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夫婦の年金は離婚でどう変わる


●年金額そのものを半分にする制度ではない
離婚時には、婚姻期間中に形成された厚生年金記録を夫婦間で分ける「年金分割」という制度があります。離婚時の年金分割でよくある誤解は、「配偶者の年金の半分が、そのまま自分の年金になる」という思い込みです。年金分割という言葉からは、すでに受け取っている、あるいはこれから受け取る年金額を夫婦で半分に分けるように思えるかもしれません。しかし、実際に分けるのは年金額そのものではなく、将来の老齢厚生年金を計算するもとになる記録を、対象となる期間や働き方に応じて分ける制度です。

確認するポイントは、次の3つです。
①配偶者の年金見込額はいくらか
②その年金のうち、どの部分が分割対象になるのか
③どの期間の記録が対象になるのか
年金見込額だけを見て判断すると、「もっと多くもらえるはずだった」という思い違いにつながりやすくなります。

●分割対象は厚生年金記録
公的年金は大きく分けると、全国民共通の土台となる老齢基礎年金と、会社員や公務員、団体職員として働いた期間に応じて上乗せされる老齢厚生年金があります。

老齢基礎年金は、本人自身の国民年金の加入記録をもとに計算される年金です。そのため、離婚時の年金分割によって配偶者へ移りません。

老齢厚生年金は、年金分割の対象です。会社員や公務員、団体職員として働いた期間の給与や賞与の記録をもとに計算されます。年金分割で対象となるのは、この老齢厚生年金に反映される記録です。なお、老齢厚生年金には、一定の要件を満たす配偶者や子がいる場合に加算される加給年金があります。加給年金は、年金分割で扱う厚生年金記録とは別に考えます。

●結婚前と離婚後は対象外
老齢厚生年金に関係する記録のうち、原則として対象になるのは、婚姻期間中に形成された厚生年金記録です。結婚前に一方が長く働いて積み上げた記録や、離婚後に新たに働いて形成される記録は対象から外れます。

この点は、実務上とても重要です。たとえば、配偶者の年金見込額が大きく見えても、その多くが結婚前の勤務期間に基づくものであれば、離婚時の年金分割で動く部分は限られます。逆に、婚姻期間中に一方が会社員や公務員、団体職員として働き、もう一方が家事・育児などを担っていた期間が長い場合には、分割の影響が大きくなることがあります。見るべきなのは、配偶者の「年金額」そのものよりも、その年金を作っている記録が「いつ形成されたものか」です。

●共働きか扶養期間ありかで変わる
年金分割は、婚姻期間中の働き方によって扱いが変わります。大きく分けると、共働き期間などを話し合いで整理する「合意分割」と、相手の合意がなくても一方の請求で進められる「3号分割」があります。共働きで、夫婦それぞれに厚生年金の加入歴がある期間は、原則として合意分割で整理します。一方、会社員や公務員などに扶養されていた専業主婦(夫)などの期間は、条件を満たせば3号分割の対象になります。

合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録について、夫婦の話し合いや家庭裁判所の手続きによって分け方を決める制度です。共働き期間がある夫婦や、夫婦ともに厚生年金の加入歴がある夫婦では、この合意分割が関係します。分け方は自由に何割と決めるものではなく、対象となる厚生年金記録について、制度上定められた範囲内で按分割合を決めます。共働き期間は、一方の請求だけで自動的に2分の1になる仕組みとは異なります。

3号分割は、会社員や公務員などの配偶者に扶養され、第3号被保険者だった期間に関係する制度です。ここでいう第3号被保険者とは、会社員や公務員などの配偶者に扶養され、自分では厚生年金に入らずに国民年金に加入していた方を指します。平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間については、相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できます。この期間は、相手方の合意を得ずに一方の請求で進められます。

専業主婦(夫)だった期間のうち、3号分割で扱えるのは平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間です。平成20年4月1日前の期間や共働きだった期間は、3号分割だけでは整理できないことがあります。そのため、共働き期間がある場合は合意分割、扶養に入っていた期間がある場合は3号分割、両方が混在している場合は合意分割と3号分割の両方を確認する必要があります。

●情報提供請求で対象期間を確認する
ここまでの整理をしても、実際の対象期間や分割後の見込額は、本人の記憶だけでは判断できません。年金事務所等で「年金分割のための情報提供請求」を行うことで、分割の対象となる期間や按分割合を定めるための情報を確認できます。

年金分割には請求期限もあります。原則として離婚等をした日の翌日から5年以内に請求する必要があり、令和8年4月1日前に離婚等をした場合は2年以内とされています。離婚を具体的に検討している場合は、年金見込額の大きさだけで判断せず、まず対象期間と請求期限を確認してください。

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