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執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級FP技能士
- 1級DCプランナー
- 住宅ローンアドバイザー
- 確定拠出年金教育協会 研究員
- アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師
- 2023.09.28
- 投資
株式分割を実施する銘柄が急増中?
2022年中に株式分割を実施した上場企業は95社でした。
2023年は、9月現在で確定している分だけでも117社に達しています。
なぜ今年は、株式分割をする銘柄が増えているのか。
その大きな理由のひとつは、昨年10月に東京証券取引所(以下、東証)が、最低単位である100株の株式を買うのに必要な金額(=最低投資金額)が100万円以上の39銘柄を名指しして、最低投資金額の引き下げを要請したことでしょう。
実は、東証による最低投資金額の引き下げ要請は、古くは1990年ごろから始まっています。当時は、日経平均株価が4万円近い平成バブルのピークのころで、上場企業のうち4分の3程度が最低投資金額100万円以上でした。50万円未満で投資できる銘柄は全体の2%前後といったところ。
当時は、株式投資というと、ある程度まとまった金額のお金がある人にしかできなかったのです。そこで、個人投資家の裾野を広げたかった東証は、上場企業に最低投資金額の引き下げを要請し始めたわけです。
その後、2000年代に入ると、平成バブルの崩壊によって株価水準が下がってきたこともあり、50万円未満で投資できる銘柄が全体の6割近くを占めるようになってきました。そして、この流れを全体に波及させるためにも、東証は2001年に、「望ましい投資単位の水準の規則化」として、最低投資金額を50万円未満に引き下げることを努力義務化したのです。
それから20年が経ち、2022年10月26日時点で、上場企業の約95%の銘柄が50万円未満で投資できるようになりました。しかし、依然として全体の約5%である197銘柄が最低投資金額50万円以上で、さらに全体の約1%である39銘柄が最低投資金額100万円以上の状態でした。
東証としては、これまで30年以上も要請し続けていることもあり、今回は100万円以上の39銘柄を名指しして、強く要請したわけです。名指しされた企業側も、さすがにこれは企業イメージに悪影響を与えかねないと思ったのではないでしょうか。実際に、名指しされたファーストリテイリングや東京エレクトロン、オリエンタルランドなどは、年明けの2~3月に株式分割を実施しました。
そもそも株式分割とは、その名のとおり、株式を分割して、発行済みの株式数を増やすこと。
例えば、1株を2株に分割すると、発行済み株式数は2倍になります。100株を保有していた株主は、分割によって保有株数が200株に倍増。ただし、株式分割前後で保有株式の評価額は変わらないように株価が調整されるので、株価は2分の1になります。
ちなみに、2021年9月に1株を5株に分割したトヨタの場合、分割前に約1万円だった株価は、分割によって約2,000円に修正されました。それまで、最低単位100株で約100万円の投資資金が必要だったのが、分割によって約20万円で買えるようになったのです。
また、今年の6月、NTTは1株を25株に大幅分割しました。分割前に約4,400円だった株価は、176円ほどに修正され、最低投資金額が44万円から1万7,600円まで下がったのです。買いやすさが格段に上がったと言えるでしょう。
このように、既存の株主にとっては、株式分割で株数が増えても株価が修正され、評価額は変わらないので、損得はありません。
しかし、株価が2分の1とか5分の1、なかには10分の1や、NTTのように25分の1などに引き下げられることによって、株式投資がしやすくなります。新たな投資家を呼び込む効果が期待できます。この点が株式分割の大きなメリットだと言えるでしょう。
一方、上場企業にとっては、小口の株主が増えることによる管理コストの負担増加という株式分割のデメリットはありますが、株主数の増加が期待できることや、株式の流動性・株価の安定性などを高められるというメリットもあります。東証からの要請があったから仕方なく決断した企業もあるかもしれませんが、株式分割によるメリットの方が大きいとの判断で決めた企業も多いのではないかと思います。
株価に与えるインパクトとしては、株式分割そのものが企業業績の向上に直接つながるものではないので、株式分割の実施企業の株価が必ず上がるとは言えません。しかし、株式分割を発表した直後の株価は上がることが多いとよく言われます。
実際に、今年8月、17年ぶりの株式分割を9月末に実施すると公表したホンダの株価は、1ヶ月ちょっとの間に4,400円台から5,400円台まで上昇しました。ホンダと同様に9月末に株式分割を実施する企業は約30銘柄。年内はさらに10銘柄程度の予定がありますが、今後増えていく可能性も十分に考えられます。
なお、9月27日現在、最低投資金額が100万円以上となっている銘柄は、東証プライム市場に限定しても、依然として42銘柄あります。これらの銘柄は、近い将来の株式分割の実施可能性の高い銘柄と言えるでしょうから、株価動向とともに要注目でしょう。