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コラムColumn

  • 2022.07.07
  • 関口 輝

不妊治療に立ちはだかる仕事との両立


2022年4月から、一般不妊治療に併せ生殖補助医療も保険適用になりました。治療を受ける人の経済的負担は軽減されたものの、これですべての課題が解消されたわけではありません。厚生労働省の「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」をもとに、解消されない課題について理解を深めてみましょう。

◆仕事との両立には課題が多い
この調査によれば、不妊治療の経験がある人のうち、仕事との両立ができずに退職した人は16%、不妊治療をやめた人は11%でした。雇用形態を変えた人まで含めると、両立ができないと回答した人は35%にも上ります。

両立ができないのは「精神面、体調、体力面の負担が大きいため」や「通院回数が多いため」といった治療に起因する理由が多いものの、「職場の理解やサポートが得られない」「職場が長時間労働のため」「仕事の日程調整が難しいため」のように、職場環境に起因する回答もあります。

◆職場と周囲の理解不足
こういった実態を、職場や周囲の労働者はどの程度まで把握しているでしょうか。
同じ調査では、労働者が不妊治療に関する実態(治療を受けている夫婦の割合や生殖補助医療による出生数、通院の頻度や治療の副作用など)を知っているかどうかや、企業が不妊治療を受けている従業員を把握しているかどうかも公表しています。

実に約8割の労働者が不妊治療に関する知識を持ち合わせておらず、約7割の企業が不妊治療を受けている従業員の存在を把握していません。把握していると回答した約3割の企業のうち6割近くは「不妊治療を受けている従業員はいない」と回答していますが、これすらも、知らないだけではないかと勘繰りたくなります。

◆治療を受ける人が望むこと
不妊治療と仕事の両立に向けて、治療を受ける人の職場への希望にも調査は及んでいます。
それによると、「不妊治療のための休暇制度」や「柔軟な勤務を可能にする制度」といった制度整備を望む意見が多く挙がっています。一方で、「有給休暇など現状の制度を取りやすい環境作り」や「上司・同僚の理解を深めるための研修」のように、働く人を含めた職場環境の改善を望む声もあります。
いくら制度を整えてみたところで、運用する組織や働く人がそれを受け入れられなければ状況は何も変わらないという、この課題の本質を表しているといえます。

◆企業による両立支援の促進
こういったことからも、厚生労働省は2022年4月、不妊治療と仕事との両立に係る認定制度「くるみんプラス」を創設し、企業が認定取得を目指して両立支援に取り組むよう促進しています。若い労働者が、働きやすさを重要視する世の中ですから、企業にとって認定を受けるメリットは少なくないはずです。
また、事業主や人事部門向けの冊子「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」や、職場の上司や同僚向けには「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」を作成しています。

こういった取り組みの意義は、「結果として何人の子どもを授かったのか」を競い合うことではないと考えます。大切なのは、「子どもを欲しいと願う人がしっかり治療に向き合える社会にしていくこと」ではないでしょうか。世の中全体をすぐに変えるのは難しいとしても、自分の職場や一緒に働く仲間の環境を改善するのは、今すぐに始められるはずです。

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