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古い車こそ車両損害補償に入るべき理由

「古い車だから、車両損害補償はいらない」と考える方は少なくありません。車の時価額が低くなれば、事故で失う財産価値も小さくなるため、一見すると合理的な考え方に思えます。しかし、車両損害補償へ加入する目的を「車の価値を守ること」ではなく、「事故後の示談交渉から免れること」と考えると、むしろ古い車ほど加入する価値が高くなる場合があります。

(1)車の価値が下がっても修理費用は下がらない
自動車は年数が経過すると時価額が下がります。しかし、事故による修理費用まで同じように下がるわけではありません。例えば、時価額30万円の車でも、ドアやバンパーなどを損傷すれば修理費用が30万円かかることがあります。部品代や板金・塗装などの費用は、その車が新しいか古いかではなく、損傷した箇所や程度によって決まるからです。

さらに古い車では、設定される車両損害補償の金額も低くなるため、中程度の損傷でも修理費用がその金額を上回り、「全損」として扱われることがあります。これを経済的全損といいます。つまり、車の価値は下がっても、事故で必要となる修理費用まで同じように下がるわけではありません。

(2)新しい車なら多少の自己負担でも直したい
相手のある事故では、過失割合によって相手から受け取る損害賠償額が変わります。修理費用30万円の事故で、自分は過失割合を「自分10:相手90」と考えているのに対し、相手方が「自分30:相手70」と主張しているとしましょう。

車両損害補償に加入していない場合、単純化すると、自分の過失割合が10なら自己負担部分は3万円ですが、自分の過失割合が30なら9万円になります。新しい車であれば、「せっかく買った車だからきれいに直したい」「まだ長く乗りたい」という気持ちが強いため、多少の自己負担が生じても修理を優先できます。そのため、過失割合に多少の不満が残っていても、一定のところで折り合いを付ける余地があります。

(3)古い車ほど過失割合で譲れなくなる
ところが古い車では事情が異なります。「この古い車を直すために9万円も自分で払いたくない」という気持ちが生じやすくなるからです。車そのものの価値が低くなっている一方、修理費用はそれほど安くなっていません。このため、自己負担額への抵抗感が相対的に大きくなります。

「自分の過失割合が10なら3万円だから仕方がない。しかし、自分の過失割合が30で9万円を払うのは納得できない」となれば、過失割合そのものを譲ることが難しくなります。その結果、古い車ほど過失割合で譲れなくなり、示談交渉が長引く可能性が高くなります。

(4)車両損害補償は示談交渉から免れるための補償
ここで役に立つのが車両損害補償です。車両損害補償を付帯していれば、自分の車の損害については、契約している車両損害補償の金額を上限として、自分の過失部分を含めて補償を受けられます。相手の過失部分については、その後、補償団体が相手方へ求償します。

そのため、自分の車をどうするのかについて、「自分10なのか、自分30なのか」という示談の結論が出るまで待つ必要性が小さくなります。車両損害補償に加入する大きな価値は、単に修理費用を補償してもらうことではありません。自分の車の損害を相手との示談交渉から切り離し、過失割合にこだわる必要をなくすことにあります。

(5)古い車は免責金額を高めに設定する
古い車に車両損害補償を付帯する場合は、免責金額を高めに設定して掛金・保険料を抑える方法も合理的です。免責金額とは、事故で車両損害補償を利用する際に、自分で負担する金額のことです。例えば免責金額を10万円に設定していれば、分損事故では原則として10万円までが自己負担になりますが、その分だけ普段の掛金・保険料を安くできます。

古い車は車両損害補償の金額が低いため、中程度の損傷でも経済的全損になりやすくなります。全損となれば免責金額は適用されないため、普段の掛金・保険料を抑えながら、大きな事故では契約している車両損害補償の金額を受け取れます。また、軽いへこみや擦り傷であれば、古い車では走行に支障がない限り修理しないという選択もしやすいため、少額損害で車両損害補償を利用する機会そのものが少なくなります。

さらに、前述の修理費用30万円の事故で免責金額を10万円に設定していた場合、過失割合が「自分30:相手70」なら相手方からの賠償金は21万円、「自分10:相手90」なら27万円です。相手方からの賠償金は免責金額へ先に充当されるため、いずれも10万円を上回り、免責による自己負担は生じません。

このように、古い車では免責金額を高めに設定して掛金・保険料を抑えながら、大きな事故や示談交渉に備えて車両損害補償を残しておく方法を検討する価値があります。

新しい車は、多少お金を出してでも直したいと思えます。一方、古い車は、そんなにお金を出してまで直したくありません。だからこそ古い車のほうが自己負担額に敏感になり、過失割合で譲れなくなります。

「古い車だから車両損害補償はいらない」のではありません。古い車だからこそ、契約時に免責金額を設定して掛金・保険料を抑えながら、事故後の示談交渉から免れるために車両損害補償へ加入しておく価値があるのです。

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