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意外と奥深い!? 現価係数表の世界(その2)


縦軸に期間(年数)を、横軸に利回りをとる「現価係数表」や「年金現価係数表」は、ファイナンシャル・プランナー(FP)試験を筆頭とした各種金融資格ではお馴染みの存在です。前回のコラム(※)では「現価係数表」について取り上げましたが、今回は、「年金現価係数表」について解説します。

■ 現価係数表と年金現価係数表の違い
前回のコラムで解説した「現価係数表」は、一定の利回りで運用するという前提のもと、一定の期間が経過した後に一定の金額に達するために必要な元本(現在価値)を算出するのに用います。例えば、利回りが年2%複利の環境下では、3年後に10,000円に達するためには、現時点では9,423円(≒10,000÷1.02÷1.02÷1.02)が必要との計算になります。
これを、下記の現価係数表を用いて計算すると、「2%」および「3年」に該当する現価係数(0.9423)と一定の金額(10,000円)を乗じることで簡単に算出できます(10,000×0.9423≒9,423)。

<現価係数表>
    1%  2%  3%  4%   5%
0年 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000
1年 0.9909 0.9804 0.9708 0.9615 0.9523
2年 0.9803 0.9612 0.9425 0.9246 0.9070
3年 0.9705 0.9423 0.9151 0.8890 0.8638
4年 0.9609 0.9238 0.8885 0.8548 0.8227

一方、「年金現価係数表」は、一定の利回りで運用するという前提のもと、一定の期間にわたり一定の金額を受け取るために必要な元本(現在価値)を算出するのに用います。例えば、利回りが年2%複利の環境下では、3年にわたり年初に10,000円を受け取るためには、現時点でいくら必要になるでしょうか。「10,000円を3回受け取るんだから、30,000円だろ?」と早合点してはいけません。この場合、下記の通り、毎年受け取る金額ごとに現価を計算する必要があり、合計すると約29,416円が現時点で必要との計算になります。

(1)1年目(年初)に受け取る10,000円の現価: 10,000円
(2)2年目(年初)に受け取る10,000円の現価: 9,804円(≒10,000÷1.02)
(3)3年目(年初)に受け取る10,000円の現価: 9,612円(≒10,000÷1.02÷1.02)
(4)年金現価(=(1)+(2)+(3)): 29,416円(=10,000+9,804+9,612)

しかし、このような複雑な計算も、年金現価係数表があれば簡単にできます。下記の年金現価係数表を用いて計算すると、「2%」および「3年」に該当する年金現価係数(2.9416)と1年当たりの年金額(10,000円)を乗じることで算出できます(10,000×2.9416≒29,416)。

<年金現価係数表(その1)>  ※期初払い
   1%   2%   3%   4%   5%
1年 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000 1.0000
2年 1.9901 1.9804 1.9709 1.9615 1.9524
3年 2.9704 2.9416 2.9135 2.8861 2.8594
4年 3.9410 3.8839 3.8286 3.7751 3.7232
5年 4.9020 4.8077 4.7171 4.6299 4.5460

■ 年金現価係数は現価係数を「累計」したもの
年金現価係数表と現価係数表を見比べるとお気づきになるかもしれませんが、じつは、年金現価係数は現価係数を「累計」したものなのです。例えば、「2%」および「3年」に該当する年初払いの年金現価係数は「2.9416」ですが、これは、現価係数表の「2%」の列に記載されている当初3年分の現価係数(0年:1.0000、1年:0.9804、2年:0.9612)の累計値と一致します。
よって、年金現価を計算したいのに手元に年金現価係数表が無い場合は、現価係数表があれば(手間はかかるものの)年金現価係数表の代用として利用できます。

■ 年金現価係数表も「金利の有難さ」を教えてくれる
年金制度は、収支相等の原則に基づき、収入(掛金・運用収益)と支出(給付)が将来にわたりイコールとなるよう制度設計をします。ここでいう「将来にわたり」とは、期限を設けず未来永劫ずっと見込むことを意味しますが、「財源を無尽蔵に準備しなければならないのか」あるいは「いくら準備してもいずれは枯渇してしまうのではないか」との不安がつきまといます。はたして、「将来にわたり」見込むなんてことは、実際に可能なのでしょうか?
年金現価係数表は、そんな素朴な疑問にも答えてくれます。

<年金現価係数表(その2)>  ※期初払い
    0%  1%   2%  3%   4%  5%
50年  50.0 39.588 32.052 26.502 22.342 19.169
100年 100.0 63.659 43.960 32.547 25.485 20.840
150年 150.0 78.295 48.385 33.926 25.928 20.986
200年 200.0 87.195 50.028 34.240 25.990 20.999
250年 250.0 92.606 50.639 34.312 25.999 21.000
無限大  ∞ 101.00 51.000 34.333 26.000 21.000

上記の年金現価係数表は、一番左の列「利回り:0%」を挿入するとともに、さらに長期間(50年以上)にわたる係数を表示したものです。一番左側の列、すなわち利回りが0%(=金利が存在しない世界)の場合は、運用期間が長くなるほど、年額1を給付するための元本(給付原資)も増えるため、給付原資を際限なく準備しなければなりません。
ところが、利回りが1%以上(=金利が存在する世界)の場合をみると、様相が一変します。運用期間が長くなるほど年金現価係数が増えるのは同じですが、現価係数と同様に「複利の効果」が働くため、その増加幅は次第に低減し、最終的(理論的)には一定水準で頭打ちになります。表の最終行(運用期間が無限大)をみると、利回りが2%の場合は51.0、3%の場合は34.33、4%の場合は26.0、5%の場合は21.0の元本(給付原資)があれば、年額1の給付を未来永劫にわたり支給することが理論上可能となります。
このように、年金現価係数表は、単なる数字の羅列ではなく、「複利の効果」を活用することで、「無尽蔵に増えない範囲」で将来にわたる準備が可能なことを私達に教えてくれる、じつに奥深いものなのです。

■ 「ややこしさ」と「お買い得感」は表裏一体
現代の金融経済においては、元本が利息を生むという「時間価値」と、金利は常に正(プラス)の値をとるという「非負制約」の2つが前提となっています(マイナス金利はひとまず置いといて)。年金制度や保険制度において現価計算が重要なのは、金利の複利の効果を活用して「少ない元手」かつ「無尽蔵に増えない範囲」で給付原資の準備ができるからです。
つまり、現価計算の「ややこしさ」と、少ない元手で準備が可能という「お買い得感」は、いわば表裏一体の関係にあります。もっとも、お買い得であることを求めるあまり、例えば現在の環境下で10%の利回りを見込むことは、およそ適切ではありません。利回りに限らず、現価計算のための基礎率を設定する際は、使用する基礎率が合理的であるかどうかが問われます。

(※)意外と奥深い!? 現価係数表の世界(その1)(2022年10月6日上程)
https://fpi-j.com/column/column4291/

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