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退職後の火災保険は受難が多い


退職を機にやめられる(あるいは減額できる)保障もあれば、そうでない保障もあります。自宅の火災保障(共済や保険)や自動車の保障はやめられない保障の代表格で、どちらも相当に潤沢な資産がある人を除けば退職後も必携です。しかし、損害保険各社の火災保険に関しては、退職後の契約締結に際し、多くの受難が待ち受けているのはご存じでしょうか。

◆受難その1 長らく保険料を払ってこなかった
現役時代に、火災保険に加入してこなかったという意味ではありません。住宅の取得時に、住宅ローンを借り入れた金融機関から「ローン完済まで途切れることなく火災保障を充足してほしい」と求められ、火災保険の長期契約を結んだケースです。契約時に期間内の保険料を一括で支払ったため、その後長らく保険料を負担していなかったのです。
火災保険の長期契約は、契約期間を長くするほど保険料が割り引かれる仕組みのため、住宅ローンの返済期間にあわせ35~36年間で契約する人が多くいました。その契約が退職後にようやく満期をむかえたので、すっかり忘れていた火災保険の支払いに久しぶりに直面するのです。

◆受難その2 保険料が値上げされている
自然災害の多発により火災保険が値上がりを続けているのは周知の事実ですが、直近の10年を振り返ってみてもその推移には驚かされます。火災保険料算出の基となる参考純率の改定は次の通りです(カッコ内は実際に火災保険が改定された時期)。

(1)2014年7月(2015年10月) 全国平均で+3.5%
(2)2018年6月(2019年10月) 全国平均で+5.5%
(3)2019年10月(2021年1月) 全国平均で+4.9%
(4)2021年6月(2022年10月) 全国平均で+10.9%

長期契約を結んだのはこれらの値上げより前のため、久しぶりに火災保険の見積りを目にする人には一気に保険料が高くなったように見えるに違いありません。

◆受難その3 長期契約ができない、しても安くならない
実は、最長36年間もの長期契約が結べたのは2015年10月までで、先述の(1)の改定を機に、最長10年間まで短縮されています。さらに(4)の改定と同時に2022年10月以降は最長5年間まで短縮されるに至っています。
かつては、保険料を安くする有効手段だった長期契約が、わずか5年間の契約ではその効果が極めて限定されるようになり、保険料を5年分一括払いしても受けられる割引は10%程度に留まっています。

◆受難その4 古い住宅は保険料が高くなる
度重なる改定でただでさえ値上がりした保険料が、近年は築後年数によってさらに高くなります。(3)の改定と同時に、築年数が浅い住宅に対する割引が導入されたのです(築浅割引)。
どこまでを「築浅」とするかは保険会社により異なり、築10年まで、築20年まで、築25年までと様々です。肝心なことは、長期契約が切れた多くの住宅の場合、どの保険会社に行っても築浅割引は受けられないという事実です。
また、築年数に応じた保険料率を適用する保険会社もあります。築年数が経つにつれ保険料は高くなっていきますが、参考までにその様子を見てみましょう。

例)戸建て住宅(木造H構造・保険金額1,500万円・東京都・保険期間5年・一括払い)

築年数 0年(新築)  : 74,192円
築年数 5年    : 83,170円
築年数10年     : 97,234円
築年数15年    :104,919円
築年数20年    :116,756円
築年数25年    :128,993円

ご覧の通り、築25年で既に新築の1.7倍の保険料になります。

損害保険会社との間で火災保険の長期契約を結んだ人が退職すると、存在を忘れた頃に大きな負担として再登場するのが火災保険です。ポイントは、自分の契約が損害保険各社の火災保険だったという点です。すなわち、火災共済であればこういった受難を回避できます。それにもかかわらず、現役時代に労働組合を通じて加入した火災共済を、退職を機にやめてしまうなどということがないように、くれぐれも注意したいものです。

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