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親族が後見人になる際の注意点


成年後見人に関して、「身近な親族を選任することが望ましい」との考え方が最高裁判所から示されたことに続き、後見人に支払われる報酬を業務量や難易度に応じた金額とするよう、全国の家庭裁判所に促す通知が出されたようです。認知症患者の増加に比べ後見人の活用が進まない現状を変えることになるのでしょうか。

■親族が後見人になる割合は3割以下
認知症等により判断能力が失われた人の生活や権利、財産管理等をどのように守っていくかは、大きな課題です。特に、ひとり暮らしの高齢者等が自分で判断できないまま必要のない出費を続けてしまうことは、大切な財産を減らしてしまうという点で、親族にとっても深刻な問題といえます。
認知症に限らず、知的障害や精神障害などの理由によって判断能力が不十分な方に対する権利擁護の仕組みの1つが成年後見制度で、保護者としての「後見人」をつけることができます。ただ、親族が後見人に選ばれるとは限らないため、利用を控える傾向があるようです。
最高裁判所事務総局家庭局がまとめた「成年後見関係事件の概況」によると、2018年の成年後見の申し立て件数は36,549件で、申し立てを行うのは、子が一番多く(24.9%)、子を含んだ親族による申し立てが全体の59.7%を占めます。一方で、親族が後見人として選任される割合は23.2%となっており、前年の26.2%からさらに減少しています。これは、後見人となった親族が、自分の財布との区別をせず、被後見人のお金を好き勝手に使ってしまうことが問題視されたからです。身の回りのお世話は良いとしても、財産管理は専門家などの第三者に委ねる方が安心だというわけです。

■後見人への報酬
専門家が後見人になると、状況に応じた報酬の支払いが必要となります。この金額は法律等の規定があるわけではなく、財産状況等に応じて家庭裁判所が決定します。成年後見人が、通常の後見事務を行った場合の基本報酬の目安は月額2万円とされていますが、預貯金等の金融資産が多い場合、例えば5,000万円を超える場合には基本報酬額が月額5~6万円となっています。
もちろん、専門家は「業務」として行うわけですから、相応の報酬は必要でしょう。問題なのは、日常生活の中で被後見人を支えているのは親族であることが多いにも関わらず、財産管理をしている専門家が業務の多少に関係なく定額の報酬を受け取っていることに、納得できない親族が多いという現実です。
こうした不満が多かったことが、今回の最高裁判所の方針変更につながったのでしょう。

■親族が後見人になる際の注意点
さて、日常生活のサポートという点でも、子を中心とした親族が後見人になるケースが増えることは望ましい傾向と思います。ただし、その場合に注意を要するのは、財産管理の状況を見えなくしないということです。
成年後見人は、全面的な財産管理権、代理権を持ち、また日常生活に関する行為を除き本人のしたすべての行為について取り消しや追認することができます。そのため、判断能力の無い親の財産を好き勝手に使ってしまうという問題が起こりがちです。

例えば、母と3人の子(長女、二女、長男)の家族で、認知症を患った母親の財産管理のため長男が後見人となったケースで考えましょう。
母親と同居を始めた長男一家は、母親と家族旅行に行くことが増え、その旅行費用のほとんどを母親の財産で賄っていた場合、その事実を後から知った長女と二女が「よくわかっていないお母さんを利用している」と思い、不信の目を向けるかもしれません。
こうした事態を防ぐためには、正確な記録と情報の共有が有効です。旅行前に「母親が旅行に行きたがっている。その費用も自分が払うと言っているのだけどどうしよう」という相談をしておけば、後になって「お母さんのお金を使って勝手に旅行に行った」と非難される可能性は少なくなるのではないでしょうか。

成年後見人に就任すると、財産目録の作成のほか、おおむね半年から1年に1回、家庭裁判所の指示に従って報告をする必要があるため、こうした書類を他の親族も共有しておき、定期的にチェックする体制を築いておくことは、不正を防ぐために最低限必要となるでしょう。客観的な事実の積み重ねと、こまめなコミュニケーションこそが、何よりの対策になるのです。

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