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申請してもつながらない在宅介護、先に決めたい三つの視点


●介護はまだ先の話なのか
介護については、まだ先の話だと感じている方が多いのではないでしょうか。親の様子は今のところ落ち着いて見えますし、制度も整っていると聞く機会があります。いざとなれば申請すれば何とかなる、必要な支援は制度の中で自然につながるものとして受け取られてきました。

ところが最近、その前提がそのままでは通りにくい場面が出てきています。

「3か所の施設に電話して、すべて断られました。『新規の受け入れはできません』という説明を何度も聞くことになりました。」

こうした声は、SNSや相談の現場でも目に入るようになっています。論点は、介護が必要になったこと自体よりも、必要になったあとに支援へ「つながる」かどうかへ移っています。

●制度はあっても、支援につながらない局面がある
介護は、申請を行い、要介護認定を受け、その結果をもとにケアマネジャーが計画書(ケアプラン)を作成し、事業所がケアプランに沿って必要なサービスを手配する、という手順で進むものとして受け取られてきました。

しかし現在では、同じ手順を踏んでも、実際の支援に届かない場面が起こり得ます。申請が通るかどうかより、事業所と契約できるかどうかの段階で止まることがあります。制度の上では利用できるとされていても、「今は受け入れられない」「人がいない」と言われることで、支援が始まらない状況が生じます。

背景には、数字として確認できる変化もあります。東京商工リサーチの集計では、2025年の老人福祉・介護事業の倒産は176件で過去最多を更新し、内訳では訪問介護が91件と突出したと報告されています。訪問介護は在宅生活の要になりやすい一方で、移動時間の負荷や短時間訪問の積み重ねが運営負担になっている点が指摘されています。その影響は、利用する側に「つながらない」という形で出てきます。

●支援が止まったときの「穴埋め」
支援がつながらない局面では、負担は家族側でなんとか穴埋めしよう、という話になりやすいです。支援が始まらないと、家族の中で責任を感じる方ほど、「自分が仕事を辞めて対応するしかないのではないか」と考えやすくなります。ただ、その判断が結果として家計に大きな影響を与えることがある点は、先に押さえておきたい論点です。

家計の見通しが崩れやすい要因は、介護にかかる費用そのものよりも、収入が途切れることにあります。支出は調整できても、給与収入が失われると、生活全体のバランスが崩れることがあるためです。

仮の条件を置いた試算では、配偶者が50歳で離職し、10年間介護が続いた想定で、就労継続ケースの65歳時点の貯蓄は約2,200万円、離職ケースは約1,100万円となり、その差は約1,100万円に達したと示されています。条件によって結果は変わりますが、離職で介護費を節約したつもりでも、失う給与収入の方が大きくなり、結果として家計収支が悪化しやすい点は見落とすポイントです。

自分の家計に当てはめる際は、難しく考える必要はありません。確認したい数字は、手取り収入(月額)、仕事を休む・辞めることで増える負担(社会保険・税・住居費など)、介護の「不足分」(在宅・施設それぞれの持ち出し)の三つです。この三つを並べるだけでも、家計が黒字で回るのか、赤字で貯蓄を削るのかが見えるようになります。

●つながらない前提での三つの視点
「申請すれば支援が受けられる」と考えているだけでは、現実とのずれに戸惑うことがあります。制度を知ることに加えて、実際につながる状態をどう作るか、という視点が必要になります。ここでは三つの視点として整理します。

一つ目は、一つの支援先だけに頼らないという視点です。通所型の支援と短期間の宿泊支援(ショートステイ)を組み合わせるなど、複数の選択肢を持っておくことで、どれかが使えなくなった場合にも対応しやすくなります。保険外サービス(家事代行、配食、見守りなど)も選択肢になります。

二つ目は、支援にかかる費用を抑えることよりも、収入を保つことを優先するという視点です。費用は調整できても、収入が途切れた場合の影響は大きくなりがちです。その場の対応ではなく、方針を先に決めやすくなります。

三つ目は、介護休業を日々の対応に使うのではなく、体制を整えるための時間として使うという視点です。役所や地域包括支援センターへの相談、事業所との調整、契約、緊急時の連絡体制、家族内の役割分担を先に整えておくことで、負担が一人に集中しにくくなります。

対応が難しいと感じた場合には、相談先を一段ずつ広げていくことも選択肢になります。相談する側はまずケアマネジャーへ相談し、次に地域包括支援センターへ相談し、それでも難しければ市町村の担当窓口へ相談できます。その際、相談する側が「どこに、いつ連絡し、どの理由で断られたか」を記録として残しておくと、状況を共有しやすくなり、相談の精度も上がりやすくなります。

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