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投資の際に意識したい心の癖と偏り


「市場は合理的である」とされてきた従来の経済学の前提は、取引に参加する投資家全員が同じ情報を持ち、自分が得た情報を正確に処理し、投資効率が最大になるように行動するというものです。一方で、心理学の理論や分析の手法を使用し、人の投資に関する行動や金融市場の変動要因などの解明を目指すのが行動経済学です。

■人は理屈だけでは判断しない
従来の経済学の前提を食べ物に例えると、健康を維持したいと考えている人の集団においては、「A.健康に良いけれど味の良くない食べ物」と「B.健康には悪いけれど美味しい食べ物」がある場合に、すべての人が「A.健康に良いけれど味の良くない食べ物」を選ぶはずと考えます。しかし現実には「B.健康に悪いけれど美味しい食べ物」を選ぶ人が沢山います。
これをお金に関わる話に置き換えてみましょう。わかりやすい例としてよく取り上げられるのは宝くじです。一攫千金を夢見て、売り場に並ぶ光景をよく見かけますが、購入額に対する期待値は、40~50%と言われています。あるジャンボ宝くじで計算した期待値は44.8%だったそうです。つまり、1,000円分の宝くじを買ったとして、理論的には448円しか儲からないのです。合理的に考えると「これだけ投資効率が悪い商品を買う人はいない」となるはずですが、実際には多くの人が購入しています。つまり、人は理屈や理論だけで動くわけではないのです。ちなみに、この「宝くじを買う心理」は、未達回避という理屈で説明できます。簡単に言うと、買わなければ「一攫千金の願望」が「未達成」になるので、未達になることを回避するために買うのです。
行動ファイナンスは行動経済学の一分野で、このような人間の行動心理に注目して、投資の際にどのような行動を取る傾向が強いかを考察するわけです。

■人の行動に影響する「バイアス」の存在
行動ファイナンスの代表的な理論に「プロスペクト理論」があります。これは、人間の心理的傾向を考慮し、リスクを伴う場面で意思決定がどのように行われるかをモデル化した理論で、主な内容は次の通りです。
・人は、確実な結果を好む
・人は、利益を受ける場合はリスクを避けようとし、損失を被る場合はリスクを取ろうとする
・人は、表現の仕方によって選択を変える傾向がある

ひと言でいうと、人は得するよりも、損したくない気持ちが強いということで、これを損失回避バイアスと呼びます。バイアスとは、人が持つ、考え方の偏りや先入観のことです。人の行動や言動に、何らかのバイアスがかかるのは、何も投資だけに限りません。良く知らない人に対しても、「あの人は○○な人だ」とか、「あの人は○○な性格だから仕方ない」というように、見た目や表面的な言動だけで決めつけることは、決して珍しくないでしょう。
こうしたバイアスによる思い込みが自信過剰につながり、不適切な投資やハイリスクな投資につながることもあるのです。バイアスを避けることはできないとしても、一歩引いて「もしかしてバイアスがかかっているのかな?」と考えてみることは、冷静な判断のために大切な要素なのかもしれません。

■行動の癖を意識すること
例えば、株式投資において、自分の持っている株が、購入時から大きく値下がりしたとしましょう。株価の下落は、その会社の業績悪化や、最初の期待ほど成長していないといった、何らかのマイナス要因を反映したものと考えられます。理屈でいうと株価上昇の見込みがない株など早く売ってしまって、上昇期待の高い株に買い替えることが合理的な判断といえるはずです。しかし、「自分が最初に下した判断の間違いを認めたくない」という心理が働き、合理的な理由は何もないのに、その銘柄を持ち続けてしまうことがあるのです。いわゆる「塩漬け」です。

私たちは常に合理的な判断をするわけではなく、むしろその時の雰囲気や感情で動くことが多くあります。また、投資家が持っている情報の違いや過去の経験の差によって、同じ状況においても別の判断をする場合があります。投資を始めるにあたり、知識や情報、投資理論を学ぶことはとても重要ですが、その一方で、「人間には様々な心の癖がある」ことを理解し、自分の行動や意思決定にはどのような傾向があるのかを知ることは、とても重要だと言えるでしょう。

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