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企業型確定拠出年金やiDeCoはどう変わる?


2024年12月20日に「令和7年度税制改正大綱」が公表されました。その中に確定拠出年金(企業型確定拠出年金とiDeCo=個人型確定拠出年金)に関する改正案が記載されています。まだ正式決定ではありませんが、改正点についてまとめておきます。

(1)企業型確定拠出年金(企業型DC)の改正点
まずは企業型DCの改正点です。

●拠出限度額の引き上げ
企業型 DC の拠出限度額が額5万5000円から7000円引き上げられ、6万2000円となります。具体的には、企業型DCのみの場合には月額6万2000円が上限となり、確定給付企業年金制度にも加入している場合には「月額 6万2000円から確定給付企業年金ごとに決まっている他制度掛金相当額を差し引いた金額」にとなります。

●会社の掛金を超えてマッチング拠出ができるように
企業型 DC では事業主の掛金に上乗せして、個人が掛金を上乗せできるマッチング拠出(企業型年金加入者掛金)を導入している会社もあります。これまで①事業主掛金とマッチング拠出の総額が拠出限度額(従来は5万5000円。改正で6万2000円に)を超えないこと、②マッチング拠出の額が事業主掛金を超えないこと、という2つの要件がありました。

今回の改正では②が廃止されます。例えば、これまでは会社の掛金が5000円だと、自分で上乗せできる掛金も5000円が上限でしたが、今回はそうした要件がなくなります。そのため、改正後の6万2000円の枠が余っていたら、会社の掛金を超えた金額を、個人が上乗せできるようになります。企業型DCは口座管理手数料もかかりません(通常会社が負担)。企業型DCとiDeCoを併用していた人も、企業型DCひとつにまとめて口座管理をシンプルにするという選択肢もあります。

(2)iDeCo(個人型確定拠出年金)の改正
次にiDeCoにかかわる改正です。

●拠出限度額の引き上げ
iDeCoの掛金の上限額が引き上げられます。これは企業年金も含めた会社員の非課税枠合計を月5万5000円から月6万2000円に引き上げる、というものです。

これにより、DBなど他制度掛金相当額、企業型DCの事業主掛金、そしてiDeCoの掛金の合計が6万2000円以内であればよい、ということになりました。

これまでは全体の枠のほか、例えば、企業年金ありの会社員・公務員のiDeCo掛金は最大月2万円まで、というようにiDeCo独自の上限も設けられていました。今回は全体の枠を5万5000円から7000円引き上げて6万2000円にするだけでなく、”穴埋め型”とすることで、iDeCo独自の枠をなくし、残った枠を埋めていくことができるようになります。

そのため、多くの人はiDeCo掛金の上限額が増えますが、中でも、企業年金のない会社員は月額2万3000円から6万2000円へと大幅に上限額がアップします。公務員も、例えば国家公務員・地方公務員は他制度掛金相当額が8,000円ですので、月額5万4000円が上限となります。

<拠出限度額の変更点>
①自営業などの第1号被保険者
月額6万8000円→月7万5000円に引き上げ(国民年金基金との合計)

②企業年金のある会社員と公務員
月額5万5000円-(各月の企業型DCの事業主掛金+DB等の他制度掛金相当額)
*ただし2万円が上限
→月6万2000円-(各月の企業型DCの事業主掛金+DB等の他制度掛金相当額)
*2万円の上限なし

③企業年金のない会社員
月額2万3000円→月6万2000円に引き上げ

●加入年齢の引き上げ
現状、iDeCoの加入年齢は「65歳未満」ですが、「70歳未満」に拡大されます。つまり、70歳になるまで新規の掛金で積み立てを行うことが可能になります。
対象はiDeCoに加入していた人、またはiDeCoに企業年金の資産を移喚できる人で、老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金を受給していない場合に限られます。つまり、これまで加入していた人は延長ができる、ということです。

(3)老齢給付金を一時金で受け取る際の退職所得控除の取り扱い
iDeCoは課税の繰り延べる制度であるため、受取時は課税が原則です。ただし、老齢一時金で受け取る場合には退職所得控除、分割で受け取るときには公的年金等控除の対象になります。老齢一時金で受け取る場合、運用資産(元本含む)から退職所得控除を差し引いた金額の2分の1に対して課税されるしくみです(分離課税)。積み上げてきた資産から差し引ける「退職所得控除額」は、加入年数に応じて決まり、20年までは「1年あたり40万円」、20年を超えると「1年あたり70万円」ずつ控除額(=差し引ける額)がふえていきます。

ただし、退職所得控除はiDeCo単独で使えるわけではなく、一定期間内に退職一時金や企業年金を一時金で受け取ると退職所得控除の枠を共有するというルールになっています。

例えば、前年以前 4 年内に他の退職金などの支払を受けている場合には、退職所得控除額の計算する際に、過去に支払を受けた退職金などと退職所得控除の枠を共有することになります。改正では「退職所得控除の計算における勤続年数等の重複排除の特例」の縮小をうたっていて、これまで前年以前「4年内」とされていたものが前年以前「9年内」に変更されます(企業型DCやiDeCoを後で受け取る場合には、前年以前19年さかのぼって退職所得控除の枠が共有されます)。

例えば、60歳のときにiDeCoで運用してきた資産を老齢一時金として受取り、退職一時金やDBの一時金を(5年以上あけて)65歳以降に受給すると、それぞれで退職所得控除の枠を使うことができましたが、この手法は使えなくなります。このケースでは、10年以上間をあけて70歳以降に受給すれば可能です。

もともと退職金がない・少ない、企業年金がないという会社員の方にはさほど影響はありませんが、退職金一時金が多い、複数の企業年金に加入しているなど、退職給付が手厚い会社員は受け取る順番や受け取り方を検討する必要がありますし、NISAを優先して活用するという選択肢もあるかもしれません。

※2024年12月末時点の情報を元にまとめたもの。実際の改正には改正法案が2025 年の通常国会に提出され可決・成立する必要があり、詳細は変わることがあります。確定拠出年金の拠出限度額の引上げに係る施行期日は現時点では不明です。

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