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「ふるさと納税」でつなぐ災害支援


ふるさと納税は「多くの国民が、地方のふるさとで生まれ、教育を受け、育ち、進学や就職を機に都会に出て、そこで納税をする。その結果、都会の地方団体は税収を得るが、彼らを育んだ「ふるさと」の地方団体には税収はない。そこで、今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意志で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という当時の総務大臣の問題提起から始まりました。

この制度は、簡便な手続きにより全国の自治体の中から自分が貢献したいと思う複数の自治体に対して寄附できる制度であり、多くの自治体では寄附金の使い道を指定できるため、納税者が税金の使い道を自ら選択できる唯一の制度でもあります。

制度の特徴として、税金の課税主体を国から地方に移譲することや、故郷を離れた人が生まれ育った自治体に貢献できるよう、寄附した金額が所得税と住民税から控除される制度設計であり、一定の寄附金額までであれば、2,000円の自己負担のみで居住地への納税を「ふるさと」への納税に置き換えられます。また、寄附先の自治体からは寄附のお礼に返礼品がもらえる点が注目され、確定申告が不要なワンストップ特例制度が導入された2015年以降に利用者が急増しています。

ふるさと納税による災害支援寄附
制度が広く認知されるきっかけは寄附先からもらえる返礼品によるメリットでしたが、近年では増え続ける自然災害に対する災害支援寄附の手段としても注目されています。

(1)通常の災害支援寄附
ふるさと納税を利用した災害支援寄附は、自治体へダイレクトに寄附ができ、通常のふるさと納税と同様に自治体から寄附金受領証明書が発行されるため、所定の手続きを行うことで寄附者の住民税や所得税の還付・控除の対象となり、自己負担2,000円で被災地を支援できます。

また、災害支援を目的としたふるさと納税の場合、ポータルサイトは治体から手数料を得ることはなく、寄附決済手数料はポータルサイト側が負担するため、寄附を受けた自治体はふるさと納税額をそのまま寄附金として受領できます。

(2)代理寄附
ふるさと納税による被災自治体支援プロジェクトの中には、被災した当事者ではない自治体が立ち上げた「代理寄附」の支援プロジェクトがあります。これは、被災自治体の業務の負担を大幅に減らし、いち早く支援者からの寄附金を被災自治体に届けるための仕組みです。

ふるさと納税による寄附は一般的な義援金と異なり、ふるさと納税を受け付けた自治体が寄附金受領証明書などの「寄附金の受領書」を発行して支援者に郵送しなくてはなりません。平時ならともかく、被災直後にはこの事務作業自体が被災自治体の負担になってしまう場合があります。

実際に茨城県境町は、2015年の関東・東北豪雨で20億円を超える被害に遭った地域ですが、ふるさと納税によって全国から「お返しは要らない」と約2,000万円もの寄附が集まったそうです。ただし、この仕組みによる唯一のデメリットが「寄附金の受領書」の発行です。被災地の自治体は復興作業に追われるため、「寄附金の受領書」の発行に労力を割くことが難しいといいます。

そこで、2016年4月に発生した熊本地震の際に茨城県境町の町長から、ふるさと納税制度を活用した被災地支援の方法について、ふるさと納税のポータルサイトである「ふるさとチョイス」に相談があり、ふるさとチョイス災害支援のサイト内で、初めて代理寄附を受け付けるフォームが構築されました。

代理寄附の仕組み
代理寄附では、被災地とは別の自治体が支援者から寄附を受け取り、ふるさと納税による自治体と支援者との書類手続きや寄附金の受領に関する一切の業務を請け負います。そうすることで被災自治体は災害対応に集中でき、寄附金を代理受領した自治体から被災自治体にお金が届けられれば、被災自治体の負担が大幅に軽減されます。

2024年1月に発災した令和6年能登半島地震においては、「ふるさとチョイス災害支援」で集まった20億円超の寄附のうち、15億円超は代理寄附を通じての寄附によるものです。代理寄附は、これまで累計150自治体超が協力し、ふるさと納税を通じた被災地支援の認知拡大とともに自治体間の「共助」が広がっています。

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