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NISAとiDeCo、どちらを優先すればよいか


2024年1月から新しいNISAがスタートしました。日米の株式市場が活況なことも重なり、投資気運が高まっているように思います。税制優遇のある投資制度は他にもiDeCoがありますが、「投資信託で積立をしたいが、どちらを優先すればよいか」という相談が多く寄せられています。そこで今回は、NISAとiDeCoの違いを解説しながら、活用方法について考察してみます。

■制度の概要と相違点
どちらも税制優遇がありますが、内容は大きく異なります。NISAで投資できる額は年間最大360万円、投資累計額で最大1,800万円まで。そこから得られる運用益には課税されません。投資期間に制限はなく、いつでも売却し換金できるため、ライフプランに合わせやすい点が特徴です。

iDeCoでは職業等により毎月の拠出額の上限が異なり、月額12,000~68,000円の範囲(※1)となっています。投資累計額には上限がありませんので、長く積み立てるほど投資累計額が多くなります。掛金の全額が「所得控除」の対象となるため、所得税と住民税を削減できる点が特徴です。

資金は原則60歳以降に一時金または年金として受け取ります。一時金受け取りの場合は「退職所得控除」、年金受け取りの場合は「公的年金等控除」が受けられ、税制面での優遇(非課税ではない)があります。なお、運用期間中の運用益については課税されません。

両者の相違点は、大きく次の3点です。
①iDeCoは掛金について「所得控除」が受けられる(NISAは受けられない)
②iDeCoは受取時に課税される場合がある(NISAは非課税)
③iDeCoは原則60歳以降でなければ換金できない(NISAは制限なし)

■住宅購入や教育資金として利用したいならNISAを優先
iDeCoは原則60歳まで換金できないため、60歳前の資金ニーズには対応できません。従って、住宅取得や教育資金など退職前の資金準備が目的なら、NISAを優先しましょう。

例えば、現在30歳の方が自分の老後資金として30年後に1,000万円、お子様の進学資金として18年後に500万円を貯める目標を立てたとしましょう。運用利回りを年3%とすると、進学資金は月額18,000円、老後資金は月額17,000円が積立額の目安です。

この場合、進学資金の月額18,000円はNISAで、老後資金の月額17,000円はiDeCoで積み立てます。老後資金の月額17,000円がiDeCoの拠出限度額を超えてしまう場合、超過分はNISAで上乗せしてください。

■所得控除を受けたいならiDeCoを優先
NISAは運用益については非課税ですが、毎月の積立額に対する税制優遇はありません。一方、iDeCoなら積立額の全額について所得控除が受けられます。

例えば、年収500万円の方がiDeCoで年額144,000円を積み立てると、減税額は年額28,800円です(※2)。30年間では864,000円ですから節税効果は高いといえます。ただし、配偶者控除や扶養控除、住宅ローン控除などを受けており、そもそもの納税額が少ない場合は、思ったほどの効果が得られない場合もあります。

■退職所得が大きい場合はNISAを優先
受取時の課税についてNISAは非課税です。iDeCoでは退職所得控除や公的年金等控除などの税制優遇がありますが、受取額が控除額を超える場合は課税対象となります。

例えば、勤続38年の方が退職一時金として2,500万円を受け取ったとしましょう。勤続38年の方の退職所得控除額は2,060万円ですから、差額の440万円の1/2、すなわち220万円が退職所得として課税対象となります。所得税・住民税をあわせて342,500円の税額となり、決して小さくありません。

退職金規程などを確認し、自分が考える昇給コースの場合、将来の退職金額がどの程度になるかを人事総務部に問い合わせてみましょう。退職金額が控除額を超える恐れがある場合は、課税される心配がないNISAを優先するとよいでしょう。

■最後に
以上、資金ニーズと税制面で優先順位を考察してみました。今回ご紹介したのはあくまで一例であり、毎月拠出できる金額や将来の資金ニーズ、世帯構成など、条件が変わると結果も変わります。今回の記事を参考にし、自分のケースにあてはめて判断してください。

また、NISAやiDeCoはあくまで投資であり、将来の受け取り額は確定していません。相場の変動によっては元本割れのリスクもあるため、長期分散投資の徹底をお願いいたします。

※1:年1回などの拠出も可能で、実際には年間での上限額が決められている(例外あり)
※2:社会保険料控除額75万円、基礎控除額48万円(住民税43万円)で計算

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