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火災保険の値上げの正体は?


2024年10月から火災保険(住宅総合保険)の保険料が大手損害保険会社を中心に値上げされました。昨年6月の損害保険料率算出機構による火災保険参考純率の変更に伴う値上げとなります。損害保険料算出機構のニュースリリースに基づき解説してまいります。

【改定の概要】
①住宅総合保険の参考純率について、全国平均で13.0%の引き上げとなりました。過去最大の引き上げと言われています。なお13.0%の引き上げは、全ての契約条件(都道府県、建物構造、築年数、補償内容等)の改定率を平均して算出した数値となり、契約条件によって改定率は異なります。
②水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化されました。
地域の単位:保険の対象となる建物の所在する市町村別
区域数   :保険料が最も安いグループである「1等地」から最も高いグループである「5等地」までの5区分
料率の較差:保険料が最も高い地域と保険料が最も低い地域との格差は約1.2倍(火災、風災、雪災、水災などの合計数値)

住宅総合保険と呼ばれる火災保険のフルサポートプランでは、以下の場合が補償対象です。
①火災、落雷、破裂、爆発
②風災、雹災、雪災害
③水濡れ
➃盗難
⑤水災
⑥破損・汚損等
保険会社によっては、顧客のニーズによって3~5つのプランを用意しています。例えば上記①②のみプランや⑤の水災不要プランなどです。

【改定の背景】
①自然災害のなどによる保険金支払いの増加とリスク環境を踏まえた対応
近年、気候変動が原因ではないかと言われている大きな被害を及ぼす自然災害が急増している状況にあり、更に住宅老朽化の進展や修理費や人件費の高騰なども背景に火災保険金の支払いが増加傾向にあるためです。

②水災料率における契約者間の保険料負担の公平化等
今まで水災に関する料率が全国一律でした。しかしハザードマップをみると、地域によって水災のリスクは大きく違います。河川の氾濫や洪水だけでなく、内水氾濫、土砂災害も水災で補償されるため、水災による損害が増加したことで、水災料率体系の見直しが必要な状況となりました。今回の改定では水災リスクの違いによる公平の観点から水災補償に対する保険料が市町村別に水災リスクに応じた5段階に細分化されました。

三井住友海上火災保険会社の住宅総合火災保険のパンフレットに興味深いデータが掲載されています。自社の各災害の「保険金支払件数」と「保険金支払金額」のデータをご紹介します。(フルサポートプランの2018年~2022年度支払実績に基づいた数値)

「保険金支払件数」
火災、落雷、破裂、爆発(4.7%)
風災、雹災、雪災(45.8%)
水濡れ(6.8%)
盗難(1.1%)
水災(1.7%)
破損・汚損(39.9%)

「保険金支払金額」
火災、落雷、破裂、爆発(8.7%)
風災、雹災、雪災(55.6%)
水濡れ(8.3%)
盗難(1.0%)
水災(14.2%)
破損・汚損(12.2%)

データをみると水災の支払件数は少なくても、一度被災すると復旧に多額の費用がかかり、被災すると多額の費用がかかることがわかります。

【家計への影響】
物価上昇により少しでも保険料を抑えたいと考えてしまいます。しかし火災保険の目的は、予期せぬ自然災害を含め生活を脅かすような大きな災害に備えることです。保険料を安くするために補償を減らすことはできるだけ避けたいところです。

【対応策】
住んでいる地域や戸建てかマンションなのかによって備え方は異なります。まずは加入中の補償内容をご確認ください。見直し例としては、マンションの上層階に住んでいる場合、床上浸水は考えにくいので水災を外す、戸建でも水災リスクが低い地域では水災補償を縮小する方法、補償範囲に免責を付け自己負担額を設定する契約により保険料を下げることが可能です。
自然災害は命に関わることもあります。慎重に検討し賢く備えたいですね。

出典:損害保険料率算出機構 2023/6/28 火災保険参考純率改定のご案内
三井住友海上火災保険会社「GKすまいの保険」パンフレット

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