コラムColumn
執筆者プロフィール
- ファイナンシャル・ジャーナリスト
- LIFE MAP,LLC代表
- 2026.08.20
- 投資
毎月分配型の投資信託が20代に人気の理由(わけ)
今年(2026年)4月の日本経済新聞に「毎月分配型投信、危うい活況、資金流入9年ぶり1兆円超え」という記事が載っていました。
「毎月分配型の投資信託に個人マネーが殺到している。2025年の資金流入額は9年ぶりに1兆円の大台を超えた。元本を取り崩す商品設計が長期の資産形成にそぐわないとして金融庁が問題視してきたものの、投資家層は高齢者だけでなく若者にも広がりつつある」
毎月分配型投信の人気は根強いものがあるため、そのこと自体にはさほど驚きはなかったものの、気になったのは「資産運用業協会が26年3月にまとめた報告書によると、毎月分配型の保有者は70代が4割で最多だった。次いで多かったのは20代」という部分です。
そこで、おおもとの「投資信託に関するアンケート調査報告書-2025年(令和7年)」(2026年3月、資産運用業協会)を確認してみました。すると、毎⽉分配型投信の保有率は29.6%で年々減少傾向にありますが、世代別にみると、20代の保有率が34.0%と70代(44.1%)に次いで⾼いという結果が示されていました。
20代では毎月分配型の魅力として「⼀部払戻しの分配⾦であっても、収⼊を補完する上で活⽤できる」が他世代に比べて高くなっています。お小遣い感覚で受け取っている人も多いのかもしれません。
20代、30代の現役世代が資産形成を目的として、投資を始めるなら、運用益が非課税になるNISA口座を優先的に活用するのが定石です。しかし、「毎月分配型」の投資信託はNISAの「つみたて投資枠」「成長投資枠」ともに対象外です。20代の人がNISAの年間非課税投資枠360万円をすべて使い切った上で、課税口座で毎月分配型を買っているとも思えません。販売会社の売れている投信のランキングなどをみて購入しているのでしょうか。
●分配金は預金の利息とは違う
分配金は預金の利息とは違います。
投資信託にも、会社と同じように決算日があります。分配金は投信の決算が行われたときに投資家に支払われるお金です。毎月分配型と呼ばれる投信は毎月決算を行うタイプで、決算のたびに分配金を支払うタイプの商品のことをさします。分配金については誤解されている部分もあるので、基本的なことを押さえておきましょう。
・分配金は必ずしも収益から支払われるとは限らない
・分配金の一部、または全部が投資した資金(元本)から払い出される場合がある
・分配金は運用資産(純資産総額)から払い出されるので、分配金を支払えば運用資産はその分減り、基準価額もその分下がる
そもそも、毎月お給料を受け取っていて、今すぐにお金を生活費として使う予定がない現役世代の人たちが毎月分配型の投信を買う必要はありません。頻繁に分配金を出すと、運用益を再投資することによる複利効果が薄くなりますし、課税口座では普通分配金を受け取るたびに約20%の税金が差し引かれます。
同報告書では「投信保有者において、(毎月分配型投信を買う)主な理由は『安⼼感』や『利益の確保』である」との指摘もありました。もし、毎月分配されるお金が必要と感じるのであれば、収入のうち適正な金額を超えて『運用に回しすぎではないか』と疑ったほうがいいかもしれません。適切な積み立て投資額を再検討し、分配金に頼ることなく、コツコツ投資を続けていってほしいです。
●投資信託の特徴認知
同調査では投資信託の特徴についても聞いていますが、20代では「ポイントで投資信託に投資/運用できる」以外のすべての特徴項目において、認知の割合が他年代と⽐べて低くなっています。主な項目は以下の通りです。
・元本保証ではない
・価格変動と、外国に投資するものには為替リスクがある
・過去の実績は将来のリターンを保証するものではない
・銀行など、証券会社以外の金融機関でも購入できる
・NISAやDCで投資信託が購入できる
・購入時手数料の有無や金額は販売会社によって異なる
・投資信託は、運用会社が運用している
・複数の株式を組み入れる投資信託はリスクを分散できる
・投資信託は、保有期間中の費用に加えて、解約時にも費用がかかるものがある
・投資信託は信託銀⾏で、⾃⾏と顧客の資産を分けて保管・管理されている
「この中で知っているものはない」が20代では「46.4%」を占めていました(全世代では33.8%)。企業型確定拠出年金の加入者に対しては、制度導入時に研修がありますが、それ以外の人は投資信託について学ぶ機会がない(あるいは少ない)のかもしれません。
最近はSNSなどで「〇〇(特定の商品)を買っておけば大丈夫」といったコメントも目立ちます。いきなり特定の商品を選択するところから入るため、投資信託のしくみや特徴については知らない人が多いように感じます。それが20代の毎月分配型の購入にも結び付いている気がします。
投資信託という器がどんなものなのか、自分のお金が投資信託を通して、どこの、何に投資しているのか、だれが、どのように運用しているのか、少しだけ関心を持ってほしいと感じました。そして、1冊でもいいので、投資信託について書いてある本を読んでみてはどうでしょうか。