症には卵巣刺激症候群(OHSS)があります。卵巣を無理に刺激することで炎症が起こり、卵巣が腫れたり、腹水がたまったりする病気です。

(3)採卵処置による合併症リスクがある
採卵の処置の際には麻酔薬を使用するため、副作用や麻酔から覚めたあとの吐き気やめまいが起きる場合があります。まれに呼吸が抑制されるなど、重篤な合併症が起きることもあります。

また、膣から針を入れて卵巣に穿刺するため、出血リスクを伴います。処置による感染症を起こす可能性もあります。

(4)妊娠が確約されるわけではない
凍結卵子の生存率は100%ではないため、いざ卵子を使うときに使用できないケースもあります。さらに受精、妊娠の可能性も100%ではないため、妊娠が確約されるわけではありません。

■社会的適用には懐疑的な意見も多い
日本産科婦人科学会は、社会的適用について推奨しない立場をとっています。将来の妊娠が確約されているわけではないこと、医療行為を行うことへの負担やリスク、高齢出産のリスクは変わらないことが主な理由です。

また、医学的適応は、基準を満たした施設で行われるのに対し、健康な女性の卵子凍結については、施設の内容などが評価・確認されていない点も指摘されています。

妊娠・出産に対して選択肢が広がるのはよいことですが、妊娠・出産はパートナーがいてこそ成立するものであり、自分一人で判断できるものではありません。

卵子凍結に関心があるのであれば、まずは正しい知識を持つことが重要です。医師に相談してみたり、説明会に参加してみたりして、卵子凍結に対する理解を深めた上で、「それが本当に自分にとって必要か」を考えるプロセスを持つとよいでしょう。

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