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執筆者プロフィール
- CFP ファイナンシャル・プランナー
- 生活経済研究所長野 所長
- 2026.08.06
- ライフプラン
公務員の退職金は条例で計算できる
「定年まであと数年。退職金は、結局いくらになるのだろう」
地方公務員として長年勤めてきた方であれば、一度は考えることでしょう。自治体の例規集には多くの条文と見慣れない用語が並びますが、退職日の給料月額、勤続期間、退職理由、職務上の区分が分かれば、条例の数値を使って具体的な退職手当を計算できます。
本稿では、札幌市、横浜市、金沢市、大阪府、広島市、福岡市の6自治体を取り上げ、全国共通の部分と自治体によって異なる部分を見ていきます。
●退職後に受け取る給付は二つある
地方公務員が退職後に受け取る主な給付には、勤務している自治体(以下、当局)から支給される「退職手当」と、共済組合から支給される「退職等年金給付」があります。一般に「退職金」と呼ばれるのは前者で、原則として一時金です。後者のうち退職後に受け取る退職年金は、一般に「年金払い退職給付」と呼ばれます。
●退職手当は「基本額+調整額」
退職手当は、地方自治法と地方公務員法を根拠として各自治体が条例で定めています(注1)。
退職手当額=基本額+調整額
基本額は退職日の給料月額、勤続期間、退職理由を反映し、調整額は在職中の職務や役職などを反映します。条例は第1条から読む必要はなく、「一般の退職手当」「基本額」「調整額」「勤続期間の計算」「給料月額が減額された場合の特例」の順に探すと確認しやすくなります。
●代表的な支給率は6自治体で一致
基本額は、原則として退職日の給料月額に支給率を掛けて計算します。支給率とは、給料月額の何か月分を基本額とするかを示す数字です。今回の6自治体では、代表的な支給率が一致していました。
勤続20年 自己都合19.6695月/定年等24.586875月
勤続25年 自己都合28.0395月/定年等33.27075月
勤続35年 自己都合39.7575月/定年等47.709月
一般職の現行制度では、全国共通の調整率83.7%が反映されています(注2)。勤続35年の定年等退職は、調整前の57月に83.7%を掛けた47.709月です。
57月×83.7%=47.709月
退職日給料月額が40万円なら、基本額は次のとおりです。
40万円×47.709月=1,908万3,600円
代表的な支給率に地域差はなく、自治体差が表れやすいのは調整額です。
●給料が7割でも退職手当が3割減るわけではない
定年年齢の段階的な引上げに伴い、60歳に達した日後の最初の4月1日以降の給料月額は、当分の間、原則として60歳前の7割水準になります。「退職日の給料月額が7割なら、退職手当も3割減るのではないか」と不安になるのも当然です。
しかし、条例には減額前の高い給料月額を計算に残す特例があります。減額前の最も高い給料月額を「特定減額前給料月額」といい、減額前までの支給率はこの金額で計算します。減額後の給料月額を使うのは、その後に増えた支給率の部分だけです(注3)。
例えば、60歳前40万円、60歳以降28万円で、60歳時点ですでに支給率の上限47.709月に達している場合は、次のようになります。
60歳まで 40万円×47.709月=1,908万3,600円
60歳以降 28万円×(47.709月-47.709月)=0円
合計 1,908万3,600円
退職日の28万円だけで計算すると1,335万8,520円ですが、実際には基本額全体が3割減るわけではありません。60歳時点で上限に達していない場合も、60歳以降に増えた支給率だけを減額後の給料月額で計算します。
●調整月額は自治体で異なる
調整額は、職務の級や役職などに応じた「調整月額」のうち、原則として高い月から60月分を合計します。今回の6自治体では、0円を除く区分数が6区分から10区分、第1号区分は65,000円から95,400円まで異なりました。
札幌市は10区分で第1号区分95,400円、広島市は6区分で65,000円です。横浜市は95,400円の9区分、大阪府は78,750円の9区分、福岡市は70,400円の8区分、金沢市は65,000円の7区分でした。
第1号区分を60月適用すると、札幌市は572万4,000円、広島市は390万円で、差は182万4,000円です。ただし、各自治体の第1号区分が同じ役職や職責を表すわけではありません。
●条例の数値から計算する
退職日給料月額40万円、勤続35年の定年等退職で、6自治体すべてにある43,350円の区分を60月分適用すると、次のようになります。
基本額 40万円×47.709月=1,908万3,600円
調整額 43,350円×60月=260万1,000円
合計 2,168万4,600円
各自治体の第1号区分を60月分適用したと仮定した合計額は、札幌市・横浜市2,480万7,600円、大阪府2,380万8,600円、福岡市2,330万7,600円、金沢市・広島市2,298万3,600円です。これは同じ役職同士の比較ではなく、条例から具体額を算出できることを示した例です。
なお、休職、育児休業、停職、派遣などの期間をどこまで勤続期間に算入するか、1年未満の端数をどう扱うかは自治体によって異なります。また、退職手当事務を総合事務組合などが処理する自治体もあります。条例が見つからない場合は、人事担当課に適用される条例を確認します。
●年金払い退職給付も確認する
年金払い退職給付は、2015年10月に従来の共済年金の職域部分に代わって設けられました。本人と当局が折半して負担する掛金を積み立て、その「給付算定基礎額」に応じて給付額が決まります。
退職年金は、原則として半分が生涯受け取る終身年金、残り半分が有期年金です。有期部分は20年、10年または一時金から選べます。
ねんきん定期便に似た「給付算定基礎額残高通知書」が毎年送られ、その時点までの積立額を正確に確認できます。ただし、記載額は将来の年金年額そのものではありません。受給開始は原則65歳で、受給には本人の請求が必要です(注4)。
●条例は金額まで計算できる資料
6自治体では基本額の代表的な支給率が一致する一方、調整月額には違いがありました。また、60歳以降の給料月額が7割水準になっても、基本額全体が3割減るわけではありません。
退職手当条例は、制度の考え方だけでなく具体的な見込み額まで計算できる資料です。まずは適用される条例を開き、「基本額」「特定減額前給料月額」「調整額」「調整月額」を確認するところから始まります。
注1 地方自治法による支給根拠と、地方公務員法による国、他団体、民間との均衡原則
注2 2017年の官民比較を受け、2018年から調整率を87%から83.7%へ引き下げ。地方公務員にも国に準じて反映
注3 減額前の給料月額で減額前までの支給率を計算し、減額後の給料月額で増加分を計算する特例
注4 給付算定基礎額残高を毎年通知。受給開始は原則65歳。有期部分は20年、10年または一時金
