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執筆者プロフィール
- CFP認定者
- 1級FP技能士
- 1級DCプランナー
- 住宅ローンアドバイザー
- 確定拠出年金教育協会 研究員
- アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師
- 2025.01.09
- ライフプラン
2025年は新iDeCoに期待!マッチング拠出の変更もメリット大
さあ、2025年が始まりました!
昨年は、新NISAのスタートが大きな話題になりましたね。今年は、iDeCo(個人型DC)を中心としたDC(確定拠出年金)制度の拡充に注目が集まりそうです。まさに、新iDeCoの年とも言えるでしょう。
2025年1月9日の時点ではまだ確定ではありませんが、昨年末に公表された令和7年度税制改正大綱によって見えてきた新iDeCoの方向性について、注目ポイントをまとめたいと思います。
【変更点① iDeCoの加入年齢が「最大65歳未満」から「最大70歳未満」に】
すでに企業型DCでは、2022年5月から「最大70歳未満」に加入可能年齢が引き上げられていましたので、iDeCoのほうも「最大70歳未満」に揃える方向のようです。
現行のiDeCoの加入可能年齢は、原則は60歳未満で、65歳未満まで加入できるのは、厚生年金加入者か、国民年金の任意加入被保険者だけでした。
改正案では、60歳以上70歳未満で現行のiDeCoに加入できなくなっていた人でも、「iDeCoをやっていた人」または「私的年金の資産をiDeCoに移換できる人で、老齢基礎年金やDCの老齢給付金を受け取っていない人」であれば、70歳になるまでiDeCoに加入できます(=iDeCoへの積立を続けられる)。
したがって、勤務先の企業型DCの規約の関係で、60歳まででDCへの積立が終わってしまった人でも、iDeCoのほうで70歳まで積立を続けられるようになりそうです。65歳や70歳まで働くことが普通になりつつある現状からすると、掛金の全額所得控除という税制優遇を70歳まで受けられる新iDeCoは期待大です。
【変更点② iDeCo掛金限度額の引き上げ】
もともとiDeCoの掛金限度額は、その人の状況によって異なります。以下、条件ごとに見ていきましょう。
(1) 国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者も含む)
いわゆる自営業者やフリーランス、20歳以上の学生などが該当します。
掛金限度額は、現行が月額6.8万円(国民年金基金の掛金と合算した限度額)ですが、改正案としては、7,000円ほど引き上げられ、月額7.5万円になる方向です。
(2)企業型DCや企業年金(DB)等のない会社員
主に中小企業の会社員などが該当します。人数的には半数以上の会社員が該当するはずです。
掛金限度額は、現行が月額2.3万円ですが、改正案としては、月額6.2万円まで引き上げられる方向です。
年間ベースで見ると、27.6万円から74.4万円と、50万円近い引き上げです。まだ新NISAのつみたて投資枠(年間120万円)には届かないとはいえ、全額所得控除になるiDeCoの掛金限度額の大幅引き上げは、歓迎すべきでしょう。
さらに、70歳まで加入可能年齢が引き上げられることを考えると、iDeCoに積み立てられる金額がかなり増えることになります。
例えば、55歳からiDeCoを始めたとすると、現行制度では65歳までで積み立てられる金額(元本)は、276万円(=月額2.3万円×12ヵ月×10年)にすぎませんが、改正案だと積み立てられる金額(元本)が、1,116万円(=月額6.2万円×12ヵ月×15年)まで、約4倍に膨らむのです。当然ながら、掛金の全額所得控除という節税効果も約4倍になります。
(3)企業型DCや企業年金(DB)等にも加入している会社員
主に大企業の会社員などが該当します。
掛金限度額は、現行が「月額2万円」または「月額5.5万円-DB等の掛金額」のどちらか少ない金額となっています。これが改正案では、「月額6.2万円-DB等の掛金額」となる方向です。
DB等の掛金額が少ない人にとっては、月額2万円という上限もなくなるので、iDeCoの掛金を大きく増やせるチャンスになるのかもしれませんね。ただ、もともとDB等の掛金額が多い人にとっては、月額7,000円程度の引き上げにとどまりそうです。
(4)公務員
公務員の方々の掛金限度額は、2024年12月に月額1.2万円から月額2万円に引き上げられたばかりですが、改正案では、月額5.4万円まで引き上げられそうです(国家公務員・地方公務員の場合)。
限度額が大きく上がるだけでなく、定年退職後も70歳までiDeCoへの積立が続けられるようになる可能性を考えると、企業型DCやDB等のない会社員と同様に、iDeCoへの積立を大幅に増やせる可能性があります。
(5)国民年金の第3号被保険者
会社員や公務員の配偶者で年収130万円(従業員51人以上などの条件を満たす企業で働いている場合は年収106万円)未満の人が該当します。いわゆる専業主婦(夫)などの人たちです。
※年収要件については見直しが検討されています。
令和7年度税制改正大綱には記載がなかったので、現行(月額2.3万円)のままだと思われます。
【変更点③ マッチング拠出の限度額の引き上げ】
マッチング拠出とは、企業型DCを導入している企業で、マッチング拠出を認めている企業の従業員が利用できる制度です。企業型DCで会社が出す掛金(事業主掛金)に、加入者自身が給与からお金を出して、会社の掛金とマッチングさせて積み立てていくものです。
加入者がマッチング拠出した掛金(加入者掛金)は、iDeCoの掛金同様、全額所得控除になります。ただし、マッチング拠出を利用している人は、iDeCoを利用することができません。
そして、このマッチング拠出の掛金の限度額には2つのルールがあります。
1つ目が、加入者掛金は事業主掛金と同額まで。
2つ目が、加入者掛金と事業主掛金の合計が5.5万円(DB等のある会社は2.75万円)まで。
このルールが、改正案では、「加入者掛金と事業主掛金の合計が6.2万円まで」という1つに絞られ、「事業主掛金と同額まで」という制限がなくなる予定です。
これまで、会社の掛金が少なすぎて、マッチング拠出の制度があっても少額しかできなかった人にとっては朗報でしょう。
なお、DCの資産を一時金で受け取ってから5年を経過して退職一時金を受け取ると退職所得をフルに受けられる「5年ルール」が、10年経過しないとフルに受けられない「10年ルール」に変わる改正案のことを「改悪だ」とネット上で騒いでいる人もいます。
しかし、個人的にはDCの資産は60歳以降も運用を続けて分割して受け取るのもひとつの方法だと考えています。税負担は一時金受取よりも重くなる可能性がありますが、定期的にお金を受け取れること自体が安心につながる可能性も高いでしょう。
企業型DCやiDeCo、退職金などの出口戦略は、退職後の生活を考慮しながら、総合的に判断することが重要かと思います。