コラムColumn
執筆者プロフィール
- CFPファイナンシャル・プランナー
- 生活経済研究所長野 主任研究員
- 2026.01.01
- 貯蓄
習慣こそが人生を決める ~ お金が貯まる習慣づくり ~
世の中には、お金が貯められる人と、なかなか貯められない人がいます。しかし、その違いは、収入の多い・少ないではありません。
私はファイナンシャルプランナー(FP)として、個別相談を通じて数多くの家計を見てきました。年収が1,000万円を超えているにもかかわらず、ほとんど資産がない方や、資産以上の負債を抱えている方も珍しくありません。一方で、年収は決して高くないにもかかわらず、30代で1,000万円以上の資産を築いている方も多くいらっしゃいます。
この差はどこから生まれるのでしょうか。
答えは非常にシンプルで、「支出をコントロールできているかどうか」です。
年収の高い方ほど、支出も派手になりがちです。ブランド品のバッグや高級時計、アクセサリーなどにお金を使っているケースも少なくありません。一方で、着実にお金を貯めている方は、身なりが質素なことが多く、必要以上にお金をかけていません。その結果、支出が抑えられ、貯蓄が積み上がっていくのです。
私自身の金銭感覚に大きな影響を与えたのは、学生時代に読んだ本多清六氏の『私の財産告白』でした。その中にある「月給の4割を天引き貯金すべし」という教えは、今でも私の行動指針になっています。
私は大学生の頃、親元を離れて賃貸アパートで暮らしていました。親からの仕送りが月10万円、アルバイト収入が月10万円ほどあり、月収は合計20万円程度でした。そのうち4割にあたる毎月8万円を貯めることを、自分に課しました。当時の家賃は約4万円でしたが、学食やアルバイト先のまかない(お好み焼き屋で働いていました)を活用し、食費を抑えることで、特に不自由を感じることなく生活できていました。
大学1年生のとき、最初にした大きな買い物はオーディオセットでした。プリメインアンプ、カセットデッキ、CDプレーヤー、スピーカーを揃えて約40万円。すべて現金で購入しました。その後も、中古のスクーター(ヤマハHi)や中古車(スプリンタートレノ)を、同じく現金で購入しています。
大学を卒業する頃には、すでに200万円ほどの貯蓄がありました。社会人になってからも「収入の4割を貯める」というルールを崩すことはありませんでした。その結果、25歳の頃には貯蓄残高が500万円を超えていました。
こうした習慣がなければ、私の人生はまったく違ったものになっていたかもしれません。少なくとも、これまでお金で大きな苦労をせずに済んでいるのは、若いうちに身につけた習慣のおかげだと確信しています。
では、お金周りがうまくいっている人には、どのような習慣があるのでしょうか。
【1】 給与天引きを利用する
収入にかかわらず、驚くほどお金を貯めている人に共通するのが、この習慣です。おすすめしたいのは、月収の4割を給与天引きで貯蓄に回すことです。賞与(一時金)がある場合も、最低でも4割は貯蓄に回したいところです。
注意したいのは、給与が上がったときです。たとえば月給が1万円上がっても、税金や社会保険料が2割ほど差し引かれ、手取りは8,000円程度にとどまります。そこから4割を貯蓄に回すと、実際に使えるお金は4,000~5,000円ほどです。
できれば、給与が上がっても生活水準は変えず、増えた分はすべて貯蓄に回すのが理想です。「給料が増えたら支出を増やすのではなく、貯蓄額を増やす」というルールを、あらかじめ決めておくことが重要です。
【2】 借り入れを利用しない
分割払いやリボ払いは使わず、欲しいものがあればお金を貯めてから買う。これも重要な習慣です。お金が貯まるまでに数ヶ月かかることもありますが、その間に「やはり必要ない」と気が変わることも少なくありません。
3ヶ月、半年待ってもなお「欲しい」と思えるものは、あなたにとって本当に「必要」なものです。そのときは、躊躇せず堂々と買えばよいのです。欲しいもの、必要なものを買うためにお金を貯めているのですから。この習慣は、無駄な買い物を大きく減らしてくれます。
この考え方は住宅購入にも当てはまります。たとえば22歳から32歳まで、毎月8万円ずつ貯めると、10年間で約960万円になります。さらに年2回の賞与や一時金からも8万円ずつ貯めると、約1,120万円です。同じペースで貯めてきた二人が結婚すれば、2,240万円の貯蓄になります。築年数や立地に強いこだわりがなければ、東京都内でも中古マンションを一括購入することは十分可能です。仮に住宅ローンを利用する場合でも、借入額が少なければ、金利上昇への不安は大きく抑えられます。
【3】 クレジットカードの利用を最小限にする
クレジットカードは便利な反面、「お金を使った感覚」が薄れやすいという欠点があります。請求書を見て初めて、「こんなに使っていたのか」と驚くことも少なくありません。
その結果、分割払いやリボ払いに切り替え、利息を支払うことになります。これを繰り返すと、「あとでリボにすればいい」という危険な思考が定着し、気づけば多額の借金を抱えてしまうこともあります。
ポイント欲しさにカードを多用する方もいますが、ポイントはあくまで「餌」に過ぎません。次の消費を促す仕組みであり、目的にすべきものではありません。「もらえればラッキー」「気づいたら貯まっていた」程度の距離感がちょうどよいでしょう。
私が初めてクレジットカードを作ったのは32歳のときです。当時は電子マネーなどもなく、日常の支払いのほとんどは現金でした。現金で支払うと、「お金を使った」という感覚が強く残るため、支出が膨らみにくくなる効果があります。
若いうちからいきなりクレジットカードを作るのではなく、まずは現金払いを通じて健全な金銭感覚を身につけ、そのうえでクレジットカードを利用する。こうした順序が、無駄遣いを防ぎ、長く安定した家計管理につながると考えています。
■まとめ
人は、一度膨らませてしまった生活水準や支出を、元に戻すことがとても苦手です。バブル期に社会人となった、いわゆる「バブル世代」の方々からは、浪費癖が抜けず、後年になって苦労したという話をよく耳にします。
しかし、その逆もまた真実です。
若いうちに身につけた「お金がたまる習慣」は、そう簡単には崩れません。その習慣は、将来にわたってあなたを守り、選択肢を増やし、人生の自由度を高めてくれます。
お金の不安は、人生の不安につながります。
今、あなたがどのような習慣を身に着けるのかが、とても重要なのです。
あなたが今日、どんな習慣を選ぶのか。
その積み重ねが、10年後、20年後の安心と余裕をつくります。
お金に振り回される人生ではなく、お金を味方につける人生を歩むために、まずは、日々の小さな習慣から見直してみてください。
